第167話 鳳凰の落涙、金貨千枚の「湯煙」と極上の温泉
空中庭園の黄金の輝きが遠い頭上の点となり、五人は崩れゆく回廊からポータルへと飛び込みました。
辿り着いたのは、いつもの懐かしい我が家のリビング。しかし、その手には二層の主を討ち果たした証――市場に出せば金貨千枚を下らないと言われる国宝級の秘宝「太陽の雫」と「鳳凰の尾羽」が握られていました。
「……ふぅ。……かえった。……おうち、……ほっと……する。……ミル、……お鼻……むずむず。……これ、……金貨……千枚……ぶんの……におい。……ミル、……ふかふか……クッション……ダイブ……一秒前。……この……宝石……、……抱っこして……寝る……」
ミルが、熱を帯びた**『もう壊さない杖』**を玄関に立てかけ、赤く脈動する「太陽の雫」を抱えながらソファへと倒れ込みました。
吸血鬼の彼女にとって、金貨千枚という価値よりも、この雫から溢れ出す濃密な魔力の抱き心地こそが至高の贅沢でした。彼女の瞳は、戦いの高揚から解き放たれ、宝石の熱に包まれてトロリと蕩けていました。
「ガハハ! 冗談じゃないよ! 金貨千枚の素材を売っ払って、金貨の山を眺めるなんてアタシの性分じゃないね! ――セイン、この至宝をアタシたちの風呂にブチ込むよ! 毎日が金貨千枚ぶんの贅沢、『鳳凰の天然魔導温泉』に大改造だい!」
ケットルが、**『巨大背負い袋』**から「鳳凰の尾羽」を筆代わりに取り出し、浴室の床一面に魔導銀の回路を走り書きしました。
ドワーフの彼女にとって、素材を「使う」ことこそが職人の敬意。金貨千枚を換金せず、自分たちの明日の活力へと変換する。彼女の槌音が、誇らしげなリズムで脱衣所に響き渡りました。
「……論理的に見て、……金貨……千枚の……資産を……設備……投資へと……全振り……するのは……極めて……大胆な……経営……判断……です。……構造解析……。……っ、……この……雫の……波形……! ……細胞……再生速度を……五〇〇%……向上……させます! ……環境上書き……! ……お湯の……成分を……アルカリ性……から……鳳凰……治癒……泉へと……固定……しなさい……!!」
セインが、眼鏡の奥で黄金色の「水質昇華術式」を爆発させました。
ハーフエルフの理知的な瞳が、浴室の湯気に虹色の輝きを添えていきます。彼女の演算により、金貨千枚の価値は、体の芯まで染み渡り、あらゆる傷を癒やし、魔力回路を根底から鍛え上げる、文字通り「黄金の湯」へと姿を変えました。
「……あはは、……やっぱり……あっちの……蛇口から……出る……お湯が……黄金色に……光る……ほうに……銀貨……三枚……!! ……ねえ……クレア……、……金貨……千枚の……お湯に……浸かって……あたいの……銀靴が……さらに……速くなるか……賭ける……!?」
カノンが、銀靴を脱ぎ散らかして、リニューアルされた大浴場へと一番乗りで飛び込みました。
ギャンブル好きの彼女にとって、この「温泉化」は人生最大の逆転勝ち。国宝級の魔力を全身で浴びる贅沢に、彼女の尻尾は湯船の外で激しく左右に振られていました。
「……ふふ、……カノン……、……お風呂で……泳いじゃ……ダメだよぉ。……でも、……本当に……気持ちいい。……二層の……苦労が……全部……溶けていく……みたい。……金貨……千枚よりも……ずっと……価値のある……時間……だね」
クレアが、虹色の筋が走る**『銀竜の絆』**を丁寧に手入れし、白濁した黄金の湯に身を沈めました。
鳳凰の至宝を私物化するという、冒険者ギルドが聞けば卒倒するような贅沢。自動洗浄トイレに続き、この「極楽」を手に入れた彼女たちは、束の間の休息の中で、絆をより深く、より熱く、温め直していました。
リトル・リンク、今日も(金貨千枚の湯気に包まれ、鳳凰の恩恵を全身で味わいながら)ちょっとだけ成長中。
第167話をお読みいただき、ありがとうございました。
二層突破の報酬「金貨千枚」相当の至宝を、惜しげもなく「自宅の温泉化」に注ぎ込むリトル・リンク!
鳳凰の核から溢れ出す無限の熱量は、彼女たちの疲れを癒やすだけでなく、身体能力そのものを根底から強化してくれるはずです。
カノンの「金貨千枚スイミング」も、この贅沢な空間なら許される……かも?
しかし、この温かな休息の先に待つのは、一転して「氷の世界」である第三階層。
鳳凰の熱を体に宿した彼女たちは、極寒の深淵でどんな戦いを見せるのでしょうか。
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