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投資家オンライン紀行(仮称)  作者: プロジェクト夜屋
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13/15

株式投資事始め

ちょっとだけ閑話休題的に過去回想回。

今更そもそも論になるが、なんで株式投資をしているか、ゲーム内でビジネス的なことに足を突っ込もうとしているかという話である。これを語るには、昔話というほどまだ長くは生きていないが、少し小さい頃の話に戻らなければならない。


先も触れた通り、直接的には、父親からの運用委託が理由となる。その昔、日本を代表するお酒メーカーの創業者はことあるごとにこう言ったという。「やってみなはれ」。やってみないと出来るかどうかは分からない。それが何なのかも分からない。では、挑戦してやってみればいい。うん、いい言葉だ。しかしこれに、個人的にはちょっとだけ補足を足したい。「リカバリー出来ないような致命傷を負わない範囲で」。


運用委託元、いわばスポンサーである父は決して大きくないものの幾つか事業を営んでいる。直接社長をしているもの、社長業自体は違う人に任せているもの。そうはいっても社長というからにはお金持ちなんじゃないの?とたまに聞かれるが、決してそんなことはない。山谷波風があり、安定していないことを考えると、むしろ会社に雇われて安定して仕事をしている方がいいんじゃないかと子供心に思えてくる。


いずれにせよ、父は自分のビジネスを営んでいる人種でなのであるが、小学校に上がってしばらくの頃、事業が上手く行っていない時期があった。幸いに、共働きだったこともあり、ドラマにあるような毎夜借金取りがやってきて、夜逃げを画策したりということはなかったが、がらっと生活が変わるのは実感していた。


日本の中小企業の数は400万程度なので、会社が傾いたりつぶれたりという話自体はさして珍しいものではない。会社の大小に関わらず、倒産したという話は探せば毎日大量に出てくる。倒産に至らないがぎりぎりでなんとかした、という話はもっとたくさんあるだろう。表に出てこないだけで。そんな、400万あるなかのほんの小さな二つか三つが父の抱えるものであり、文字通り中小企業との言葉が似合う。


 しんどかった時期に起きたことは、全部つぶさに記憶してはいないが、概ねのことはもちろん覚えている。家を引っ越し、持っているものが変わり、食べるものが変わる。贅沢、は元々していなかったが、見て分かる程度に節約的に変わる。定期的に行っていた旅行に行くことがなくなる。貧乏、ということではなかったように思うが、家に大変なことが起きているのだけは実感として良く分かった。小学校でもいじめはなかったものの、悔しい思いやみじめな思いをしなかったかと言えば嘘になる。どこか何か後ろめたいような、自分がダメで不完全で恥ずかしい気持ちが常にどこかあった。保育園暮らしだった妹はしたいことがなぜできないかを分からずに、ときどき癇癪を起したりしていた。父と同じく、仕事に追われる母が手を焼いて困り果てていたのを、なんとなく覚えている。本人はあまり覚えてないらしく、ものの見事に天真爛漫に育ったのはなんというか。



思い返すと、割合しんどい展開に当時なっていたけれどもぎりぎりまで切羽詰まってはいなかったのが幸いしてか、くるくる変わる生活状況に、やさぐれたり自棄になったりすることもなく、いなくなってしまったかのように家にいないことの増えた父など、不安はありつつも好奇心が先に立ってしまったこともあり、自分はいま何か面白い流れの中にいると思ってしまったらしい。正しい理解だったか、あるいは盛大な勘違いだったかはともかく、面白い物語に巻き込まれて帰ってこれなくなったような気分で過ごしていた。



中学生が近づくにつれ、父の事業は少しずつ落ち着きを見せ、生活も元通りになってきたが、あれは結局なんだったのだ?との疑問は強く残り、分からないなりに、父にいろんな質問、特に仕事や商売のことについて知りたいことをぶつけるようになっていった。父は家にも帰って来て、罪滅ぼしとばかりに家に良くいるようになったこともあり、脈絡のない質問にもひとつずつ答えてくれていた。


なぜ我が家はあんな風になってしまったのか。貧乏になってまた戻ってきたのか。なんでそんなことが起きるのか。貧乏とはどこかからやってくるものなのか、お金持ちというのはお金持ちという家に生まれないとならないのか。お金を稼ぐ、お金を貰えるというのはどういうことなのか。お手伝いをしたらおこずかいを貰えるのと違うのか、お父さんお母さんはどこかでお手伝いをしているのか。


