第193話 翠緑の「主」、不吉な巨影と静寂のプレリュード
毒霧を換気扇で吹き飛ばし、リトル・リンクの一行は四層の心臓部、巨大なガジュマルの根が複雑に絡み合う「黄昏の回廊」へと差し掛かりました。
先ほどまでの賑やかな虫の羽音や植物の蠢きが嘘のように消え、不気味な静寂が森を支配しています。
「……ふぅ。……しずか。……でも……、……地面の……した、……心臓の……おと……三秒前。……ミル、……魔力……視る……一秒前。……あ、……あれ……、……大きい……。……お花……じゃない。……獣……でも……ない。……もっと……古い……なにか」
ミルの警告。彼女が**『もう壊さない杖』**を構えたその先、森の最深部にある湖のほとりに、それは鎮座していました。
王家が危惧していた未知の魔物。それは、全身を翡翠色の硬質な甲殻で覆われた、巨大なカマキリのような姿をした古の守護者でした。しかし、その鎌には毒々しい紫の文様が走り、周囲の植物を枯らすほどの禍々しい瘴気を放っています。
「ガハハ! 冗談じゃないよ! せっかく綺麗にした空気を、あんな腐った魔力で汚すんじゃないよ! ――セイン、あいつの硬い甲殻は、アタシのパチンコでも一筋縄じゃいかないねぇ!」
ケットルが、**『巨大背負い袋』**から「三層氷鱗の徹甲弾」を取り出しました。
ドワーフの職人にとって、強固な防御を持つ敵は、その「硬さ」を打ち破るための絶好の試練。彼女は即座にパチンコの照準を合わせ、古の守護者の関節部分――魔力の継ぎ目を狙い定めました。
「……論理的に見て、……あの……個体の……外殻は……多層……構造……です。……構造解析……。……っ、……表層に……魔法……反射……の……コーティング……! ……環境上書き……! ……私たちの……周囲の……光の……屈折を……隠密……モードへと……固定……し、……先制……の……一撃を……確実な……ものに……しなさい……!!」
セインの眼鏡が黄金色に輝き、四層の深い緑の中に一行の姿が完全に溶け込みました。
ハーフエルフの理知的な瞳が、守護者の視神経を欺く「光の迷彩」を展開。彼女の演算により、敵は目の前に獲物がいることさえ気づかず、無防備な首筋をさらけ出すこととなりました。
「……あはは、……やっぱり……あっちの……デカブツが……あたいの……銀靴を……見失って……虚空を……切り裂く……ほうに……銀貨……三枚……!! ……ねえ、……クレア……、……あたいが……あいつの……背中に……飛び乗って……角……折るか……賭ける……!?」
カノンが、銀靴を鳴らして無音のまま敵の背後へと回り込みました。
回避タンクとしての真骨頂。彼女は守護者が放つ不規則な威圧感を「一歩」の余裕で受け流し、短剣――**『借金回避の双牙』**の切先を、翡翠の甲殻の隙間に差し込みました。
クレアは、虹色の筋が走る**『銀竜の絆』**を静かに抜き放ち、仲間に合図を送りました。
「……ありがとう、みんな。……あの『主』を……倒して、……この……森に……本当の……平穏を……取り戻しましょう。……リトル・リンクの……実力、……王家に……見せつけて……あげるわよ!」
リトル・リンク、今日も(四層の「主」との決戦を前に、磨き上げた絆と最新装備を手にしながら)ちょっとだけ成長
第193話をお読みいただき、ありがとうございました。
ついに姿を現した四層の「主」!
翡翠の甲殻を持つ古の守護者は、その圧倒的な存在感で一行を圧倒しようとしますが、リトル・リンクの面々はすでにそれぞれの役割を完璧に理解しています。
セインの隠密術式とカノンの機動力、そしてクレアの一撃。
果たして、王家が恐れた魔物を相手に、彼女たちはどのような戦いを見せるのでしょうか。
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