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最弱パーティ、今日もちょっとだけ成長中  作者: beck2026


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第62話 封鎖された城、深夜の来訪者

いつも応援ありがとうございます。

自警団によって軟禁されたリトル・リンク。

閉ざされた扉の向こう側から届いたのは、かつての敵対者の側近、エドワードからの密かな警告でした。

背後に潜む「紫煙の牙」という巨大な影。

誇りを奪われたまま逃げるのか、それともすべてを賭けて立ち向かうのか。

五人の決断が、夜の静寂を切り裂きます。

窓の外には、等間隔で立つ自警団の兵士たちの影が落ちている。

 運河を渡る風は冷たく、石畳を叩く彼らの軍靴の音が、リトル・リンクの拠点――『魔道具師の家』のリビングに不気味に響いていた。

「……論理的に見て、監視の目は表門に二人、裏口に一人。……二時間おきに交代しています。……完全な軟禁状態ですね」

 セインがカーテンの隙間から外を覗き、手元の羊皮紙に素早く図面を引き直す。

 その横では、ケットルが愛用の工具を力なく弄んでいた。奪われた古代回路――あれは単なる金目の物ではない。彼女が寝る間も惜しんで、古代の知恵を現代の技術でどう再現するか、その可能性を詰め込んだ「未来」そのものだった。

「ガハハ……あたいとしたことが、詰めが甘かったよ。……あんな薄汚い連中に、あたいの可愛い回路を触らせちまうなんて……。……職人失格だね」

「ケットル、自分を責めないで。……うちら、みんなで守れなかったんだから」

 クレアがケットルの肩を抱き寄せる。

 リビングの空気は重く沈んでいた。

 ミルの大切にしていたお皿の破片は、セインの手によって綺麗に片付けられていたが、そこに空いた「心の穴」までは埋められない。

「……あいつら、……許さない。……魔力、……練ってる。……いつでも、……吹き飛ばせる」

 ミルが部屋の隅で膝を抱え、紅い瞳を怪しく光らせる。

 彼女の周囲では、微細な魔力の火花がバチバチと音を立てていた。

 一触即発の、張り詰めた静寂。

 その時だった。

 コン、コン……。

 裏口の勝手口から、自警団の軍靴とは明らかに違う、軽やかで、けれどどこか迷いのあるノックの音が響いた。

「……誰? ……自警団なら、もっと乱暴に叩くはずだけど」

 カノンが短剣の柄に手をかけ、音もなくドアへと歩み寄る。

 全員が息を殺して見守る中、ドアの隙間から滑り込んできたのは、一人のずぶ濡れの少年だった。

 リフェルナのギルドで雑用をこなしている、まだ十歳にも満たない少年――パウロだ。

「……リトル・リンクのみんな、……これ、……エドワードさんから」

 パウロは震える手で、固く丸められた小さなメモを差し出した。

 自警団の目を盗んで、運河を泳いで裏口まで辿り着いたのだろう。

 クレアが急いでメモを広げる。

 そこには、殴り書きのような無骨な文字でこう記されていた。

『自警団を動かしているのはシルヴィアではない。……リフェルナの闇ギルド「紫煙の牙」だ。奴らの狙いは回路だけじゃない。……この家の地下にある「魔力バイパス」そのものを奪うつもりだ。……今夜、裏の運河から船を出す。……逃げろ、リトル・リンク』

「……エドワードさん。……あの人、……やっぱり、……いい人だったんだ」

 ミルの瞳から、少しだけ刺々しさが消える。

 だが、セインの表情はより一層険しくなった。

「論理的に見て、この情報は極めて信憑性が高い。……「紫煙の牙」。……リフェルナの裏社会を牛耳り、自警団のバザルとも癒着していると噂される組織です。……彼らが動いたということは、もはやギルドのルールすら通用しないということだ」

「逃げろって言われてもさ……。あたいらの大事な回路はあいつらの手の中だよ!? ……あんなの、悪い奴らに渡したらどんなことに使われるか分かったもんじゃない!」

 ケットルが拳をテーブルに叩きつける。

 逃げるのは簡単だ。だが、自分たちの誇りを、努力の結晶を、そしてこの『城』を捨ててまで逃げることは、リトル・リンクの流儀ではない。

「……逃げないよ。……うちらは、逃げるためにここに来たわけじゃないもん」

 クレアが顔を上げ、仲間たちの顔を一人ずつ見つめた。

 瞳には、絶望ではなく、静かな闘志の炎が灯っている。

「……セイン。……この家にある魔力バイパス、……逆流させられる?」

 クレアの問いに、セインが薄く笑った。

 それは、最悪の効率を最高の結果に変えようとする時の、軍師の笑みだった。

「……論理的に見て、可能です。……ただし、この家そのものが「爆弾」に変わるリスクがありますが……。……お望みですか、リーダー?」

「……うん。……うちらの城を汚す奴らには、とびきりの『お掃除』が必要だよね!」

 閉ざされた城の中で、反撃の準備が始まった。

 パウロが持ってきた小さなメモが、消えかけていた五人の魂に再び火を付けた。

 リトル・リンク、今日も(絶体絶命の窮地から)ちょっとだけ成長中。

第62話をお読みいただき、ありがとうございました!

エドワード、不器用ながらも大切な義理を返しに来てくれましたね。

そして判明した敵の正体「紫煙の牙」。

これまでのBランクパーティ同士の小競り合いとは次元の違う、街の支配者層との戦いが始まろうとしています。

もし「エドワードの義理堅さに痺れた!」「リトル・リンクの反撃が待ちきれない!」と思っていただけましたら、下の**【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】**にして応援いただけると、執筆の大きな励みになります!

ブックマークや評価も、大切に拝読しております。

次回、第63話。

逆流する魔力、暴走する洗浄砲。

リトル・リンク流の「派手なお引越し」が、深夜のリフェルナを赤く染めます。

引き続き、応援よろしくお願いいたします!

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