第163話 黄金の門、虚空を穿つ「一秒の跳躍」
ミラー・サーペントの銀鱗が雲海へと散っていく中、五人の前には、地底の太陽の真裏に鎮座する「黄金の門」が、その威容を現していました。
それは物理的な扉ではなく、数万の魔導術式が重なり合って形成された、光の幾何学模様。空中庭園の全魔力が収束する、この階層の「心臓部」への入り口でした。
「……ふぅ。……おっきい。……これ、……門……じゃない。……魔力の……渦。……ミル、……吸い込まれ……そう。……耳鳴り、……キーン……一秒前。……でも……これ……開け方……知ってる。……ミル、……杖……差し込む……だけ」
ミルが、激しく共鳴する**『もう壊さない杖』**の先端を、門の中央にある空白へと向けました。
吸血鬼の彼女には、門の術式が「特定の魔力周波数」を求めているのが視えていました。彼女の杖が放つ静かな銀色の光が、門の幾何学模様と重なり、複雑な歯車が噛み合うような重低音が空中に響き渡りました。
「ガハハ! 冗談じゃないよ! こんな精密な術式の鍵、アタシのパチンコじゃこじ開けられやしないねぇ! ――セイン、この門の『継ぎ目』を見つけておくれ! 術式が緩んだ瞬間に、アタシの特製『解体弾』を叩き込んでやるからね!」
ケットルが、**『巨大背負い袋』**から、銀と紫の紋様が刻まれた「対魔導用・重力弾」を取り出しました。
ドワーフの彼女は、ミルの魔力同調によって生じるわずかな「術式の歪み」を狙っていました。物理的な破壊ではなく、術式の結合を物理的に引き剥がす。それが、彼女が市場で仕入れた新素材で作り上げた、対結界用の新兵器でした。
「……論理的に見て、……門の……封印解除率は……現在……六十八%……です。……構造解析……。……っ、……中心核に……逆流……術式……! ……不用意に……触れれば……魔力が……枯渇……します! ……環境上書き……! ……門の……吸引力を……外部へと……排出し、……安全な……魔力パスを……固定……しなさい……!!」
セインが、眼鏡の奥で黄金色の「バイパス構築術式」を爆発させました。
ハーフエルフの理知的な瞳が、門に仕掛けられた「罠」を瞬時に見抜きます。彼女の術式が門の魔力を強引に回路の外へと逃がすと、黄金の幾何学模様が、まるで苦悶するように激しく明滅し、その隙間を広げていきました。
「……あはは、……やっぱり……あっちの……隙間が……あたいを……呼んでる……ほうに……銀貨……三枚……!! ……ねえ、……クレア……、……あたいが……門の……向こう側へ……『空中一歩』で……一番乗り……するか……賭ける……!?」
カノンが、新型の銀靴を「ガツン!」と空中で打ち鳴らしました。
回避タンクとしての本能。彼女はセインが作り出したわずかな「魔力の隙間」へと、弾丸のような速度で身を投げました。
(……今だよぉ……、……空中……、……一歩……!!)
カノンが黄金の光の粒子を踏み抜くと、新調されたミスリルソールが門の抵抗を霧散させました。彼女の「一秒の跳躍」は、物理的な距離だけでなく、魔導的な障壁さえも飛び越え、五人を未知の領域へと導きました。
「……ありがとう、カノン。……みんな、……門が……開くよ! ……この……光の……向こう側に……、……二層の……主が……待っている!」
クレアが、虹色の輝きを放つ**『銀竜の絆』**を抜き放ち、眩い光の渦へと飛び込みました。
門を抜けた瞬間に感じたのは、これまでの熱気とは正反対の、静謐で、冷徹な「王」の気配でした。
リトル・リンク、今日も(黄金の封印を絆の術式で解き明かし、階層の深淵へとその足跡を刻みながら)ちょっとだけ成長中。
第163話をお読みいただき、ありがとうございました。
地底の太陽の裏側に隠された「黄金の門」を突破!
ミルの魔力同調、ケットルの重力弾、セインのバイパス構築、そしてカノンの「空中一歩」。
四人の役割が見事に噛み合い、ついにリトル・リンクは空中庭園の最深部、ボスの間へと到達しました。
門の向こう側に漂う「冷徹な王」の気配。
果たして、第二階層を統べる『天空の支配者』とは、どのような姿をしているのでしょうか。
次話、ついにその姿が明らかになります!
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