第155話 職人の意地、リビングを貫く「白銀の大浴場」
昨夜のフルコースの余韻が残る翌朝。
リビングに集まった五人の前で、ケットルが**『巨大背負い袋』**から取り出したのは、武器の設計図ではなく、家の構造を緻密に書き換える「リフォーム計画書」でした。
「ガハハ! 冗談じゃないよ! せっかく金貨150枚も稼いだんだ、狭い風呂桶に順番待ちで入るなんて、職人の名が廃るってなもんさ! ――セイン、アタシが設計したこの『魔導循環式大浴場』、あんたの理論で動かしておくれ!」
ケットルが、リビングの壁際を指さして豪快に笑いました。
ドワーフの彼女にとって、快適な住環境は最高のアトリエと同じ。自動洗浄トイレの技術を応用し、五人が一度に足を伸ばして入れる、大理石を贅沢に使った大浴場を作る。それが彼女の掲げた「戦士の休息」への回答でした。
「……論理的に見て、……五人の……同時……入浴に……耐えうる……給湯……システムには……大規模な……術式……構成が……不可欠……です。……構造解析……。……っ、……この……床下……! ……魔力の……通り道として……最適……です! ……環境上書き……! ……我が家の……水回りを……最高級……スパ施設へと……拡張……しなさい……!!」
セインが、眼鏡の奥で黄金色の「配管最適化術式」を展開しました。
ハーフエルフの精密な演算が、ケットルの描いた豪快な設計図に「効率」という命を吹き込みます。彼女の指先が壁に触れるたびに、複雑な魔導回路が走り、冷たかった床が「自己発熱式の大理石」へと書き換えられていきました。
「……ふぅ。……お水。……いっぱい。……ミル、……泳げる。……これ、……血の色……、……薄まらない……温度。……いい……湯加減。……ミル、……アヒルさん……浮かべる……一秒前」
ミルが、まだお湯も張られていない工事中の浴槽予定地に、**『もう壊さない杖』**を抱えて座り込みました。
吸血鬼の彼女には、セインが調整したお湯の「質」が、肌を活性化させる高濃度の魔力水であることを予見していました。彼女の瞳は、未来の湯船に浮かぶ黄色いアヒルのおもちゃを幻視して、うっとりと輝いています。
「……あはは、……やっぱり……あっちの……蛇口から……出る……お湯の……勢いに……銀貨……三枚……!! ……ねえ、……クレア……、……誰が……一番先に……のぼせて……上がるか……、……フルーツ牛乳……賭けて……勝負……しようよぉ!!」
カノンが、銀靴を脱いでリフォーム中の床をステップしながら笑いました。
ギャンブル好きの彼女にとって、日常の中に突如現れた「巨大工事」は最高のエンターテインメント。彼女はすでに、新しいお風呂の「一番風呂」を誰が取るかを当てる、自家製ルーレットの準備を始めていました。
「……あはは、……カノン……、……危ないから……工事の……邪魔……しちゃ……ダメだよぉ。……でも、……みんなで……入れる……お風呂……、……楽しみだね」
クレアが、虹色の輝きを放つ**『銀竜の絆』**を傍らに、完成していく大浴場を眩しそうに見つめました。
かつての彼女なら、贅沢な設備を作るより「予備の武器」を買うことを優先したでしょう。でも今は、仲間と笑い合える「帰る場所」を磨くことが、次の深淵を戦い抜くための最大の武器になることを知っていました。
やがて、ケットルの槌音とセインの術式が止まり、リビングの奥には、蒸気が立ち込める白銀の大浴場が姿を現しました。
リトル・リンク、今日も(湯船の中で足を伸ばし、絆を温めながら)ちょっとだけ成長中。
第155話をお読みいただき、ありがとうございました。
金貨150枚という大金を得て、一行が真っ先に向かったのは「住環境の究極強化」!
ケットルの職人魂とセインの論理が合わさり、自動洗浄トイレに続く「魔導大浴場」が誕生しました。
カノンの「のぼせレース」の賭け、そしてミルの「アヒルさん一秒前」。
冒険の疲れを完全に洗い流し、彼女たちの肌も魔力もツヤツヤに。
次回は、この新設備で英気を養った彼女たちが、ついに空中庭園のさらなる高み、そして「新装備の買い出し」へと動き出します!
「カノンの賭けの内容が平和で癒やされるw」「セインのリフォーム術、どこまでも有能すぎる……」と思ってくださった方は、ぜひ下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして、応援いただけると励みになります!




