第112話 鋼の拳、泥濘に沈む「武」の咆哮
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ついに姿を現した、統率されたオークの小隊。
盾で道を塞ぐソルジャー、遠距離から急所を狙うアーチャー、そして後方で大規模破壊魔法を練り上げるマジシャン。
さらには、一撃で岩をも砕く拳を持つ『オークモンク』が、クレアの目の前に立ち塞がりました。
かつて自分たちが住んでいた家の真下に、これほどまでの「軍勢」が潜んでいたとは。
一筋縄ではいかない連携を前に、リトル・リンクの五人はそれぞれの「役割」を研ぎ澄ませます。
最弱パーティ、今日も(オークの熱い吐息を間近に感じながら)ちょっとだけ成長中!
「……ふぅ。……こぶし、……重い。……空気が、……震えてる。……骨が、……みしりって……言った」
ミルが、紅く脈動する**『もう壊さない杖』**を胸元に引き寄せ、じりりと後退した。
目の前で振り下ろされたオークモンクの拳。それは物理的な質量だけでなく、練り上げられた闘気が衝撃波となって、ミルの柔らかな髪を激しくなびかせた。
「ガハハ! なんて馬力だい! アタシの洗浄砲の圧力でも、こいつの突進を止めきれるかどうか怪しいもんさ!」
ケットルが、**『巨大背負い袋』の重心を低く保ち、パチンコの狙いを定めた。
だが、安易に引き金は引けない。
モンクの影に隠れるようにして、『オークアーチャー』**が常に三本の矢を番え、ケットルの指先をじっと狙っているからだ。
「……論理的に見て、……この……連携は……極めて……高度です。……モンクが……前衛を……かき乱し、……マジシャンが……広域……殲滅……術式を……再構築……しています。……環境上書き、……展開……妨害……!……っ、……計算が……追いつき……ません……!」
セインが眼鏡の奥の瞳を鋭く光らせ、空中に展開した解析術式を高速で操作する。
だが、後方の**『オークマジシャン』**もさるもの。
セインの妨害術式を「力技」で押し返し、周囲の地面を沸騰した泥へと変えようとしていた。
「……あはは、……足元が……ドロドロに……なっちゃうよぉ。……一秒……あれば……飛び越せるけど、……着地……するところが……ないね……」
カノンが銀靴の踵を激しく鳴らし、沈み込み始めた地面から必死に足を抜いた。
背中の小さな羽が、危機を察知して激しくパタパタと震える。
オークたちの連携は、彼女たちの「逃げ場」を完璧に計算して構築されていた。
「……カノン、左! ……セイン、重力制御を……一点に……絞って! ……この……モンクさえ……崩せれば……道は……開けるはず!」
クレアが、**『折れたら切ない・ミスリル配合のすんごい斬れ味(予定) of 剣』**を低く構えた。
オークモンクは、その巨体に見合わぬ俊敏さで、再びクレアの懐へと踏み込んでくる。
丸太のような腕が、ボクシングのジャブのように、鋭い風切り音を立ててクレアの頬を掠めた。
「……グルァッ!!」
モンクの咆哮。
同時に、後方の**『オークソルジャー』**二体が、鉄盾を構えたまま重戦車のように突進を開始した。
前方のモンクと、左右からのソルジャー。
完全な包囲網。
「……構造解析……完了……!……環境上書き……!……摩擦係数……ゼロ……!……滑りなさい……!」
セインの叫びと共に、クレアの周囲を除く地面が、鏡のように滑らかな「氷の摩擦」へと変貌した。
勢いよく突っ込んできたソルジャーたちが、制御を失って派手に転倒し、モンクの背中に激突する。
「……今だ! ケットル!」
「任せな! 特製・粘着洗浄弾、発射ぁ!」
ケットルのパチンコから放たれた弾丸が、マジシャンの杖に直撃し、粘り気のある泡がその視界と指先を封じた。
「……ん。……マジシャン、……おやすみ。……ミル、……本気……出す。……これ、……壊れちゃう……かも……だけど」
ミルが、杖の先端に凝縮された紅い魔力塊を、混乱するオークたちの中心へと解き放った。
轟音。
爆煙の中に、さらに奥の闇から、地響きのような「足音」が近づいてくる。
「……まだです。……個体識別……、……オークジェネラル。……上位個体の……出現を確認……しました」
セインの冷徹な声が、勝利の予感を打ち砕いた。
現れたのは、全身を黒金色の重鎧で包み、身の丈を超えるほどの大剣を担いだ、圧倒的な威圧感を放つ将軍だった。
「……嘘、……でしょ? ……あんなの、……どうやって……斬れば……いいの……?」
カノンが、絶望に似た声を漏らす。
ジェネラルの背後には、先ほどの小隊とは比較にならない数のオークたちが、整然と隊列を組んで並んでいた。
リトル・リンク、今日も(軍勢という名の絶望を、正面から見据えながら)ちょっとだけ成長中。
第112話をお読みいただき、ありがとうございました。
オークの小隊を連携で切り崩したのも束の間、ついに上位個体『オークジェネラル』率いる本隊が登場しました。
一筋縄ではいかないダンジョンの洗礼。
かつての拠点の下にこれほどの「軍隊」が隠されていた意味が、徐々に重みを増していきます。
クレアの剣は、あの重厚な鎧を貫くことができるのでしょうか。
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次回、第113話。
ジェネラルの大剣が放つ、大地をも裂く一撃。
絶体絶命の危機に、ケットルの「巨大背負い袋」から飛び出したのは……?
お楽しみに!




