第172話 氷の最果て、凍結する「感情」と古の守護者
氷の精霊たちを鳳凰の熱で溶かし去り、五人が辿り着いたのは、洞窟の最深部――そこは空気が液体になるのではないかと思えるほどに澄み切った「氷王の広間」でした。
天井からは、剣のように鋭い巨大な氷の結晶が幾千も突き刺さり、その中央には、青白い光を放つ巨大な「氷の鎧」が、主の帰りを待つかのように屹立していました。
「……ふぅ。……ここ、……からっぽ。……ミル、……魔力の……色……見えない。……ただ……透明……一秒前。……あっちの……よろい、……中身……ない……のに……ミル……見てる。……魂……凍ってる……みたい」
ミルが、鳳凰の魔力で赤く輝く**『もう壊さない杖』**を両手で握りしめ、青白い鎧を見つめていました。
吸血鬼の彼女には、その鎧の周囲だけ、魔力さえも「思考を止めている」かのような異質な静止が視えていました。それは怒りも憎しみもなく、ただ「侵入者を排除する」という純粋な命令だけが氷に封じられた姿でした。
「ガハハ! 冗談じゃないよ! アタシの『鳳凰の羽衣』が、あいつの気配に当てられて激しく燃え上がってやがる! ――セイン、あの大男、体がないのにどうやって動くつもりだい!? まるで氷そのものが意志を持ってるみたいだよ!」
ケットルが、**『巨大背負い袋』**の予備タンクを全開にし、リビングの温泉で溜めた「黄金の蒸気」を周囲に撒き散らしました。
ドワーフの彼女は、周囲の酸素が凍りつく前に、強制的に温度を保つ「局所暖房領域」を展開。彼女の指先は、極寒で収縮しようとする仲間の装備の隙間を、熱を帯びた魔導銀で繋ぎ止めていました。
「……論理的に見て、……あの……個体は……三層の……環境……そのもの……です。……構造解析……。……っ、……鎧の……継ぎ目に……、……絶対……零度の……核……! ……環境上書き……! ……私たちの……感情の……高ぶりを……熱……エネルギーへと……変換……させ、……凍結を……拒絶……しなさい……!!」
セインが、眼鏡の奥で黄金色の「感情熱変換術式」を爆発させました。
ハーフエルフの理知的な瞳が、敵の正体――「グラキエス・ナイト(氷河の騎士)」の核を捉えます。彼女の演算により、仲間の「勝ちたい」という熱い想いが、そのまま物理的な熱量へと変換され、周囲の空気を春のように温め始めました。
「……あはは、……やっぱり……あっちの……鉄くず……じゃなくて……氷くずの……頭が……あたいの……銀靴で……飛ぶ……ほうに……銀貨……三枚……!! ……ねえ、……クレア……、……あたいが……あの……でくの坊に……空中……一歩……何回……当てるか……賭ける……!?」
カノンが、銀靴の熱波スパイクで氷の床を「ガツン!」と踏みしめ、爆発的な初速で踏み出しました。
回避タンクとしての興奮。彼女は騎士が振り下ろす巨大な氷の剣を、空中での**「一秒の静止」**を挟んで紙一重で回避。逆にその剣の腹を蹴り上げ、そのまま騎士の兜の隙間へと飛び込みました。
(……いっけぇ……、……空中……、……一歩……!!)
カノンが騎士の首元で空を蹴ると、鳳凰の熱を纏った白銀の衝撃波が炸裂しました。
しかし、騎士の巨躯はびくともせず、逆にその冷気がカノンの熱波を飲み込もうと膨れ上がります。
「……っ、……カノン、……危ない……!! ……銀竜の……咆哮……!!」
クレアが、虹色の輝きを放つ**『銀竜の絆』**を正眼に構え、カノンに向けて放たれた氷の礫を弾き飛ばしました。
しかし、騎士の防御力は想像を絶していました。クレアの一撃をもってしても、氷の鎧の表面に薄いヒビを入れるのが精一杯。かつての「トドメ役」ではいられない、三層の真の試練がそこにありました。
「……ふふ、……やっぱり……簡単には……いかないねぇ。……みんな、……ここからは……持久戦だよ。……一発じゃ……無理なら、……百発……千発……、……絆の……熱を……叩き込むまで……!!」
クレアが剣を構え直し、仲間の盾となるべく最前線へと踏み込みました。
かつての「最弱」たちは今、一撃必殺の幻想を捨て、泥臭く、着実に、三層の騎士を絆で削り取ろうとしていました。
リトル・リンク、今日も(一撃では届かない絶望を、仲間の連携と不屈の熱で塗り替えながら)ちょっとだけ成長中。
第172話をお読みいただき、ありがとうございました。
クレアの一撃ですら表面を削るのがやっとという、三層の騎士の圧倒的な防御力!
これまでのように「トドメを刺して終わり」とはいかない、長期戦の予感です。
セインの感情熱変換、ケットルの蒸気、ミルの魔力解析。
全員が全力を出し尽くし、カノンが死線を潜り抜け、クレアが耐え忍ぶ。
本当の意味での「パーティの総力戦」が今、始まります。
「クレアが苦戦する姿に、三層の怖さを感じる……!」「カノンの『空中一歩』でも崩せないなんて!」と思ってくださった方は、ぜひ下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして、応援いただけると励みになります!
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