第175話 水底の月、蒼白の「心臓」と凍てつく咆哮
氷層を爆砕し、五人が飛び込んだ先は、重く冷たい魔力水に満たされた「極光の海」でした。
頭上の氷がプリズムとなり、鳳凰のマントが放つ紅蓮の光を拡散させ、暗い水底を幻想的な蒼へと染め上げています。
「……ふぅ。……お水、……おもい。……ミル、……魔力……吸われる……一秒前。……そこ……。……一番……深い……底……。……白くて……大きな……塊……。……あれ……、……寝てる……んじゃ……ない。……待ち伏せ……してる」
ミルが、水中で鈍く光る**『もう壊さない杖』**の先端を、さらに深い影へと向けました。
吸血鬼の彼女には、水の流れが一点に向かって収束しているのが視えていました。砂を巻き上げ、ゆっくりと身を震わせたのは、この階層の主、氷河の主「アイシクル・リヴァイアサン」の巨躯でした。
「ガハハ! 冗談じゃないよ! アタシの『魔導レギュレーター』、この水圧でひしゃげそうじゃないか! ――セイン、この水の重さを何とかしておくれ! カノンの銀靴が、泥に足を取られたみたいに鈍っちまうよ!」
ケットルが、**『巨大背負い袋』**から「高圧噴射装置」を起動し、周囲に無数の気泡を発生させました。
ドワーフの彼女は、水の抵抗を減らすため、あえて空気の膜を纏わせる「キャビテーション加工」を全員の装備に施しました。彼女の指先は、水中という慣れない環境下でも、仲間の機動力を最大化するための最適解を即座に導き出していました。
「……論理的に見て、……現時点での……水圧は……地上……の……十倍……です。……構造解析……。……っ、……敵の……鱗の……隙間に……、……絶対……零度の……冷却……器官……! ……環境上書き……! ……周囲の……水を……強制的に……沸騰……させ、……上昇……気流を……作り出しなさい……!!」
セインが、眼鏡の奥で黄金色の「沸騰誘発術式」を爆発させました。
ハーフエルフの理知的な瞳が、リヴァイアサンの周囲を熱い泡の嵐で包み込みます。彼女の演算により、敵が操る「凍結の波動」を熱い気泡で相殺し、一行が自在に動き回れる「対流の道」を構築しました。
「……あはは、……やっぱり……水中でも……あたいの……銀靴は……最高の『翼』に……なるほうに……銀貨……三枚……!! ……ねえ、……クレア……、……あたいが……あの……デカい……トカゲの……鼻先に……泡……吹かせるか……賭ける……!?」
カノンが、銀靴の熱波を爆発的に噴射し、水の中を「ガツン!」と蹴り上げました。
回避タンクとしての覚醒。彼女はセインが作った上昇気流に乗り、巨大な尾びれの一撃を、水中での**「一秒の静止」**を挟んで鮮やかに回避。逆にその勢いを利用して、リヴァイアサンの瞳へと肉薄しました。
「……ありがとう、カノン! ……道は……拓かれた! ……みんな、……一気に……畳み掛けるよ! ……絆の……熱を……、……水底まで……届け!!」
クレアが、虹色の輝きを放つ**『銀竜の絆』**を正眼に構えました。
かつての「最弱」たちは今、深淵の主を前にしても、その瞳に一点の曇りもありません。カノンが開いた気泡の道を駆け抜け、彼女の剣先が蒼い深淵を紅く染め上げるべく閃きました。
リトル・リンク、今日も(水底の王を絆の熱で呼び覚まし、泡の舞踏と共に深淵を駆け抜けながら)ちょっとだけ成長中。
第175話をお読みいただき、ありがとうございました。
水中での「リヴァイアサン」戦がついに開幕!
セインの沸騰術式とケットルの気泡装置が、水中という不利を「ホームグラウンド」へと書き換えました。
カノンの水中「空中一歩」も成功し、物語はいよいよ三層のクライマックスへ向かいます。
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