第199話 王妃の「昇天」、鳳凰のボイラーと禁断の長
黄金の扉から生還し、魂を浄化されたような表情の王妃・イザベラ様。
しかし、リトル・リンクの「おもてなし」は、まだその本丸を残していました。私は、虹色の筋が走る**『銀竜の絆』**を傍らに置き、廊下の反対側に鎮座する、さらに重厚な彫刻が施された扉を指し示しました。
「……イザベラ様。……お体……、……冷えて……いませんか? ……次……、……あそこの……『鳳凰の湯』……。……これ……、……四層……特製……バスソルト……。……殿下も……、……一晩で……疲れ……溶けた……場所……」
「……っ!? ……まだ、……まだこれ以上の……驚きが……あるというの……? レオナルドが……城に帰ってから……『王宮の風呂は……冷たくて……硬い……』と……嘆いていたのは……、……もしや……!!」
王妃の瞳に、抗いきれない期待と恐怖が混ざり合いました。
私は微笑み、鳳凰の熱源が静かに唸る浴室の扉を解放しました。そこには、リヴァイアサンの氷鱗をタイルに使い、四層の翠緑魔石で「森林浴効果」を付加した、もはや入浴施設の概念を超えた「癒やしの神殿」が広がっていました。
「ガハハ! 冗談じゃないよ! 王妃様ともあろうお方が、一度入ったら三日は出てこられなくなるよ! ――ケットル特注、『自動肩打ち打たせ湯』の出番だねぇ!」
ケットルが、**『巨大背負い袋』**から取り出した魔導リモコンを無造作に操作しました。
ドワーフの職人が、鳳凰の熱エネルギーを「最適な水圧」へと変換するように設計した最新のノズル。それは入浴者のツボを完璧に捉え、王宮の重責で凝り固まった肩を、魔法の指先のように解きほぐす至高の装置でした。
「……ふぅ。……湯気……、……金色の……魔力……一秒前。……ミル、……お肌……とろける……一秒前。……あ、……おうひさま……、……お洋服……脱ぐの……、……すごく……はやい。……三……二……一……、……あ、……お湯に……沈んだ」
ミルが、静かに**『もう壊さない杖』**を掲げ、浴室内の蒸気に「若返りの魔素」を充填しました。
吸血鬼の彼女には、王妃の肌に刻まれた微細な小じわや、公務のストレスによる肌荒れが視えていました。王妃が湯船に浸かった瞬間、鳳凰の熱が深部まで浸透し、彼女の肌はまるで少女のような瑞々しさを取り戻していきました。
「……論理的に見て、……王妃殿下の……リラックス……脳波は……測定……不能……レベル……です。……構造解析……。……っ、……入浴……中の……居眠り……の……確率……九八%……! ……環境上書き……! ……湯船の……比重を……死海……並みへと……固定……し、……殿下の……身体を……水面に……浮かせて……窒息を……防ぎなさい……!!」
セインの眼鏡が黄金色に輝き、浴槽内の水質が瞬時に書き換えられました。
ハーフエルフの理知的な瞳が、王妃の完全なる「寝落ち」を予見。彼女の演算により、王妃はまるでお湯のベッドに横たわるようにプカプカと浮かび、翠緑の魔石から放たれる癒やしの波動に包まれながら、深い安らぎへと旅立ちました。
「……あはは、……やっぱり……あっちの……王妃様が……あまりの……気持ちよさに……『このまま……お城に……帰りたくない……』って……寝言……いう……ほうに……銀貨……三枚……!! ……ねえ、……クレア……、……あたいが……王妃様に……特製……パジャマ……着せるか……賭ける……!?」
カノンが、銀靴を脱いで脱衣所でひらりと一回転しました。
回避タンクとしての気遣い。彼女は王妃の護衛騎士たちが「殿下、もう一時間も経っておりますぞ!」と扉を叩こうとするのを、鳳凰の熱気による「陽炎の幻覚」で見事に追い払い、王妃に極上の休息時間をプレゼントしました。
二時間後。
湯気とともに現れた王妃・イザベラ様は、もはや別人でした。
顔色は薔薇色に輝き、瞳からは一切の険が消え、ただ一言、震える声でこう仰いました。
「……クレア。……この家を……、……この家を丸ごと……王家の……『聖別離宮』として……指定……いや……、……私も……ここで……暮らしては……ダメかしら……?」
王妃の爆弾発言に、リビングが凍りつきました。
リトル・リンク、今日も(王国の母を、鳳凰の湯と無重力入浴で「廃人一歩手前」まで癒やしきりながら)ちょっとだけ成長中。
第199話をお読みいただき、ありがとうございました。
最新式トイレに続き、ついに「鳳凰の湯」の洗礼を受けた王妃様!
セインの比重制御による「浮遊入浴」とケットルの肩打ち湯により、王妃様は王宮への帰還を本気で拒否し始めました。
まさかの王妃様、リトル・リンクに居候希望!?
次回、国家存亡の危機(王妃が帰ってこない)に、王様本人が乗り込んでくる……!?
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