第197話 王妃の沈黙、翠緑のティータイムと「聖域」への招待
リビングに足を踏み入れた王妃・イザベラ様は、扇を口元に当てたまま、その場で硬直しました。
王宮の魔導技師たちが血眼になって研究している「鳳凰の熱核」と「四層の翠緑魔石」が、ここでは単なる「床暖房」と「空気清浄機」として贅沢に使い倒されているのですから。
「……ふぅ。……おうひさま、……おめめ……泳いでる。……ミル、……驚きの……魔力……視える……一秒前。……そこ……、……翠緑の……クッション。……座ると……、……王宮の……公務……忘れる……。……三……二……一……、……あ、……深く……沈んだ」
ミルが、静かに**『もう壊さない杖』**を揺らし、四層の主から得た素材で編み上げた「多層構造クッション」に王妃を誘いました。
吸血鬼の彼女には、王妃の肩に積もった「国を背負う重圧」の澱みが視えていました。王妃は一度腰を下ろした瞬間、体圧を完璧に分散する未知の座り心地に、「……っ!?」と高貴な声を漏らして絶句しました。
「ガハハ! 冗談じゃないよ! 王妃様ともあろうお方が、そんなに驚いてちゃアタシの自慢の『四層特製・ハーブティー』を吹きこぼしちまうよ! ――セイン、カップの温度を王妃様の体温プラス二度に固定しといでな!」
ケットルが、**『巨大背負い袋』**から取り出した、翠緑の魔石を組み込んだ「定温ティーセット」をテーブルに置きました。
ドワーフの職人にとって、国母をもてなすのは技術の誇示。彼女は、王妃が一口飲むごとに、最も香りが引き立つ温度へと自動調整される魔導回路を、その場でティーカップに刻み込みました。
「……論理的に見て、……王妃殿下の……疲労……指数は……臨界……点に近い……です。……構造解析……。……っ、……末端……冷え性……の……兆候……! ……環境上書き……! ……足元の……絨毯の……密度を……二倍へと……固定……し、……鳳凰の……温もりを……毛先から……注入……しなさい……!!」
セインの眼鏡が黄金色に輝き、王妃の足元からポカポカとした癒やしの魔力が吸い上げられました。
ハーフエルフの理知的な瞳が、王妃の細い足首にかかる「公務の疲れ」をロックオン。彼女の演算により、リビングはもはや居住空間ではなく、最高級の「回復魔法陣」そのものへと変貌を遂げました。
「……あはは、……やっぱり……あっちの……王妃様が……あまりの……心地よさに……扇……落としちゃう……ほうに……銀貨……三枚……!! ……ねえ、……クレア……、……あたいが……王妃様に……『あのトイレ』……案内するか……賭ける……!?」
カノンが、銀靴を鳴らして王妃の背後に静かに立ちました。
回避タンクとしての遊び心。彼女は王妃が「レオナルドが言っていたのは……これのことなのね……」と溜息をつくのを見逃さず、そっと廊下の突き当たり、あの黄金の光が漏れる扉を指し示しました。
私は、虹色の筋が走る**『銀竜の絆』**を一度撫で、優しく微笑みました。
「……イザベラ様。……殿下が……一番……感動……されたのは、……あちらの……『聖域』……です。……王族としての……公務を……しばし……忘れ、……本当の……『解放』を……味わって……みませんか?」
リトル・リンク、今日も(王国の母を、四層の素材で進化した『神々しすぎるトイレ』へと誘い込みながら)ちょっとだけ成長中。
第197話をお読みいただき、ありがとうございました。
王妃様、リトル・リンクの「快適さ」という暴力に、早くも屈服寸前です!
四層の主の素材を惜しみなく使った家具と、セインの精密な環境制御。王宮の贅を尽くした暮らしが、ここでは「不便」にさえ感じられてしまいます。
次回、王妃様、ついに「黄金の便座」に鎮座し、王国の予算をここに全投入することを決意する!?
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