第176話 深淵の連撃、泡沫の「双牙」と不屈の旋回
セインの「沸騰術式」が、アイシクル・リヴァイアサンの凍てつく鱗を熱い気泡で包み込んでいく。
私は、虹色の筋が走る**『銀竜の絆』**を正眼に構え、気泡の激流に抗いながら、仲間の背中を真っ向から見据えた。
「……ふぅ。……クレア、……まって。……お水……まわってる。……ミル、……魔力……ひねる……一秒前……。……カノン、……しっぽ……くる……。……上……! ……三……二……一……、……いって……!」
ミルの合図。彼女の**『もう壊さない杖』**から放たれた水流が、カノンを弾丸のように加速させた。
蒼い深淵を縦横無尽に駆けるカノンの銀靴が、紅い彗星の尾を引くように私の瞳に映る。あいつ、リヴァイアサンの牙を紙一重でかわして、巨大な鼻先を嘲笑うように旋回してる。……本当に、無茶ばっかりするんだから。
「ガハハ! 冗談じゃないよ! クレア、道はアタシらが作るからねぇ! ――セイン、カノンの腕にかかる水圧を『ゼロ』にしな! 奴の喉元、双牙で真っ二つにしてやるんだよ!」
ケットルが放った「超高速振動膜」が、カノンの短剣を包み込んで水中の抵抗を消し去る。
その背中越しに、私は剣を握る手に力を込めた。カノンが命を懸けて潜り込み、ミルが魔力を注ぎ、ケットルが道を整備する。そのすべてが、私の剣先に集まろうとしていた。
「……論理的に見て、……リヴァイアサンの……右頸部……、……魔力……供給……ラインに……過負荷……! ……構造解析……。……っ、……鱗の……隙間が……五ミリ……露出……! ……環境上書き……! ……カノンの……刺突軌道を……絶対……命中……範囲へと……固定……しなさい……!!」
セインの眼鏡が黄金色に輝き、カノンの軌道が一本の光の線となって結ばれた。
カノンは迷わずその線に乗り、二振りの短剣――**『借金回避の双牙』**をリヴァイアサンの喉元へ深々と突き立てる。
(……いっけぇ……、……水中……、……一歩……!!)
カノンが「空中一歩」を水中で炸裂させ、リヴァイアサンの巨躯を強引に仰け反らせた。
剥がれた鱗の隙間から、蒼い魔力血が噴き出す――その瞬間を、私は逃さなかった。
白濁した泡のカーテンを切り裂き、剥き出しとなった敵の「核」を見定めて、一息に踏み込む。
みんなが繋いでくれた、水底を照らす勇気と情熱。そのすべてを鳳凰の熱と共に剣に宿し、苦悶に悶える主の深奥へと、私は渾身のトドメを突き刺した。
リトル・リンク、今日も(カノンが抉じ開けた風穴に、クレアが絆の熱を全て注ぎ込みながら)ちょっとだけ成長中。
第176話をお読みいただき、ありがとうございました。
カノンの『双牙』が風穴を開け、クレアが絆を込めた一閃でトドメを刺す。これぞ五人の真骨頂とも言える鮮やかな連携でした。氷の騎士を打ち倒したリトル・リンク、このまま三層のさらに深い闇へと突き進みます!
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