第3話①「デートとドローン」
昼下がりの駅前広場。
人通りは多いものの、休日らしいのんびりとした空気が漂っている。
その一角にあるベンチで、カイ・セイランは腕時計を確認した。
約束の時間は、とっくに過ぎている。
「……遅ぇな。何やってんだよ」
スマートフォンを取り出し、メッセージアプリを開く。
《もう着いてる》
送信。
しかし、既読はつかない。
「はあ……」
カイはスマートフォンをポケットへ戻した。
今日、待っている相手はユナ・セラフィム。
先日の仕事で知り合った、不思議な女だった。
カフェを経営しているかと思えば、ボードゲームでは異常なほどの強さを見せる。
そのうえ、AIの思考構造まで、まるでパズルを解くように読み解いてしまう。
そして何より――仮想層で見せた、あの謎の力。
「いったい……何者なんだ、あいつ」
考えているうちに、先日の出来事が脳裏によみがえった。
仕事を終えた直後のことだった。
突然、ユナに腕を掴まれた。
「ねえ、カイ!」
そのまま勢いよく抱きつかれ、カイは目を丸くした。
「あなたを連れて行きたい場所があるの。今度――」
ユナは満面の笑みを浮かべた。
「私とデート、しよ!?」
「……は?」
あまりにも突然の誘いだった。
あれから数日。
結局、こうして待ち合わせをすることになった。
カイはベンチに背を預け、空を見上げる。
自分勝手で、人の話を聞かない。
場をかき乱すことにかけては、もはや天才的。
まるで嵐みたいな女だ。
なのに――。
「……ちょっと、可愛いよな」
思わず、口からこぼれた。
その直後だった。
「カイ! あぶなーい! 避けて!!」
背後から、ユナの叫び声が響いた。
「……ん?」
カイが振り向く。
次の瞬間――。
ギィィィン!
金属音が駅前広場に響き渡った。
空中から、一機のドローンが猛スピードで突っ込んでくる。
「回避不能!」
ピコの警告が飛ぶ。
「なっ――!?」
カイの目の前に、巨大な機体が迫った。
陽光を反射した装甲が鋭く光る。
「おいおいおい……!」
逃げるには、あまりにも近い。
ドローンは速度を落とすことなく、まっすぐカイへ向かってくる。
そして――。
「カイ!」
ユナの声が、駅前広場に響き渡った。




