第168話 極寒の三層、凍りつく「一歩」と鳳凰の加護
黄金の温泉で英気を養った五人が、満を持してポータルを潜り抜けた先。そこは、空中庭園の熱気が幻だったかと思わせる、死の静寂に包まれた「氷結の回廊」でした。
「……ふぅ。……むり。……ミル、……まつげ……凍った。……これ、……ただの……寒さ……じゃない。……魔力が……熱を……食べてる。……ミル、……氷像……一秒前。……かえ……る……」
ミルが、真っ白な息を吐きながら**『もう壊さない杖』**を抱え、ガタガタと震え出しました。
吸血鬼の彼女にとって、熱を奪い去る三層の冷気は天敵です。彼女の瞳は寒さでルビー色を失い、蒼白く濁り始めていました。
「ガハハ! 冗談じゃないよ! アタシのパチンコ、弦が凍って引き絞れやしないじゃないか! ――セイン、このままじゃ戦う前に全員カチコチだい! 一旦退却して、立て直しだよ!」
ケットルが、**『巨大背負い袋』**から「防寒用毛布」を全員に被せ、無理やりポータルへと押し戻しました。
ドワーフの彼女は、金属が低温で脆くなる「低温脆性」を即座に感知。今の装備では三層の魔物に触れる前に、自分たちの武器が砕け散ることを直感していました。
「……論理的に見て、……現時点での……生存……限界時間は……三……百……秒……です。……構造解析……。……っ、……空気中の……酸素……さえ……結晶化……! ……環境上書き……! ……私たちの……体温を……一分間……だけ……擬似的に……固定……しなさい……!!」
セインが、眼鏡の奥で黄金色の「体温維持術式」を爆発させ、撤退の時間を稼ぎました。
ハーフエルフの理知的な瞳が、三層の入り口付近に充満する「熱吸収結界」を捉えます。彼女の演算により、この階層は「ただ着込む」だけでは突破不可能であることが判明しました。
「……あはは、……やっぱり……あっちの……おうちに……帰るほうが……銀貨……三枚……!! ……ねえ、……クレア……、……あたいの……銀靴……、……氷で……滑って……踊っちゃったよぉ……!!」
カノンが、氷の床で派手に滑りながらも、命からがらポータルへと滑り込みました。
回避タンクとしての機動力も、摩擦係数ゼロの氷の上では無力。彼女は悔しさを噛み締めつつも、我が家の暖かいリビングへと転がり込みました。
「ガハハ! 待ってな、みんな! さっきの鳳凰の尾羽、ここで使わなきゃ職人の名が廃るってなもんさ! ――セイン、この尾羽から『不滅の火種』を取り出しな! アタシが最高の防寒マントを仕立ててやるよ!」
ケットルが、**『巨大背負い袋』**から鳳凰の尾羽を取り出し、炉の火を黄金色に燃え上がらせました。
尾羽の芯から溢れる熱を、特殊な「魔導繊維」に編み込んでいく。それは一度袖を通せば、極寒の地にあっても春の木漏れ日のような暖かさを保つ、伝説級の防寒具「鳳凰の羽衣」へと姿を変えました。
「……ふぅ。……あったかい。……これ、……温泉……着てる……みたい。……ミル、……もう……寒くない。……三層の……氷、……ミルが……溶かして……あげる……一秒前」
鳳凰の羽を編み込んだ紅蓮の縁取りのマントを羽織り、五人は再びポータルの前に立ちました。
今度は、誰の吐息も白くありません。カノンの銀靴には、氷を噛むための「スパイク状の熱波」がケットルの手によって追加されていました。
「……ありがとう、ケットル。……よし、……みんな! ……今度こそ……三層の……深淵まで……駆け抜けるよ!」
クレアが、虹色の輝きを放つ**『銀竜の絆』**を正眼に構え、極寒の地へと再挑戦の一歩を踏み出しました。
鳳凰の加護を纏った彼女たちの輝きが、今、三層の静止した闇を熱く、鋭く、照らし始めました。
リトル・リンク、今日も(鳳凰の温もりに包まれ、三層の氷壁を絆の熱で溶かしながら)ちょっとだけ成長中。
第168話をお読みいただき、ありがとうございました。
三層の「初見殺し」とも言える冷気に、一度は撤退を余儀なくされたリトル・リンク。
しかし、ケットルの職人魂と鳳凰の至宝が合わさり、最強の防寒装備が完成しました!
「温泉を着ているみたい」というミルの言葉通り、今の彼女たちは極寒の中でも本領を発揮できます。
氷の上を滑るのではなく、熱波で掴むカノンの新機動。
果たして、氷結の迷宮の奥で待ち受ける「水底の蛇」の正体とは……?
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