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最弱パーティ、今日もちょっとだけ成長中  作者: beck2026


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第68話 不眠の錬成、軍師の極限理論

マーガレットの塔に逃げ込んだリトル・リンクを待っていたのは、安らぎではなく、地獄のような特訓でした。

街の全域を掌握する『古代回路』の真価を引き出すため、セインは自らの脳を魔導演算機へと変え、極限の理論に挑みます。

一方、執念深く彼女たちを追う自警団と『紫煙の牙』。

反撃の準備が整うまで、残りわずか十五秒。

拠点を失い、逃げ場をなくした五人の、誇りをかけた籠城戦が始まります。

石造りの塔の最上階。そこは、マーガレットが数十年にわたって収集してきた古今東西の魔導書と、異形の工具がひしめく「智の墓場」だった。

 窓の外では、リフェルナの街が自警団の騒がしい怒号と、拠点を失った魔力の残滓に揺れている。だが、この部屋の中だけは、針が落ちる音さえ聞こえるほどの静寂と、濃密な魔力の熱気に包まれていた。

「……セインさん、あなたの『構造解析』は、論理的すぎて遊びが足りないわ。……いい? リフェルナの循環系は、生き物なのよ。……制御するのではなく、いざないなさい」

 マーガレットの厳しい声が、徹夜で充血したセインの耳を打つ。

 セインは、ハーフエルフ特有の繊細な指先を、宙に浮かぶ青白い幾何学模様の中へと沈めていた。魔導ブースターは限界まで唸りを上げ、彼女の眼鏡の奥の瞳は、膨大な情報の激流を処理するために、絶えず細かく震え続けている。

「論理的に見て、誘うという概念は不確実です。……ですが、この大水利循環系の魔力脈動に、私の『環境上書き』の波形を同調させる……。……その隙間ラグを、……直感で埋めろというのですか?」

「そうよ。理屈で追えない部分こそ、魔導の深淵。……さあ、やってごらんなさい。……一分以内に同調できなければ、その古代回路はただの鉄屑に戻るわよ」

 傍らでは、ケットルが火花を散らして『洗浄砲』の心臓部を解体していた。

 拠点を自爆させた際、無理やり魔力を逆流させたせいで、内部の魔力伝導路はボロボロに焼き切れている。だが、ドワーフの職人魂は、この絶望的な破損を「進化の好機」と捉えていた。

「ガハハ! 見てな、マーガレットさん! あたいの洗浄砲に、塔の中継アンテナを直結してやったよ! ……これで、セインの魔力を街の隅々まで『弾丸』として撃ち込んでやるんだ!」

 ケットルの横では、カノンが双牙を研ぎ澄まし、ミルが魔力を練り続けている。

 吸血鬼であるミルは、空腹をマーガレット特製の薬草ゼリーで無理やり抑え込み、自らの影を触手のように伸ばして、セインの演算を物理的に補助していた。

「……セイン、……魔力、……足りない。……私の、……血、……使って」

「不要です、ミル。……論理的な負荷は、私が……私がすべて引き受けます!」

 セインの額から、大粒の汗が流れ落ちる。

 彼女の脳裏には、今、リフェルナの街全体の三次元地図が展開されていた。

 運河の底を流れる魔力の奔流。自警団の詰所に集中する警備兵の配置。そして、街の中央広場に鎮座する、あの宿敵『紫煙の牙』の拠点。

 

 その時、塔の階下から鋭い金属音が響いた。

 カノンが悪魔族の耳をピクリと動かし、双牙を構える。

「……来たよ。……自警団のバザルと、例の煙使いの男……グレイだね。……中継塔の魔力反応を辿ってきたみたい。……早すぎるよ、あいつら!」

 扉が外側から激しく叩かれる。魔力的に強化された衝撃が、塔全体を揺らした。

「……出てこい、ネズミども! リフェルナの治安を乱し、古代回路を盗み出した大罪人として、その首を撥ねてくれるわ!」

 バザルの濁った声が、石壁を抜けて響く。

 クレアは、研ぎ直したばかりの『切ない剣』を抜き放ち、仲間の前に立った。

「……セイン、あとどれくらいかかる?」

「……三十秒。……いえ、……十五秒で、……『環境上書き』の全域展開を完了させます!」

 セインの声は、もはや悲鳴に近かった。彼女の魔力ブースターから、過負荷を告げる赤い火花が散る。ハーフエルフの白い肌が、魔力の奔流に耐えかねて青白く発光し始めていた。

「よし、みんな! ……十五秒だけ、うちらで食い止めるよ! ……拠点は燃えたけど、リトル・リンクの魂までは焼けてないってことを、あいつらに教えてあげよう!」

 クレアの叫びと共に、塔の扉が粉砕された。

 なだれ込む自警団の兵士たち。そして、その背後で紫色の煙をくゆらせるグレイ。

 

 最弱パーティと呼ばれた五人の、命を賭した「十五秒間」の防衛戦。

 それは、リフェルナの街の歴史そのものを塗り替える、大逆転の幕開けだった。

 リトル・リンク、今日も(一睡もせず、極限の向こう側で)ちょっとだけ成長中。

第68話をお読みいただき、ありがとうございます!

軍師セインの限界突破、そして仲間たちの決死の盾。

一分一秒、コンマ数秒を争う緊張感の中、ついにリトル・リンクの反撃の「種」が芽吹こうとしています。

ボロボロになりながらも立ち上がる五人を「負けるな!」「セイン頑張れ!」と応援したくなった方は、ぜひ下の**【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】**にして、評価をいただけますと幸いです!

皆さまの星が、セインの魔導ブースターの出力に変わります!

次回、第69話。

発動する『広域環境上書き』。

リフェルナの街を舞台にした、五人の華麗なる「大掃除」が始まります。

引き続き、応援よろしくお願いいたします!

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