第166話 鳳凰の落涙、黄金の「灰」と二層の終焉
クレアが放った渾身の一閃が、鳳凰「ソーラー・フレア」の胸部にある魔力炉の核を真っ二つに切り裂きました。
一瞬の静寂の後、空中庭園を焦がしていた紅蓮の炎が、まるで雪のように白い光の粒子へと変わり、水晶の回廊へと降り注ぎました。
「……ふぅ。……おわった。……あつい……の、……消えた。……ミル、……これ……きれい。……お空……、……金色の……雪……降ってる。……ミル、……お口……あけて……パクッ……一秒前」
ミルが、熱から解放された**『もう壊さない杖』**を杖代わりにし、降り注ぐ魔力の残滓を見つめていました。
吸血鬼の彼女には、鳳凰の体が純粋な「陽の魔力」へと還元されていくのが視えていました。その一粒一粒が、戦いで磨耗した彼女たちの魔力回路を優しく癒やし、心地よい温かさで満たしてくれました。
「ガハハ! 冗談じゃないよ! アタシの特注防具、最後は熱でドロドロになるかと思ったよ! ――セイン、見ておくれ! 鳳凰が消えた跡に、とんでもないお宝が転がってるじゃないか!」
ケットルが、**『巨大背負い袋』**から「耐熱グローブ」を取り出し、鳳凰の核があった場所に歩み寄りました。
ドワーフの彼女が見つけたのは、脈動を続ける「太陽の雫」と呼ばれる真紅の宝石と、決して燃え尽きることのない「鳳凰の尾羽」。市場では金貨千枚を積んでも手に入らない、神話級の鍛造素材でした。
「……論理的に見て、……現時点での……目標……達成率は……一二〇%……です。……構造解析……。……っ、……鳳凰の……消滅に……連動……して……、……地底の……空が……閉じ始めて……います! ……環境上書き……! ……私たちの……周囲の……浮力を……固定……し、……安全な……降下……ルートを……確保……しなさい……!!」
セインが、眼鏡の奥で黄金色の「重力勾配解析術式」を展開しました。
ハーフエルフの理知的な視線が、空中庭園の崩壊を察知します。鳳凰という「心臓」を失ったことで、浮遊していた島々がゆっくりと、しかし確実に、未知の第三階層へと沈み込み始めていました。
「……あはは、……やっぱり……あたいの……銀靴が……最後に……一番……高く……飛んだ……ほうに……銀貨……三枚……!! ……ねえ、……クレア……、……あたいが……三層の……地面に……一番乗り……するか……賭ける……!?」
カノンが、銀靴の踵を鳴らし、崩れゆく回廊の端で不敵に笑いました。
回避タンクとしての興奮は、まだ冷めていません。彼女は沈みゆく空中庭園を巨大な「エレベーター」に見立て、次なる深淵への期待に胸を躍らせていました。その瞳には、すでに下方から吹き抜ける「冷たく、湿った風」が映っていました。
「……ふふ、……カノン……、……それは……賭けに……ならないよぉ。……きっと……みんな……一緒だもん。……さあ、……行こう。……私たちの……新しい……戦場……、……三層へ!」
クレアが、虹色の筋が走る**『銀竜の絆』**を鞘に収め、仲間の手を取りました。
空中庭園の光が遠ざかり、五人は雲海の底、暗く冷たい「三層」の入り口へとゆっくりと吸い込まれていきました。
リトル・リンク、今日も(二層の王を越えた証を胸に、未知の深淵へと静かに降下しながら)ちょっとだけ成長中。
第166話をお読みいただき、ありがとうございました。
第二階層「空中庭園」編、ついに完結です!
灼熱の鳳凰を打ち倒し、彼女たちは「太陽の雫」という伝説級の素材を手に入れました。
しかし、勝利の余韻に浸る間もなく、舞台は次なる階層へ。
空中から一転、三層は「冷たく湿った闇」の世界。
そこではどんな魔物が待ち受け、ケットルはどんな新装備を考案するのか?
そしてミルの「お腹空いた一秒前」は、三層の特産品(?)で満たされるのでしょうか。
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