第60話 黄金の祝杯と、忍び寄る紫煙
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遠征を大成功で終えたリトル・リンク。
手に入れた報酬で開かれる、最高に幸せなレバーパーティー。
しかし、光が強まれば影もまた濃くなるもの。
彼女たちの「城」を狙う、新たな敵の正体とは……?
リフェルナの街に、夕刻を告げる鐘の音が柔らかく響き渡る。
運河の水面がオレンジ色に輝き、家々の煙突から夕食の準備を告げる煙が立ち上がる中、リトル・リンクの拠点――『魔道具師の家』のリビングには、かつてないほどの芳醇な香りが満ちていた。
「ガハハ! 見てな、この焼き加減! これぞドワーフ直伝、素材の魂を逃がさない『超火力・瞬間封じ』だ!」
キッチンではケットルが、新しく買い直した厚手の銅鍋を振るっていた。
ジュゥゥ、と心地よい音を立てて躍るのは、今回の遠征報酬で手に入れた、市場で一番高い『特上・霧降り牛の生レバー』。
表面にはうっすらと焼き色がつき、中は驚くほどレアで、とろけるような弾力を保っている。
「……いい。……完璧。……ケットル、……天才」
ミルの瞳が、いつになく爛々と輝いている。
彼女はテーブルに並べられた皿の前に陣取り、ナイフとフォークを握りしめて今か今かとその時を待っていた。
テーブルの上には、レバーだけではない。
セインが論理的な配合で作り上げた、薬草入りの特製ソース。
カノンが「これは経費だよ!」と言い張って買ってきた、リフェルナ最高級の白ワイン。
そして、焼きたての香ばしいパンが山盛りに積まれている。
「よし、みんな揃ったね! 今回の遠征、本当にお疲れ様! ……それじゃあ、リトル・リンクの勝利と、これからの幸せに……乾杯!」
クレアの音頭に合わせて、五つの杯がカチンと音を立てた。
「……んんっ! おいしい……! なにこれ、前の安物とは全然違う!」
一口食べたクレアが、感動に肩を震わせる。
口の中で広がる濃厚なコクと、雑味のない甘み。
それは、彼女たちが「自分たちの手で」掴み取った勝利の味そのものだった。
「論理的に分析しても、この幸福度は過去最大値を記録しています。……質の高いタンパク質、適度なアルコール、そして何より、この『居場所』の安心感。……私たちの戦略的投資は、間違っていませんでしたね」
セインが珍しく眼鏡を曇らせ、嬉しそうに白ワインを煽る。
カノンも「これで当分は借金の心配もしなくていいしね!」と笑い、大きなパンにレバーを贅沢に乗せて頬張った。
賑やかな笑い声が、魔導ヒーターの温かな風に乗って部屋中に広がる。
窓の外では、夜の帳が静かに降り始めていた。
しかし、その平和な拠点のすぐ外。
運河を挟んだ向かいの建物の影に、一人の人物が佇んでいた。
その男は、暗闇の中でゆっくりと細い煙草に火を付けた。
揺らめく紫色の煙が、冷たい夜風に乗ってリトル・リンクの家へと流れていく。
「……あいつらが、例の『ゴーレムの心臓』を止めたっていう小娘どもか」
男の瞳には、友情や敬意といった温かな色は一切なかった。
あるのは、獲物を値踏みするような、冷酷で乾いた輝き。
彼の背後には、複数の影が音もなく控えている。
「シルヴィアの女狐が手を焼くわけだ。……だが、俺たちのやり方はあんな甘っちょろいもんじゃない。……『古代回路』、そしてあの『魔道具師の家』の秘密……。まとめて頂かせてもらう」
男が吐き出した煙が、リトル・リンクの家の窓硝子を撫でるように消えていった。
リビングでは、まだ五人が新しい明日の夢を語り合い、笑い声を上げている。
幸せな宴の裏側で、確実に動き出した巨大な悪意。
リフェルナの街を揺るがす新しい嵐が、すぐそこまで迫っていた。
リトル・リンク、今日も(最高の夜と、忍び寄る影の中で)ちょっとだけ成長中。
おかげさまで第60話という大きな節目を迎えることができました!
ここから物語は、リフェルナの街の利権を巡る大きな争いへと突入していきます。
ボリュームアップした『リトル・リンク』の活躍、これからも全力で描いていきます。
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次回、第61話。
翌朝、五人のもとに届いたのは、ギルドからの呼び出しではなく、街の自警団からの「ある通告」でした。
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