第187話 迫りくる魔の手、庭先の「乱入者」と王子の咆哮
木剣を振るい、肩で息をするレオナルド殿下の成長を眩しく見つめていた、その時。
鳳凰の熱源で満たされた我が家の庭の結界が、外側からの不自然な魔圧にピリリと震えた。
「……ふぅ。……だれ。……お外、……鉄の……におい……三秒前。……ミル、……魔力……視る……一秒前。……あ、……黒い……服の……人たち。……おうじさま……、……さらおうと……してる。……悪い……おめめ……、……いっぱい……」
ミルが、静かに**『もう壊さない杖』**を掲げ、庭の生垣の向こう側を指差した。
吸血鬼の彼女には、光学迷彩の魔導衣を纏い、王家からの「お預かりもの」を強奪せんと忍び寄る暗殺者集団の殺気が、どす黒い霧となって視えていた。
「ガハハ! 冗談じゃないよ! アタシたちが丹精込めて磨き上げた王子様に、指一本触れさせやしないよ! ――セイン、庭の防犯システムを『最大迎撃モード』に切り替えな!」
ケットルが、**『巨大背負い袋』**から「自動追尾式パチンコ砲」を四門、庭の四隅に射出した。
ドワーフの彼女にとって、庭を荒らす侵入者は、リヴァイアサンの鱗以上に容赦なく排除すべき不純物。彼女は王子の前に立ちはだかり、無骨なハンマーを構えた。
「……論理的に見て、……暗殺……部隊の……展開……速度は……二級……以下……です。……構造解析……。……っ、……左方……十メートル……、……空間……跳躍の……予兆……! ……環境上書き……! ……庭全体の……慣性を……三倍へと……固定……し、……賊の……初動を……泥沼へと……沈めなさい……!!」
セインの眼鏡が黄金色に輝き、庭の空気が物理的な重圧を伴って凝固した。
ハーフエルフの理知的な瞳が、姿を現した暗殺者たちの関節の動きを即座に計算。彼女の演算により、飛び出してきた賊たちはまるで水中でもがくように動きを鈍らせ、その喉元にカノンの鋭い双牙が突きつけられた。
「……あはは、……やっぱり……あっちの……黒ずくめが……あたいの……銀靴に……追いつけなくて……泣き言……いう……ほうに……銀貨……三枚……!! ……ねえ、……クレア……、……あたいが……あいつらの……マスク……全部……剥ぎ取るか……賭ける……!?」
カノンが、銀靴を鳴らして庭中を光の矢となって駆け抜けた。
回避タンクとしての真骨頂。彼女は暗殺者たちの放つ毒針を全て「一歩」の残像でかわしながら、その背後に回り込み、王子を守る鉄壁の盾となった。
私は、虹色の筋が走る**『銀竜の絆』**を抜き放ち、震えながらも木剣を構え直すレオナルド殿下の隣に並んだ。
「……殿下、……これが……実戦です。……背中……、……預けますよ。……次……、……その……木剣で……、……自分の……命……守って」
「……あ、ああ! ……私は……、……私はもう……ただ守られるだけの……人形ではない……!!」
王子の瞳に、昨日までの退屈ではない、真実の「勇気」が灯った。
最新式トイレの衝撃、玉ねぎの涙、そして素振りのマメ。リトル・リンクでの全ての経験を乗せて、少年は迫りくる影へと立ち向かった。
リトル・リンク、今日も(王位継承権を狙う暗殺者を、庭先の「おもてなし(物理)」で完膚なきまで迎撃しながら)ちょっとだけ成長中。
第187話をお読みいただき、ありがとうございました。
王子の成長を試すかのように現れた暗殺者集団。
しかし、鳳凰とリヴァイアサンの素材で強化された「リトル・リンク」の家は、もはや難攻不落の要塞と化していました。
セインの重力制御とカノンの超速回避、そしてクレアの隣で剣を構える王子の姿。
暗殺者たちは、自分たちが「世界で最も快適で危険な家」に足を踏み入れたことを、すぐに後悔することになるでしょう。
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