第148話 浮遊する足場、跳躍が紡ぐ「一秒の航路」
浮遊島から浮遊島へ。島の間を繋ぐのは、セインが可視化した「魔力の糸」が微かに揺らめく断崖絶壁の空域でした。
一歩踏み外せば、雲の下にある深淵へと真っ逆さま。しかし、カノンの瞳は恐怖ではなく、最高難易度の博打を前にした勝負師のように爛々と輝いていました。
「……ふぅ。……たかい。……風、……びゅうびゅう。……ミルの……服、……めくれちゃう。……あそこ……、……変な……鳥……いる。……お目目……いっぱい。……こっち……見てる。……怖い……音、……してる」
ミルが、激しく風に煽られる銀髪を抑え、**『もう壊さない杖』**の先端を前方の空へと向けました。
吸血鬼の彼女には、島々の影に潜む多眼の怪鳥「クラウド・ゲイザー」たちが、獲物が空中に身を投じる瞬間を、涎を垂らしながら待ち構えているのが視えていました。
「ガハハ! 冗談じゃないよ! 足場が動いてる上に、空飛ぶ焼き鳥までお出ましだい! ――セイン、アタシの命綱、ちゃんとこの島の根っこに固定されてるだろうねぇ! 切れたらあんたの眼鏡を質に入れるよ!」
ケットルが、**『巨大背負い袋』**から「自動巻取り式のワイヤー」を射出し、隣の島へと突き立てました。
ドワーフの彼女は、風速と島の移動周期を指先で計りながら、パーティ全員を繋ぐ命綱のテンションを緻密に調整していました。彼女がいなければ、この空中移動はただの自殺行為でした。
「……論理的に見て、……風向きの……変化は……周期……三秒……です。……構造解析……。……っ、……前方……五十メートル……! ……空間の……密度が……希薄……です! ……環境上書き……! ……私たちの……足元に……一時的な……重力……定着面を……形成……しなさい……!!」
セインが、眼鏡の奥で黄金色の解析術式を扇状に放ち、虚空に透明な「階段」を上書きしました。
ハーフエルフの彼女は、物理的な足場がない空間に、魔力の反発を利用した擬似的な足場を作り出し、一行が空中を歩けるよう道を切り拓いていました。
「……あはは、……あたい……、……この……揺れる……世界を……全部……踏み抜いて……あげるよぉ!! ……ねえ、……クレア……、……あたいが……一回も……止まらずに……向こうまで……行けるか……賭ける……!?」
カノンが、銀靴の踵を浮遊島の縁で「カチッ」と鳴らし、虚空へと身を投げました。
回避タンクとしての本領発揮。彼女はセインの作った魔力の階段を駆け抜け、襲いかかるクラウド・ゲイザーの爪を、空中での**「一秒の静止」**を挟むことで完全にスカしました。
(……今だよぉ……、……空中……、……一歩……!!)
カノンが何もない空を「ガツン!」と踏み抜くと、その反動で一気に加速。囮となって全ての鳥たちの視線を引き付け、その隙に仲間たちが安全に移動するための「風穴」を空中に作り出しました。
「……ありがとう、カノン。……みんな、……カノンの……背中を……追って! ……この……空は……私たちの……味方だよ!」
クレアが、虹色の輝きを放つ**『銀竜の絆』**を抜き放ち、カノンに群がろうとする鳥の群れを鋭い剣気で牽制しました。
かつての彼女なら、足場の悪さに震えて立ちすくんでいたでしょう。でも今は、カノンが空を切り裂き、セインが道を作り、ケットルが命を繋いでくれる。
リトル・リンク、今日も(空中の一秒に全てを賭けて、深淵の空を駆け抜けながら)ちょっとだけ成長中。
第148話をお読みいただき、ありがとうございました。
浮遊島を渡る過酷な空中ステージ。
カノンの「一秒の静止」と「空中一歩」が、クラウド・ゲイザーを翻弄する最高の武器となっています。
そして、セインの「空間上書き」による透明な階段、ケットルの「命綱」による安全確保。
五人の役割が完璧に噛み合い、リトル・リンクは「空中」という絶望的な地形さえも攻略していきます。
果たして、この島々を統べる「天空の支配者」はどこに潜んでいるのでしょうか。
「カノンの滞空回避が相変わらず熱い!」「セインの透明な階段、ゲームっぽくてワクワクするw」と思ってくださった方は、ぜひ下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして、応援いただけると励みになります!




