第110話 血の匂い、螺旋階段の先に待つ「獣」
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瓦礫の下、暗闇の奥へと足を進める五人。
ゴブリンやスケルトンの残骸を背に、一歩下りるごとに鼻をつく獣の臭いと、重苦しい空気が肌を刺します。
闇に潜む影が、その巨大な質量を揺らして動き出しました。
リトル・リンク、今日も(喉を震わせる咆哮を正面から受け止めながら)ちょっとだけ成長中。
「……ふぅ。……骨、……ばらばら。……レバー……食べたい。……動くと……お腹……空く」
ミルが、転がったスケルトンの頭蓋骨を『もう壊さない杖』で無造作に避けながら、暗闇の先を見つめた。
吸血鬼の彼女が感じているのは、湿った土の匂いに混じり始めた、もっと濃密で、野生味の強い「血の匂い」だ。
「ガハハ! ゴブリンどもも、アタシたちのl剣筋に驚いて逃げ出していきやがったよ! まったく、家の真下にこんなのが溜まってたなんてねぇ!」
ケットルが、**『巨大背負い袋』**から予備の洗浄液を取り出し、パチンコの弾丸に素早く馴染ませた。
ドワーフの彼女は、周囲の壁に刻まれた古い傷跡を見逃さない。それは先ほどの爪痕よりもずっと大きく、深く、鋭いものだった。
「……論理的に見て、……ここから……先は……第一階層の……境界線です。……個体識別……、……オーク。……しかも、……複数体。……非常に……強い……攻撃性を……感知しています」
セインが眼鏡を指で押し上げ、暗闇の奥に広がる巨大な広場を解析術式で照らし出した。
ハーフエルフの緻密な索敵が捉えたのは、筋骨隆々の巨体を揺らし、錆びた大斧を肩に担いだ三体のオークだった。
「……あはは、……オークかぁ。……あたい……一秒……あれば……逃げ切れるけど、……みんなが……いるもんね……」
カノンが銀靴の踵を鳴らし、自分の背中の小さな羽をきゅっと丸めた。
オークの咆哮は、空気を直接震わせるほどの圧力を持っている。
「大丈夫だよ、カノン。……うちら、……もう……あの頃の……ままじゃないから。……ね、セイン!」
クレアが、**『折れたら切ない・ミスリル配合のすんごい斬れ味(予定) of 剣』**の鯉口を切った。
暗闇を裂くように、白銀の刀身が淡い光を放つ。
「……グルアァァァッ!」
最奥の一体が、地響きを立てて突進してきた。大斧が空気を引き裂き、クレアの頭上へと振り下ろされる。
「……環境……上書き。……重力偏向……開始。……そこ、……重いですよ」
セインが短く唱えると同時に、オークの足元の空間が歪んだ。
突進の勢いが殺され、前のめりに崩れる巨体。
「……ん。……動き、……止まった。……ミル、……どーん……する」
ミルの杖から放たれた衝撃波が、無防備なオークの胸元を正確に捉え、その巨体を岩壁へと叩きつけた。
リトル・リンク、今日も(深淵の住人たちに、自分たちの「今」を刻み込みながら)ちょっとだけ成長中。
第110話をお読みいただき、ありがとうございました。
暗闇の奥から現れた、生々しい獣の咆哮。
ですが、今の彼女たちの連携に迷いはありません。
一歩ずつ、かつての拠点の下に眠る「深淵」の正体へと近づいていきます。
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次回、第111話。
倒れたオークの先に現れたのは、さらに下へと続く「不気味な階段」。
お楽しみに!




