第147話 深淵の「階(きざはし)」、終わらない第二階層の広大さ
ポータルを抜けた先に広がる浮遊島の上。足元を流れる雲と、地下とは思えないほど高い位置にある発光苔の「空」を見上げ、クレアは改めてこのダンジョンの異常な広さに息を呑みました。
「……ふぅ。……お空、……ひろい。……ここ、……まだ……二層。……出口、……全然……見えない。……ミル、……この……ダンジョン、……底……なし……だと思う。……どこまでも……続いてる」
ミルが、風にたなびく銀髪を**『もう壊さない杖』**の微かな魔力で抑えながら、浮遊島の端から下を覗き込みました。
吸血鬼の彼女には、この広大な空域さえもが「第二階層」という巨大な胃袋の一部であり、さらにその下、遥か深淵へと続く魔力の奔流が脈打っているのが視えていました。
「ガハハ! 冗談じゃないよ! 塔を登りきってやっと三層かと思いきや、まだ二層の続きだってのかい! ――セイン、このダンジョンを作った奴は、よっぽどへそ曲がりの職人だねぇ。街一つどころか、国一つ隠せる広さじゃないか!」
ケットルが、**『巨大背負い袋』**の重力アンカーを浮遊島の岩肌にガチンと打ち込みました。
ドワーフの彼女にとって、層の深さよりも「構造の整合性」が気になって仕方ありません。しかし、目の前に広がる古代の浮遊技術は、彼女の職人魂をこれ以上ないほど刺激していました。
「……論理的に見て、……この……第二階層は……『環境の……実験場』……です。……構造解析……。……っ、……菌糸の塔、……この……浮遊庭園、……そして……未踏の……領域……。……すべてが……一つの……層として……機能……しています! ……環境上書き……! ……私たちの……認識を……『広大な……二層』へと……適応……させなさい……!!」
セインが、眼鏡の奥で黄金色の解析術式を輝かせ、浮遊島を繋ぐ細い「魔力の糸」を可視化しました。
ハーフエルフの彼女は、この階層が単なる通過点ではなく、侵入者を試すための壮大な「試練の場」であることを理解していました。三層への階段は、この広大な庭園のさらに奥に隠されているのです。
「……あはは、……二層だけで……これなら……、……三層に……着くまでに……あたい……大富豪に……なっちゃうか、……一文無しに……なっちゃうか……、……どっちかに……賭けちゃうよぉ!! ……ねえ、……クレア……、……まだ……半分も……終わってないんだねぇ……!!」
カノンが、銀靴の踵を浮遊島の縁で軽快に打ち鳴らし、不安定な足場を楽しみながら笑いました。
回避タンクとしての興奮。彼女にとって、この終わりの見えない広大さこそが、最高の博打の舞台でした。一生かかっても遊びきれないほどの「未知」が、彼女の血を沸き立たせています。
「……うん。……そうだね。……まだ……二層なんだもんね。……でも、……絶望……なんて……してないよ。……だって、……それだけ……みんなと……一緒に……いられる……時間が……あるって……ことだもん」
クレアが、**『銀竜の絆』**の柄を優しく撫で、仲間の顔を見渡しました。
かつてのアルゴスのパーティなら、この広大さに絶望し、真っ先に彼女を「足手まとい」として切り捨てていたでしょう。でも今は、この果てしない旅路を共に歩む「絆」があります。
リトル・リンク、今日も(終わらない第二階層の広大さを楽しみながら、遥かなる三層を目指して)ちょっとだけ成長中。
第147話をお読みいただき、ありがとうございました。
そうなんです、ここはまだ「第二階層」。
一つの階層に複数のバイオーム(菌糸、空中、そしてその先……)が存在する、超巨大なダンジョンとしてのスケールを描かせていただきました。
三層への道はまだ遠いですが、一歩ずつ成長しながら進む五人にとっては、この広ささえも「楽しみ」に変わっているようです。
空中庭園を渡る島々の先、彼女たちを待ち受けるのは……?
「カノンの賭けの対象がどんどん大きくなってて笑うw」「クレアのリーダーとしての覚悟が頼もしい!」と思ってくださった方は、ぜひ下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして、応援いただけると励みになります!




