第156話 白銀の湯煙、絆を温める「リトル・リンク」の休息
新設された大浴場には、セインが調整した薬草の香りと、ケットルが厳選した「魔導加熱石」が生み出す柔らかな湯気が立ち込めていました。
リビングの一角とは思えないほど広々とした石造りの浴槽。そこに、五人の少女たちが一日の疲れを溶かすように身を沈めました。
「……ふぅ。……とける。……ミル、……マシュマロ……みたい。……お湯、……とろとろ。……これ、……吸血鬼の……お肌、……ぷるぷる……一秒前。……アヒルさん、……ぷかぷか……してる」
ミルが、湯船に浮かべた黄色い魔導アヒルを指先でつつきながら、顎までお湯に浸かっていました。
吸血鬼の彼女にとって、適温に管理された「魔力水」の風呂は最高の休養です。彼女の瞳は、湯気の中でうっとりと細められ、戦場での鋭い殺気はどこへやら、ただの無邪気な少女の顔に戻っていました。
「ガハハ! 冗談じゃないよ! アタシの設計した『自動対流システム』、完璧じゃないか! ――セイン、見ておくれよ! 湯加減がどこを向いても均一だ。これこそ職人の理想郷だよ!」
ケットルが、手ぬぐいを頭に乗せて豪快に笑いながら、湯船の端で足を伸ばしました。
ドワーフの彼女は、自分が作り上げた設備が仲間に喜ばれる瞬間が、何よりの報酬でした。自動洗浄トイレのノウハウを詰め込んだ「排水・清浄術式」は、どれだけ汚れて帰ってきても一瞬で水を透明に保つ、彼女の技術の粋を集めたものでした。
「……論理的に見て、……この……入浴による……毛細血管の……拡張は……魔力……回復速度を……二五%……向上……させます。……構造解析……。……っ、……カノンの……側頭部……、……のぼせ……兆候……あり! ……環境上書き……! ……彼女の……周囲……だけ……水温を……二度……下げなさい……!!」
セインが、眼鏡(防水加工済み)の奥で黄金色の「健康管理術式」を展開しました。
ハーフエルフの理知的な視線は、お風呂の中でも休まりません。彼女は仲間の心拍数や体温をリアルタイムでモニターし、誰一人として倒れることのない「完璧な入浴体験」を演算し続けていました。
「……あはは、……やっぱり……あたいの……勝ち……だねぇ!! ……ねえ、……クレア……、……セインが……お風呂の……中でも……術式……使うほうに……銀貨……三枚……!! ……的中……だよぉ!! ……ご褒美の……フルーツ牛乳、……あたいが……一番……高いやつ……もらうからねぇ!!」
カノンが、湯船の縁に腰掛け、ぷらぷらと足を揺らしながら笑いました。
ギャンブル好きの彼女にとって、この日常のやり取りさえもが「勝負」の場。的中した配当(フルーツ牛乳)を想像して、彼女の瞳はキラキラと輝いています。その背中の小さな羽が、湯気を受けて少しだけパタパタと嬉しそうに震えていました。
「……ふふ、……カノン……、……本当に……賭け事が……好きだねぇ。……でも、……こうして……みんなで……笑いながら……お風呂に……入れるなんて……。……私、……今が……一番……幸せかも」
クレアが、お湯を手で掬い、虹色の魔力が微かに混じる水面を見つめて微笑みました。
かつての彼女なら、休息の時間を「弱さ」だと恥じていたかもしれません。でも今は、この温もりが、次なる空中庭園の深淵へと向かうための「強さ」に変わることを、確信していました。
リトル・リンク、今日も(大きな湯船で絆を深く温め、明日への活力を蓄えながら)ちょっとだけ成長中。
第156話をお読みいただき、ありがとうございました。
大浴場でのリラックスタイム!
ミルのアヒルさん、セインの精密な温度管理、そして相変わらずの賭けに興じるカノン。
五人の個性が湯気の中で混ざり合い、パーティの絆はより強固なものとなりました。
清潔な自動洗浄トイレに加え、この大浴場という「聖域」を手に入れたリトル・リンク。
しっかりと疲れを癒やした彼女たちは、いよいよ明日、金貨150枚を手に街の市場へ「最強の装備」を買い出しに向かいます。
「ミルのマシュマロ化が可愛すぎるw」「セインの防水眼鏡、どこで売ってるんだ……」と思ってくださった方は、ぜひ下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして、応援いただけると励みになります!




