第123話 遺された刻印、深淵に建つ「白亜の館」
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カノンの驚異的な回避能力と、仲間たちの完璧な連携で「影鎌の王」を退けたリトル・リンク。
ピンチを乗り越えた彼女たちでしたが、倒した魔物の甲殻には、またしてもあの不穏な紋章が刻まれていました。
オーク、そして地下のマンティス。
異なる種族を繋ぐ「共通の支配者」の影。
森の最奥、光なき闇の先に現れたのは、地下にあるはずのない、優雅で残酷な「別荘」でした。
リトル・リンク、今日も(拭いきれない違和感を抱きながら)ちょっとだけ成長中!
「……ふぅ。……かたづいた。……むし、……ばらばら。……これ、……食べられない……から……嫌い。……ミルの……お腹、……ぐーって……鳴ってる」
ミルが、粘液で汚れた**『もう壊さない杖』**を軽く振り、影鎌の王の残骸を見つめた。
吸血鬼の彼女は、魔物の生命力が霧散していくのを感じ取っていたが、その消え方にどこか「不自然なノイズ」が混じっていることに、眉をひそめていた。
「ガハハ! 食い気より先に、まずはこいつを見ておくれよ! アタシのサンダー・バードで焦げた甲殻の裏……。……これ、また例のやつじゃないかい?」
ケットルが、**『巨大背負い袋』**から取り出した精密ドライバーで、王の頭部の装甲を器用に剥がした。
そこには、第一階層のオークジェネラルの鎧に刻まれていたものと同じ、あの「古き帝国の軍章」が、肉に直接焼き付けられるようにして刻印されていた。
「……論理的に見て、……もはや……偶然……ではありません。……構造解析……。……この……刻印は……魔物の……神経系に……直接……干渉し、……闘争……本能を……増幅させる……ための……魔導回路……として……機能……しています……」
セインが、新調された眼鏡の奥で冷徹に事実を告げた。
ハーフエルフの彼女が読み取ったのは、この森の主さえもが、何者かによって「調整」された兵器に過ぎないという残酷な真実だった。
「……あはは、……あたい……一秒……どころか……百年……経っても……こんな……趣味の悪い……こと……したくないよぉ……。……誰が、……何のために……こんな……」
カノンが銀靴の踵をそわそわと鳴らし、周囲の闇を警戒した。
回避タンクとして影鎌の王と対峙した彼女は、その動きが野生のそれではなく、まるで「プログラムされた機械」のような正確さを持っていたことを思い出して、背筋に寒いものを感じていた。
「……大丈夫だよ、カノン。……何が……待っていても、……次は……私が……みんなの……前に……立つから。……ほら、……魔力も……少しずつ……戻ってきたよ」
クレアが、**『銀竜の絆』**の柄を握り、ゆっくりと歩き出した。
地底竜の鱗粉が、彼女の周囲の微かな魔力を吸収し、刀身に静かな輝きを取り戻させていく。
五人は、影鎌の王が守っていたであろう、森の最奥へと続く細い道を進んだ。
蔦が絡まり、巨大なキノコが胞子を振りまく幻想的な森を抜けた瞬間、彼女たちの視界に飛び込んできたのは、あまりにも「場違い」な光景だった。
そこには、地下の闇に白く浮かび上がる、壮麗な石造りの「洋館」が建っていた。
手入れの行き届いた(ように見える)庭園。
磨き上げられた窓ガラスからは、温かなオレンジ色の明かりが漏れている。
天井からは豪華なシャンデリアが吊るされ、地下の冷たい風を遮るように重厚な扉が閉じられていた。
「……ん。……おうち。……でも、……ミルの……おうち……より……怖い。……ここ、……生きてる……人の……匂い……しない」
「ガハハ! 冗談じゃないよ! こんな地下深くの森のど真ん中に、誰がこんな立派な館を建てたんだい? 自動洗浄トイレどころか、お化けが出そうな雰囲気じゃないか!」
ケットルがパチンコを構え直し、呆れたように叫んだ。
「……構造解析……不能。……この……館……、……建物自体が……巨大な……術式……として……成立……しています。……環境上書き……。……拒絶……反応……! ……近づけ……ません……!」
セインが手をかざすと、館の周囲に不可視の壁が展開され、激しい火花が散った。
その時、館の重厚な正面扉が、ギィ……と音を立ててゆっくりと開いた。
中から現れたのは、整った身なりをした一人の「執事」のような男だった。
『――ようこそ、リトル・リンクの皆様。主がお待ちしております』
リフェルナの街の社交界で聞くような、完璧に洗練された礼法。
だが、その男の瞳には、一切の生気が宿っていなかった。
リトル・リンク、今日も(あまりにも異様な「招待」に、足を止めながら)ちょっとだけ成長中。
第123話をお読みいただき、ありがとうございました。
地下の森を抜けた先に現れた、白亜の洋館。
そして一行の名を知る、不気味な執事。
第一階層から続く「帝国の刻印」の謎が、この館でついに明かされるのでしょうか。
クレアの新しい剣『銀竜の絆』が、館に漂う濃厚な魔力に共鳴を始めています。
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次回、第124話。
招かれた館の中は、歪んだ時空の迷宮。
そこで出会う、第一階層の主「オークジェネラル」の正体とは……?
お楽しみに!




