第192話 深緑の「捕食者」、猛毒の霧と氷鱗の換気扇
吸血蔓の群れを切り裂き、リトル・リンクの一行は四層のさらに深部――巨大なキノコが不気味に傘を広げる「菌類の揺籃」へと足を踏み入れました。
三層の突き刺さるような冷気とは対照的に、肌にべっとりとまとわりつく湿気が、彼女たちの装備をじわじわと蝕もうとしています。
「……ふぅ。……くさい。……お花……、……腐ってる……におい……三秒前。……ミル、……魔力……視る……一秒前。……あ、……あそこの……紫色の……煙……、……吸ったら……、……おめめ……ぐるぐる……しちゃう……一秒前。……クレア、……はなれて……!」
ミルの警告。彼女が**『もう壊さない杖』**を掲げた先から、微細な胞子の雲がゆらりと漂ってきました。
吸血鬼の彼女には、あの美しい紫色の霧が、神経を麻痺させて獲物を生きたまま腐らせる「死の抱擁」であると視えていたのです。
「ガハハ! 冗談じゃないよ! アタシたちが丹精込めて磨き上げた肌を、そんなカビ臭い霧で汚させてたまるもんか! ――セイン、三層の氷鱗で作った『特製・魔導換気扇』を全開にしな!」
ケットルが、**『巨大背負い袋』**の側面に取り付けられた、青白く光るファンを勢いよく起動させました。
リヴァイアサンの鱗を削り出し、鳳凰の熱核で気圧差を生み出すように設計したドワーフの自信作。その装置が回りだすと、周囲の毒霧を一瞬で凍結・粉砕し、彼女たちの周りだけを清浄な空気に変えてしまいました。
「……論理的に見て、……胞子の……拡散……アルゴリズムは……ランダム……ではありません……。……構造解析……。……っ、……奥の……巨大……菌糸……、……知性を……伴う……指向性……! ……環境上書き……! ……私たちの……周囲の……風圧を……絶対……排気……モードへと……固定……し、……毒を……根源へと……押し戻しなさい……!!」
セインの眼鏡が黄金色に輝き、換気扇から放たれる風が「浄化の竜巻」へと変貌しました。
ハーフエルフの理知的な瞳が、霧の向こうに潜む「本体」の座標を特定します。彼女の演算によって押し戻された毒胞子は、あろうことか自分たちの親である巨大キノコを逆に侵食し、その傘をボロボロに崩落させていきました。
「……あはは、……やっぱり……あっちの……人喰い……キノコが……自分の……毒で……溶けて……変な……音……だす……ほうに……銀貨……三枚……!! ……ねえ、……クレア……、……あたいが……あの……溶けた……キノコで……毒矢……作るか……賭ける……!?」
カノンが、銀靴を鳴らして毒霧の晴れた道を光の矢となって駆け抜けました。
回避タンクとしての遊び心。彼女は崩れ落ちる巨大キノコの胞子を紙一重でかわしながら、その根元に隠されていた「翠緑の魔石」を短剣――**『借金回避の双牙』**で鮮やかに抉り出しました。
クレアは、虹色の筋が走る**『銀竜の絆』**を正眼に構え、清浄な空気の中で一つ、深く呼吸をしました。
「……ありがとう、みんな。四層の『毒』さえも、私たちの家の一部に変えてしまいそうだね。……さあ、このまま森の心臓部へ行こう。王家が心配していた『主』を、さっさと見つけにいくわよ」
リトル・リンク、今日も(リヴァイアサンの氷鱗を換気扇に変えて四層の毒霧を蹴散らし、不気味な迷宮に「清潔」という名の光を灯しながら)ちょっとだけ成長中。
第192話をお読みいただき、ありがとうございました。
四層の難所「猛毒の胞子地帯」も、ケットルとセインの合わせ技による「魔導換気」で鮮やかに突破しました!
三層のボス素材を贅沢に使った装備が、四層の過酷な環境を次々と「快適」に塗り替えていく爽快感。リトル・リンクの成長が止まりません。
しかし、この奥でうごめく「王家が危惧する未知の魔物」は、これまでの植物たちとは一線を画す力を持っているようで……?
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