第126話 鏡像の回廊、偽りの「自分」を越えて
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第一階層の主、オークジェネラルの亡霊を退けたリトル・リンク。
二階へと足を踏み入れた彼女たちを待ち受けていたのは、左右を果てしなく続く鏡に囲まれた「鏡像の回廊」でした。
そこに映し出されるのは、自分たちの姿――。
ですが、鏡の中の「彼女たち」は、どこか様子が違いました。
リトル・リンク、今日も(自分自身の偽物という、最も厄介な敵を前にしながら)ちょっとだけ成長中!
「……ふぅ。……二階、……もっと……空気が……澱んでる。……鏡、……いっぱい。……どこを……見ても、……ミルが……いる。……少し……酔いそう」
ミルが、左右の壁を埋め尽くす鏡の列を**『もう壊さない杖』**の先で拒絶するように遠ざけた。
吸血鬼の彼女は、鏡に自分の姿が映ること自体は構わないが、この鏡の中に閉じ込められた「魔力の質」が、自分たちの本質を歪ませて反射していることに、本能的な嫌悪感を抱いていた。
「ガハハ! 冗談じゃないよ! どっちを向いてもアタシの不細工なツラが拝めるなんて、どんな罰ゲームだい! ……おや、……待ちな。……あのアタシ、……パチンコじゃなくて……大砲を……担いでやがる……?」
ケットルが、**『巨大背負い袋』**を揺らして足を止めた。
鏡の中に映る「ケットル」は、彼女がいつか作りたいと夢見ていた、身の丈を超える巨大な魔導砲を肩に担ぎ、冷酷な笑みを浮かべていた。
それは、彼女たちの「願望」や「可能性」が、歪んだ形で具現化した姿だった。
「……論理的に見て、……この……回廊は……精神浸食……を……目的とした……幻惑空間……です。……構造解析……。……鏡の……向こう側が……実体化……を開始……しました……! ……環境上書き……! ……その……自己像を……否定……しなさい……!!」
セインが、眼鏡の奥で解析術式を最大出力で展開した。
だが、ハーフエルフの彼女の目の前には、すでに鏡から抜け出した「セイン」が立っていた。
鏡のセインは、感情を完全に排した冷徹な瞳で、こちらを本物の「失敗作」として見下している。
「……あはは、……あたいの……偽物……、……一秒……どころか……光速で……動いてる……気がするよぉ……。……クレア、……これ……鏡じゃ……なくて……本物……だよ……!」
カノンが、銀靴の踵を鳴らす間もなく、鏡から飛び出してきた「カノン」の強烈な回し蹴りを間一髪で回避した。
偽物のカノンは、言葉を発することなく、本物以上の殺気を纏って銀の軌跡を描く。
「……みんな、惑わされないで! ……あいつらは、……私たちの……不安が……作り出した……幻……なんだから!」
クレアが、**『銀竜の絆』**を抜き放ち、目の前に立つ「クレア」と対峙した。
鏡のクレアは、全身から禍々しい漆黒の魔力を纏い、銀竜の絆を真っ黒に染め上げた『黒竜の絶望』を構えている。
「……グルァッ!!」
偽物のクレアが、迷いなく漆黒の斬撃を放ってきた。
クレアは反射的に『銀竜の絆』に白銀の魔力を纏わせ、それを正面から受け止める。
光と闇の魔力が衝突し、鏡の回廊が激しく震動した。
「……っ! ……やっぱり、……強い……! ……私の……技術も、……魔力も、……全部……同じ……なの……?」
「……ん。……違う。……クレア、……あいつ、……冷たい。……血の……通った……音が……しない。……ただの、……計算された……暴力」
ミルが、偽物のミルが放つ漆黒の魔弾を杖で相殺しながら、静かに告げた。
吸血鬼の彼女には見えていた。鏡の中にいる自分たちが、魂を欠いた「最適解の塊」に過ぎないということが。
「……その通りです! ……彼らは……私たちの……出力……限界……のみを……模倣……しています……! ……ならば、……論理を……超越……した……連携……こそが……解答……です……!!」
セインが、偽物のセインの妨害術式を強引に食い破り、クレアの背後に加速の術式を叩き込んだ。
「……クレア、……一・五秒……後に……左下……です! ……ケットル、……二秒……後に……天井を……撃ち抜き……なさい……!!」
「ガハハ! 了解だよ! 偽物の自分に教わることがあるなんて、夢にも思わなかったねぇ!」
リトル・リンク、今日も(自分自身の「最高到達点」という壁を、仲間の信頼でぶち抜きながら)ちょっとだけ成長中。
第126話をお読みいただき、ありがとうございました。
自分たちの姿をした偽物との戦い。
個人の力では「同じ出力」を持つ偽物に勝つのは困難ですが、リトル・リンクの本質は「自分一人ではできないことを五人でやる」ことにあります。
セインの指示のもと、自分たちの鏡像を翻弄する高度なスイッチ連携が始まります。
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次回、第127話。
崩れゆく鏡の世界。
そして、二階の突き当たりにいたのは、かつてクレアを嘲笑った「あの男」の影……?
お楽しみに!




