第190話 深淵の四層、翠緑の「迷路」と不穏な風
レオナルド殿下を見送った白金の馬車が、地平線の彼方に消えていきました。
私は、鳳凰の熱源が静かに脈動する我が家の玄関先で、虹色の筋が走る**『銀竜の絆』**の柄を一度強く握り直しました。
「……ふぅ。……おうじさま、……いっちゃった。……おうち……、……ちょっと……静か……一秒前。……ミル、……魔力……視る……一秒前。……う、……あっち……、……四層……。……緑色の……、……ねちょねちょ……した……風……吹いてる」
ミルが、静かに**『もう壊さない杖』**を掲げ、迷宮へと続く深淵の方向を指差しました。
吸血鬼の彼女には、三層の氷壁を突破した先に待ち受ける、湿り気を帯びた巨大な樹海――「深淵の四層」から溢れ出す、生命の奔流と腐敗の匂いが混ざり合った不気味な波動が視えていました。
「ガハハ! 冗談じゃないよ! 王子様の家庭教師でなまった身体を、四層のバケモノどもで叩き直してやるよ! ――ケットル特注、『防菌・防毒・防防虫』の三層コーティングをみんなの装備にかけといたよ!」
ケットルが、**『巨大背負い袋』**を景気よく叩きました。
ドワーフの職人にとって、未知の階層は新しい素材の宝庫。彼女はすでに、三層の氷鱗を加工して作った「万能換気ファン」を各自の肩口に装着し、密林の毒気さえも家の快適な空気へと変える準備を整えていました。
「……論理的に見て、……四層の……迷宮……構造は……自己……増殖……型……植物……群……です。……構造解析……。……っ、……入り口から……三キロ……、……方位……磁石……機能……不全……! ……環境上書き……! ……私たちの……足跡を……黄金の……道標へと……固定……し、……迷いの……森を……断絶……しなさい……!!」
セインの眼鏡が黄金色に輝き、四層への入り口に「帰還の糸」が展開されました。
ハーフエルフの理知的な瞳が、地図さえも裏切る生きた迷路を即座にシミュレーション。彼女の演算により、一行の周囲には常に最短ルートを示す不可視の導線が引きかれ、密林の底なし沼さえも回避すべき危険区域として赤く強調されました。
「……あはは、……やっぱり……四層の……巨大……食虫植物が……あたいの……銀靴を……飲み込もうとして……歯が立たない……ほうに……銀貨……三枚……!! ……ねえ、……クレア……、……あたいが……森の……一番高い……木に……旗……立てるか……賭ける……!?」
カノンが、銀靴を鳴らして入り口の巨木を一瞬で駆け上がりました。
回避タンクとしての興奮。彼女は森から飛来する毒針や蔦の奇襲を「一歩」の残像でかわしながら、最前線で道なき道を切り拓いていきます。
私は、仲間の背中を追って、湿った土の匂いが立ち込める四層へと一歩を踏み出しました。
「……さあ、……みんな……行こう。……三層の……王を……超えた……私たちなら……、……この……緑の……魔境も……、……きっと……超えられる」
リトル・リンク、今日も(王宮からの指名依頼の準備を兼ねて、未知なる四層の樹海へと絆を繋ぎながら)ちょっとだけ成長中。
第190話をお読みいただき、ありがとうございました。
王子との別れを経て、物語は再びダンジョン攻略へ!
四層「翠緑の迷路」は、三層とは打って変わって生命力に溢れすぎる、生きた植物の迷宮です。
ケットルの防毒装備とセインの道標、そしてカノンの機動力。
リトル・リンクがこの緑の深淵で最初に出会うのは、果たしてどんな「獲物」なのでしょうか。
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