第173話 白銀の交錯、凍てつく「双牙」と不屈の旋回
氷河の騎士「グラキエス・ナイト」が振り下ろす大剣が、水晶の床を粉砕し、鋭い氷の飛礫を撒き散らしました。
カノンは新調された銀靴の熱波スパイクでその衝撃をいなしつつ、腰のホルダーから鈍い光を放つ二振りの短剣――**『借金回避の双牙』**を抜き放ちました。
「……ふぅ。……カノン、……はやい。……でも……あっちの……よろい……、……カノンの……ナイフ……、……カチン……って……はじく。……ミル、……魔力……流し込む……一秒前。……カノン、……お耳……澄まして。……核の……鼓動……、……そこ……!」
ミルが、紅く輝く**『もう壊さない杖』**を掲げ、カノンの短剣に「超振動」の魔力を付与しました。
吸血鬼の彼女には、騎士の鎧の継ぎ目が一瞬だけ呼吸するように開く「隙」が視えていました。彼女の魔力が宿った短剣は、硬質な氷の結合を直接震わせて破壊する、文字通りの「牙」へと変貌を遂げました。
「ガハハ! 冗談じゃないよ! アタシの鍛えた双牙が、あんな氷クズに負けるわけないじゃないか! ――セイン、カノンの足元の摩擦をゼロにしておくれ! 止まったら死ぬよ、このスピード狂はねぇ!」
ケットルが、**『巨大背負い袋』**から「高圧の潤滑魔油」を散布し、カノンの機動力を極限まで高めました。
ドワーフの彼女は、カノンが攻撃に集中できるよう、銀靴の摩耗を抑えつつ、短剣の重心バランスを最適化する「慣性制御」をバックアップで走らせていました。
「……論理的に見て、……カノンの……最高……速度なら……騎士の……旋回……速度を……上回り……ます。……構造解析……。……っ、……敵の……左脇腹……! ……一・五秒後に……魔力……噴出……! ……環境上書き……! ……カノンの……軌道を……真空……トンネルへと……固定……しなさい……!!」
セインが、眼鏡の奥で黄金色の「超低抵抗術式」を爆発させました。
ハーフエルフの理知的な瞳が、騎士の動作の僅かな「遅れ」を算出します。彼女が作り出した空気抵抗ゼロの領域により、カノンは物理法則を無視した角度で急旋回し、騎士の懐へと滑り込みました。
「……あはは、……やっぱり……あっちの……銀靴は……武器じゃなくて……最高の『道』……だねぇ!! ……本命は……こっち……!! ……双牙……、……利子……まとめて……払って……やるよぉ!!」
カノンが、銀靴の衝撃波で空間を「ガツン!」と蹴り、加速のエネルギーをすべて二振りの短剣へと注ぎ込みました。
彼女は騎士の懐に潜り込みながら、ミルの魔力と自身の闘気を乗せた『双牙』を、鎧の継ぎ目へと目にも止まらぬ速さで叩き込み、分厚い氷を削り、抉り、亀裂を広げていきました。
(……いっけぇ……、……空中……、……一歩……!!)
カノンが騎士の胸元で「空中一歩」を放ち、その反動を利用してさらに深く短剣を突き立てました。
「ギギィッ!」という耳を劈くような氷の悲鳴が上がり、騎士の強固な鎧に、ついに修復不可能な「大きな風穴」が開き始めました。
「……ありがとう、カノン! ……最高の……繋ぎだよ! ……みんなの……想い……、……私が……届ける!!」
クレアが、虹色の輝きを放つ**『銀竜の絆』**を正眼に構えました。
カノンが死力を尽くして抉じ開けた、その一点。仲間たちが連携して繋いできた情熱を、彼女はその剣先に集約させました。
「……いっけぇぇぇ!! ……私たちの……絆……、……凍らせ……させない!!」
クレアが踏み込み、カノンの開いた風穴へ、文字通り「トドメの一閃」を突き刺しました。
絆の連撃を締めくくる、最期の咆哮。白銀の騎士は内側から鳳凰の熱に焼かれ、ついにその巨躯を氷の塵へと変えて崩れ落ちていきました。
リトル・リンク、今日も(カノンの双牙が道を拓き、クレアの剣が絆を完結させながら)ちょっとだけ成長中。
第173話をお読みいただき、ありがとうございました。
カノンの『双牙』が風穴を開け、クレアが絆を込めた一閃でトドメを刺す。これぞ五人の真骨頂とも言える鮮やかな連携でした。氷の騎士を打ち倒したリトル・リンク、このまま三層のさらに深い闇へと突き進みます!
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