第135話 静謐の境界、繋がれた「白き石碑」の門
洋館が崩壊した跡地には、雪のように白い「胞子」が静かに降り積もっていました。
瓦礫の山から突き出すように立っていたあの石碑は、アルゴスの魔力供給が途絶えたことで、本来の青白い輝きを取り戻しています。
「……ふぅ。……ここ、……森の……真ん中。……おうち、……遠い。……歩いて……帰るの……、……ミル……絶対……無理。……お腹、……空いて……動けない」
ミルが、舞い落ちる白い粒を**『もう壊さない杖』**の先で受け止め、切なそうに目を細めました。
吸血鬼の彼女にとって、戦いの後の空腹と疲労は、何キロもの森の道を遡る気力を奪うのに十分でした。
「ガハハ! 冗談じゃないよ! アタシだってこの巨大背負い袋を担いで、あのスライムだらけの道を戻るのは御免だねぇ! ――セイン、あんたの眼鏡で、この石碑をどうにかできないかい?」
ケットルが、**『巨大背負い袋』**をドスンと下ろし、石碑の表面をコンコンと叩きました。
ドワーフの職人眼は、この石碑が単なる記録媒体ではなく、空間を折り畳むための「基部」として設計されていることを見抜いていました。
「……論理的に見て、……可能です。……構造解析……。……この……幾何学……模様……、……一対の……空間……座標……を……固定……しています……! ……環境上書き……! ……私たちの……知る……地上……入口と……同期……しなさい……!!」
セインが、眼鏡の奥で黄金色の解析術式を最大出力で展開しました。
彼女は石碑に刻まれた古代の魔導回路を強引にハッキングし、リトル・リンクが今日まで歩んできた「記憶」を触媒にして、ダンジョン入口のポータルとこの場所を直結させました。
「……あはは、……一秒……どころか……コンマ……一秒……! ……これ、……あたいが……知ってる……入口の……匂いが……するよぉ!! ……これなら……すぐ……帰れるね……!!」
カノンが、銀靴の踵を石碑の前に広がる「青い光の渦」の上で弾ませました。
回避タンクとしての勘。彼女はこの光の門が、一度でもこの場所に辿り着いた「認証されたメンバー」だけを通す、極めて安全なワープポータルであることを確信しました。
「……よかったぁ。……これで……おうちに……帰って、……温かい……スープが……飲めるね。……石碑さん、……ありがとう」
クレアが、**『銀竜の絆』**を鞘に収め、石碑に優しく手を触れました。
かつてのパーティでは、ボロボロになっても自力で街まで這い戻るのが当たり前でした。でも今は、仲間と知恵を出し合い、こうして「帰り道」さえも自分たちで作ることができる。
五人が光の門を潜ると、そこは数時間前に出発したばかりの、懐かしいダンジョン入口の広場でした。
リトル・リンク、今日も(便利なポータルを自作して、新居の自動洗浄トイレを目指しながら)ちょっとだけ成長中。
第135話をお読みいただき、ありがとうございました。
セインのチート級の解析能力により、洋館跡地の石碑が「専用ワープポータル」として開放されました!
これで探索がどれだけ深まっても、行ったことがあるメンバーなら一瞬で拠点と往復が可能に。
冒険者にとって、安全な補給と休息の確保は何よりの「成長」ですね。
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