面白かったけれども、何か怖いことが自分の身に起きていたのだと、当時感じた不安は、こんな怖いことが起きても自分で我慢して何かをなんとか頑張って出来るようになってないといけない、との危機感になっていった。もちろん、このときは何をどうすれば頑張ったことになるのかなどはさっぱり分かってはいない。高校生の今からみても、小学生の考えることなんてその程度である。好奇心はお金と商売のこと、自分が何に巻き込まれたのかをちゃんと知りたいとの気持ちに変わっていった。


なんだか良く分からないけれども、お金とか仕事のことについて知りたい、と父に相談をしてみたところ、子供でも出来るような自分で小さい商売を何かやってもいいのだけれど、それだと小さい範囲のことしか分からないだろうから、と、中学生になったころ、金融とビジネスについて実地で学ぶフィールドとして父が提示してきたのが株式投資の世界だった。今にして思えばたかだか小学校を出たばかりのガキんちょに、父もかなりな無茶を言っていたものだと思う。


株式投資という世界に触れるにあたって、父から出された条件はひとつ。株の表向きの値動きだけをやたらと追うのではなく、会社と商売のことを自分で学んで理解しようとすること。父に自分が分かったことを説明して、そのあと取引なりを行うこと(今はこの縛りは基本としてなくなっている)。あと、学校の勉強なり本来すべきことをそっちのけにしないこと。




最初は実際に資金を動かすのではなくシュミレーターや取引デモソフトのようなものから。徐々に小さい取引を実際のお金で。失敗したと思ったときは、何をどう失敗したのか、どうやってリカバリー対応するのかも出来る限り説明する。損したと分かったとき、明らかに自分が失敗したことを説明するのは正直しんどかったがこれが無かったら果たして身についていたかは怪しい。


父は明確な数字の読み間違いや基本的な知識の間違いを除くと、商売をどう考えるか、投資先候補の会社をどう分析理解するかについては合ってるも間違っているも決して言わなかった。商売は、必ずしも答えがはっきりしているものでもなく、だれかが答えを持っているとは限らず、事前に正解が示されたりするようなものではないからだと。


調べて考えても分からないことは父に聞き、そのうち周囲にだんだんと出来てきた年上の株仲間に聞くようになり、議論を交わし。損をしたり冷や汗をたくさんかき、などとしているうちにだんだんと自分が何をしているのか、小学生の時の自分が巻き込まれたものが一体なんなのかが分かるようになってきた。


なんのことはない、仕事のひとつが上手く回らず、同時に資金繰りの谷が運悪くぶつかったことで、商売ごと一旦畳まざるを得ず、借金のような形で残った負債を清算して立ち直るまでに数年丸々かかったことになる。中学3年の夏を過ぎた頃、受験を意識して過ごしているときに、中学生でも分かるように簡略化して、と前置きしつつ起きたことの概ねを父は語ってくれた。



ウチに起きたことが特別不幸なことでも、珍しいことでもない、というのは世の中にある商売や会社というものを幾つも見ているうちに自然と分かってきた。自分が巻き込まれたのがいったいなんだったのかを理解して受け止める、との意味においては、株式投資を通じて知りたかったことの一つはもう概ね達成されてると言ってよい。振り返ってもそれなりに大変は大変だったが、不幸自慢大会に今更エントリーするようなことではない。


その代わりではないが、世の中のことなんて、まだまだてんで分かっちゃいないこと、流れが悪くなれば以前のようなことはまた父の仕事にも平気で起きうることも分かってしまった。当時から抱えていた所在のない不安は落ち着きどころを得て解消されたものの、逆に危機感の方は根深くはっきりとした形になってしまって現在に至っている。まったくもってめんどくさい。


株式投資を通じていまでもいろんなことを学べて得られてると思うしやめる理由は今のところない。ではしかし、いまこうして学んでいる先に何があるのか?と問われるとどうも最近分からない。もう少し自分で何か出来るようになっておきたい。


そんな、趣味のような、ちょっと変わったクラブ活動のような位置づけの株式投資にまつわる活動と、鈴生りに増えてきてこれはこれで面白いことになっている投資仲間のネットワークと、どこにでもある普通の高校生活とを行ったり来たりしているのが最近の生活となる。


 要すれば、良くある感じで、早く大人になりたいのかもしれない。でも、父以外で大人の知り合いはそれなりにいるが、彼ら彼女らと話していても、大人になったら何がどうなるのかはさっぱり分からないんだよなぁ。

回想はひとまず一回だけなので次回から本編復帰です。

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