第200話 国王の親征、不敬な「湯気」と玄関先の攻防
王妃・イザベラ様が「ここで暮らしたい」と漏らしてから数時間。
我が家の前に、ついに白金の馬車を十数台従えた、太陽の紋章を刻む「真紅の王座馬車」が横付けされました。
「……ふぅ。……お外、……鉄の……におい……いっぱい。……ミル、……魔力……視る……一秒前。……あ、……金ピカの……おじさま……。……おうじさま……より……、……おこってる……一秒前。……でも……、……お腹……ぐうぐう……鳴ってる」
ミルが、静かに**『もう壊さない杖』**を構え、玄関の隙間から外の様子を伝えました。
吸血鬼の彼女には、馬車から降り立った国王・エドワード陛下を包む「威厳」と、長旅による「強烈な空腹と腰痛」の澱みが視えていました。王妃を連れ戻しに来たはずの国王陛下。しかし、その足取りはどこか重く、怒りよりも切実な「休息」を求めているように見えました。
「ガハハ! 冗談じゃないよ! 王子に王妃、ついには国王様までお出ましかい!? アタシたちの家は、王家の無料宿泊所じゃないんだよ! ――セイン、玄関の『自動除菌ミスト』を、鳳凰の香木入り特製アロマに切り替えな!」
ケットルが、**『巨大背負い袋』**から取り出した「超速・疲労回復ガス」を換気システムに注入しました。
ドワーフの職人にとって、最高権力者の来訪は「自作の耐久テスト」の絶好の機会。彼女は、陛下が玄関を一歩踏んだ瞬間に、その重いマントから埃とストレスを一掃する「鳳凰の旋風」をホールに展開しました。
「……論理的に見て、……国王陛下の……脊椎……圧迫は……危険……域です。……構造解析……。……っ、……腰椎……三番……四番に……、……重度の……公務……疲労……! ……環境上書き……! ……玄関の……気圧を……標高……五〇〇メートル……へと……固定……し、……陛下の……肺を……鳳凰の……酸素で……満たしなさい……!!」
セインの眼鏡が黄金色に輝き、玄関ホールの空気が「神域の清涼感」へと書き換えられました。
ハーフエルフの理知的な瞳が、陛下の隠れた持病を瞬時に看破。彼女の演算により、玄関ホールのタイルは、陛下の歩みに合わせて最適な「指圧効果」を生む柔軟な魔導素材へと変質し、一歩歩くごとに陛下の腰痛を根源から解きほぐしていきました。
「……あはは、……やっぱり……あっちの……王様が……玄関で……深呼吸……しただけで……『む、……身体が……軽い……!?』って……顔……する……ほうに……銀貨……三枚……!! ……ねえ、……クレア……、……あたいが……王様に……『あのトイレ』……案内するか……賭ける……!?」
カノンが、銀靴を鳴らして陛下の周囲を固める近衛騎士団の剣を、指先一つで「カチン」と鞘に戻させました。
回避タンクとしての威圧。彼女は陛下が「不敬であるぞ!」と叫ぼうとする口を、四層特製の「とろける完熟ベリー」を放り込むことで物理的に封じ、陛下の意識を怒りから「味覚の快楽」へと一瞬で転換させました。
私は、虹色の筋が走る**『銀竜の絆』**を一度抜き、敬意を込めて鞘に納めました。
「……ようこそ、エドワード陛下。……イザベラ様は……、……現在……『鳳凰の湯』にて……魂の……洗濯中……です。……陛下も……、……その……重い……王冠を……置いて、……少し……羽を……伸ばして……いきませんか?」
王妃を連れ戻しに来たはずの国王が、我が家の「快適さの門」を潜った瞬間、その厳しい表情がみるみるうちに「迷える羊」のような無防備なものへと変わっていくまで、あと五秒。
リトル・リンク、今日も(王国の頂点に立つ男を、玄関先での『超速指圧とアロマ』で骨抜きにしながら)ちょっとだけ成長中。
第200話をお読みいただき、ありがとうございました。
ついに一家勢揃い! 国王陛下が乗り込んできましたが、リトル・リンクの「快適要塞」の前では、王の威厳も形無しです。
セインの気圧制御とケットルの特製アロマにより、陛下の怒りはどこかへ飛んでいってしまいました。
次回、国王陛下、ついに「黄金の玉座」と対面し、王政の在り方を根本から疑い始める!?
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