第177話 深淵の雫、凍てつく「王」の最期と新たな扉
私の剣先がアイシクル・リヴァイアサンの核を貫いた瞬間、水底を支配していた絶対零度の魔力が、一気に熱へと置換されていくのが分かった。
断末魔の叫びさえも泡に消え、巨獣の身体は蒼い光の粒子となって、静かに深い闇へと溶けていった。
「……ふぅ。……おわった。……お水、……あったかく……なった。……ミル、……これ……すき。……お風呂……みたい……一秒前。……クレア、……あそこに……何か……落ちてる」
ミルが、役目を終えて静まり返った**『もう壊さない杖』**で、底に沈んだ戦利品を指し示した。
そこにあったのは、リヴァイアサンの魔力が結晶化した「凍土の心臓」と、決して融けることのない「深淵の氷鱗」。金貨千枚に匹敵する鳳凰の宝に並ぶ、この三層の最高級素材だ。
「ガハハ! 冗談じゃないよ! こんなに立派な鱗、見たこともないねぇ! ――セイン、こいつをアタシの背負い袋に詰め込んでおくれ! これがあれば、次への装備はもっとすごくなるよ!」
ケットルが、**『巨大背負い袋』**の口を広げ、嬉しそうに素材を回収していく。
ドワーフの彼女は、すでにこの氷鱗を使って、水圧にも熱にも耐える「魔導潜水艦」や「強化防具」の設計図を頭の中で描き始めているようだった。
「……論理的に見て、……現時点での……目標……達成率は……一三〇%……です。……構造解析……。……っ、……リヴァイアサンの……消滅に……より、……水底の……結界が……解除……されました! ……環境上書き……! ……私たちの……周囲の……酸素を……固定……し、……地上への……帰還……路を……構築……しなさい……!!」
セインの眼鏡が黄金色に輝き、水中に光の柱が立ち昇った。
ハーフエルフの冷静な判断が、崩れ始める三層からの脱出路を確保する。彼女の演算によれば、この光の先に待つのは、さらなる深淵か、あるいは休息の我が家か。
「……あはは、……やっぱり……あたいが……一番……早く……おうちに……帰って……自動洗浄トイレに……駆け込む……ほうに……銀貨……三枚……!! ……ねえ、……クレア……、……あたいの……銀靴……、……まだ……熱いよぉ!!」
カノンが、銀靴の踵を水中で鳴らし、悪戯っぽく笑った。
死線を潜り抜けた後の彼女の笑顔は、冷たい水底で何よりも暖かかった。私は剣を鞘に収め、仲間の手を取る。
「……ふふ、……カノン、……それだけは……譲れないよ。……さあ、……みんな……帰ろう! ……私たちの……新しい……戦利品を……持って!」
光の柱に包まれながら、私たちは水底を後にした。
三層を制した証を胸に、私たちはまた一歩、深淵の先へと歩みを進める。
リトル・リンク、今日も(リヴァイアサンの氷鱗を抱え、勝利の余韻と共に温かな我が家へ帰還しながら)ちょっとだけ成長中。
第177話をお読みいただき、ありがとうございました。
三層の主「アイシクル・リヴァイアサン」を見事な連携で撃破しました!
鳳凰のアイテムに続き、三層の最高級素材を手に入れた彼女たち。ケットルの手によって、これらの素材がどんな「お宝」に変わるのか、そして四層ではどんな未知の恐怖が待ち受けているのか。
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