第132話 断罪の白銀、偽りの館に降る「竜の涙」
クレアの一撃に押し返されたアルゴスは、砕けた大理石の上を無様に転がった。
かつての栄光も、整えられた銀髪も、今や泥と紫の魔力にまみれて見る影もない。彼は震える手で地面を叩き、憎悪を剥き出しにして、再びその身に埋め込まれた「帝国の刻印」を強制起動させた。
「……ふぅ。……くる。……最後、……全部……燃やす……つもり。……アルゴス、……自爆……魔法……使う。……狂ってる。……もう……止まらない」
ミルが、激しく明滅する**『もう壊さない杖』**を両手で握りしめ、前方に「静寂の障壁」を展開した。
吸血鬼の彼女には、アルゴスの体内の魔力回路が、臨界点を超えて逆流を始めているのが視えていた。彼が狙っているのは勝利ではない。自分を拒絶した世界すべてを道連れにした、破滅だ。
「ガハハ! 冗談じゃないよ! 勝てないと分かったら自爆スイッチを入れるなんて、最高に出来の悪い『欠陥機械』だねぇ! 自分の体まで道具にして、そんな不格好な改造を施すなんて……職人として、見てるだけで虫唾が走るよ!」
ケットルが、**『巨大背負い袋』**の全ロックを解除し、内蔵された「重力固定弾」をパチンコに装填した。
ドワーフの彼女にとって、アルゴスはもはや人間ではなく、意志を失った粗悪なゴーレムと同じに見えていた。彼女は最大出力で引き金を引いた。放たれた弾丸はアルゴスの周囲の空間を捻じ曲げ、その暴走する回路を強引に圧壊させ、動きを一点に縫い留めた。
「……論理的に見て、……今の……彼を……修復……する……術は……ありません。……構造解析……。……魔力核、……完全……崩壊……五秒前! ……環境上書き……! ……私たちの……絆を……一つの……点に……収束……しなさい……!!」
セインが、眼鏡の奥で黄金色の光を爆発させた。
彼女は自分自身の魔力だけでなく、ミルの障壁、ケットルの重力、そしてカノンの機動力を、一つの術式としてクレアの剣へと連結させた。それはパーティ全員の「意志」を、一本の光の矢へと変える合体術式だった。
「……あはは、……一秒……どころか……コンマ……一秒……! ……あたいが……あの……壊れかけの……機械……、……トドメの……一蹴り……入れて……あげるよぉ!!」
カノンが、銀靴の踵を火花が散るほど激しく打ち鳴らした。
回避タンクとしての機動力。彼女はアルゴスの爆発的な余波を紙一重でかわしながら、その首筋の刻印へ閃光のような蹴りを叩き込み、術式の暴走を一瞬だけ硬直させた。
『――グアァァァ! 貴様ら如きが、私を……このアルゴスをォォ!!』
「……さよなら、アルゴス。……あなたの……呪縛から、……私は……今……自由になるよ!」
クレアが地を蹴った。
仲間の全ての魔力を背負った**『銀竜の絆』**が、白銀の光を通り越し、透明な「竜の涙」のような純粋な輝きへと昇華した。
ズドォォォォォン!!
白銀の一閃が、アルゴスの心臓に刻まれた「帝国の刻印」ごと、その怨念を真っ二つに切り裂いた。
爆発の光は、クレアの浄化の輝きに包み込まれ、館全体を揺るがす白い衝撃となって、洋館そのものを内側から崩壊させていく。
リトル・リンク、今日も(崩れゆく過去の遺産を背に、光り輝く出口へと駆け抜けながら)ちょっとだけ成長中。
第132話をお読みいただき、ありがとうございました。
ついにアルゴスとの決着がつきました。
ケットルにとっては、自らを「機械」のように改造し、挙句に自爆しようとするアルゴスの姿は、職人として最も許せないものだったようです。
「盾」として耐えるだけだったクレアが、仲間の力を収束させる「芯」となった瞬間でした。
崩壊する白亜の館。その瓦礫の中から脱出した彼女たちの前に広がるのは、いよいよ第二階層の「真の姿」……?
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