第195話 翠緑の終焉、鳳凰の熱き一閃と翠の欠片
翡翠の守護者が、凍りついた右鎌を強引に引き剥がそうと地鳴りのような咆哮を上げた。
しかし、その瞳がカノンの残像に惑わされている隙に、真上から鳳凰の紅蓮を纏ったクレアが急降下した。
「……ふぅ。……おしまい。……あっちの……心臓……、……真っ赤に……燃える……一秒前。……ミル、……魔力……視る……一秒前。……あ、……そこ……! ……甲殻の……合わせ目……、……開いた……! ……クレア……、……全力で……叩き込んで……!!」
ミルの透徹した視線が、守護者の胸部にある唯一の「隙」を射抜いた。
吸血鬼の彼女には、翡翠の装甲の奥で脈動する、この森の生命力の源流が露出する一瞬が視えていた。クレアは空中で**『銀竜の絆』**を正眼に構え、鳳凰の熱核から引き出した極大の熱量を刀身に収束させた。
「ガハハ! 冗談じゃないよ! アタシが丹精込めて研ぎ澄ました剣を、その程度の殻で弾けると思うなよ! ――セイン、あいつの逃げ道を『鳳凰の檻』で焼き尽くしな!」
ケットルが、**『巨大背負い袋』**から鳳凰の羽を触媒にした噴進弾を放った。
ドワーフの彼女が設計したその炎は、守護者の周囲を円環状に包囲し、一瞬にして四層の湿気を蒸発させた。逃げ場を失い、灼熱の熱気に晒された翡翠の甲殻に、目に見えるほどの「亀裂」が走り始めた。
「……論理的に見て、……敵の……内部……温度は……限界……値を……超過……しました。……構造解析……。……っ、……核の……露出……まで……あと……二秒……! ……環境上書き……! ……戦場の……酸素……濃度を……二〇〇%へと……固定……し、……鳳凰の……炎を……太陽の……如く……加速……させなさい……!!」
セインの眼鏡が黄金色に輝き、戦場全体が白銀の光に包まれた。
ハーフエルフの理知的な瞳が、燃焼効率を極限まで引き上げる「高濃度酸素空間」を構築。彼女の演算により、クレアの剣から溢れ出す炎は、もはや単なる火炎ではなく、万物を蒸発させる純粋なエネルギーの奔流へと昇華された。
「……あはは、……やっぱり……あっちの……カマキリ様が……最後に……あたいの……銀靴を……拝みながら……塵に……なる……ほうに……銀貨……三枚……!! ……ねえ、……クレア……、……あたいの……賭け金……、……二倍にして……返してよ……!!」
カノンが、銀靴を鳴らして爆発的な推進力で敵の視界から消えた。
回避タンクとしての最後の仕事。彼女は守護者が放とうとした絶望の毒霧を、自らの双牙で切り裂いて霧散させ、クレアへの道を完全に切り拓いた。
刹那。
クレアの剣が、翡翠の守護者の核心を貫いた。
「……これで……お別れよ。……四層の……主! ……その……力を……私たちの……『家』の……糧に……して……あげるわ!!」
虹色の光と鳳凰の紅蓮が交差し、巨大な翡翠の身体が内側から弾け飛んだ。
爆風が収まった後に残ったのは、森の静寂と、クレアの足元に転がる「翠緑の巨大魔石」だけだった。
リトル・リンク、今日も(四層の主を素材に変えて、次はどんな『快適装備』を作ろうか相談しながら)ちょっとだけ成長中。
第195話をお読みいただき、ありがとうございました。
ついに四層の「主」を撃破!
鳳凰の熱とセインの酸素制御による、まさに「理にかなった爆発的火力」での決着でした。
手に入れた巨大な翠緑の魔石。これを使えば、我が家の「自動洗浄トイレ」や「換気システム」はさらに劇的な進化を遂げることでしょう。
しかし、この勝利の報は、王家、そしてギルドにどのような波紋を呼ぶのでしょうか。
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