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第21話①「最強のプレイヤー」

Cの特殊エリア。


空間そのものが歪んでいた。


床も壁も、黒いガラスのように揺らぎ、遠近感すら狂っている。


そして――

この場所では、あらゆる武器が意味を失う。


力も。

能力も。


この空間のルールには、なれない。


決めるのは、ただ一人。


Cだった。


「カイ、指輪は?」


ユカが不安そうに尋ねる。


しかし、カイは険しい顔で拳を握る。


「……ダメだ。

さっきから試してるが、まるで反応しない」


指輪からは、いつもの淡い輝きが消えていた。


ただの金属の輪のように、冷たく光っている。


「そんな……」


闇の奥から、くすくすと笑い声が響いた。


「だからぁ、言ったでしょぉ?

この場所ではぁ、

わたしがぁ、ルールをぉ、決めるってぇ?」


「……で? 何で勝負する気だ」


アランが睨みつける。


Cは嬉しそうに両手を広げた。


「んふぅ〜♪

せっかくだからぁ、

楽しく遊びましょぉ?」


その瞬間――


宙に、巨大な二十面ダイスが浮かび上がった。


赤く輝く数字。

回転する無数の面。


カラ……カラ……。


乾いたダイスの音が、空間いっぱいに響き渡る。


「これって……まさか……!」


バチン――ッ!!


光が弾けた。


次の瞬間――


カイたちの服装が、一斉に変化した。


カイ――

白銀の鎧をまとった聖騎士。

パラディン。


アラン――

毛皮をまとい、巨大な斧を担ぐ狂戦士。

バーバリアン。


サクラ――

黒装束に身を包み、短剣を忍ばせた影。

ローグ。


リサ――

華やかな衣装に身を包み、リュートを抱えた吟遊詩人。

バード。


ジロウ――

神聖紋章を胸に掲げた神官。

クレリック。


トモ――

ローブをまとい、魔導書を抱えた魔術師。

ウィザード。


ソウタ――

弓を背負った森の狩人。

レンジャー。


そしてピコ――

工具と奇妙な機械をぶら下げた発明家。

アーティフィサー。


「なんだこりゃ……!?」


ジロウが衣装を見て、声を上げる。


トモが目を見開く。


「これ……D&Dのクラス!?」


「なんで俺がクレリックなんだよ!

パラディンが良かったんだけど!?」


「ピコ的には、アーティフィサーは超納得です!」


そんな中――


ユカだけは、なぜか元の格好のままだった。


「えぇぇぇっ!?

なんで私だけそのままなのぉーっ!?」


Cが肩を震わせる。


「んふぅっ♪

だってぇ、おチビちゃんはぁ――」


ゆっくりと、ユカを指差す。


「プレイヤーだからぁ♪」


「……プレイヤー?」


「そうよぉ?

他のみんなはぁ、あなたの駒役なのぉ」


「駒役って……」


リサが自分の姿を見回す。


「私たち、ボードゲームのコマ扱い?」


「ぽんぴぃ〜ん♪」


Cは楽しそうに指を立てた。


「これはぁ、テーブルトークRPGぃ♪

おチビちゃんがぁ、プレイヤーでぇ――」


唇が、にぃっと歪む。


「わたしがぁ、ゲームマスターぁ♪

それでぇ、同時にぃ――ラスボスなのぉ♪」


「……最初から、自分が有利になるようにしたのね」


サクラが睨む。


「違うわよぉ?」


Cは首を傾げる。


「このゲームぅ、

“最も強い者”がぁ、

プレイヤーになるぅ仕様なのぉ♪」


「最も強い者……?」


「そしたらぁ――」


Cがユカを見る。


「おチビちゃんがぁ、

選ばれただけぇ♪」


「えっ?」


「だからぁ、実際はぁ、

わたしがぁ、ハンディをぉ

あげたのよぉ?」


一同の視線が、一斉にユカへ集まった。


「ユカ……お前、テーブルトークRPG得意なのか?」


ジロウが尋ねる。


「う、うん!

大丈夫!……たぶん!」


「“たぶん”!?」


トモが叫ぶ。


「だって、さっき初めてやったばっかりだもん!」


「なんですか、それぇぇぇ!?」


ピコが頭を抱える。


「でも!」


ユカは胸を張った。


「ソウタが、

“初めてにしては強い”って言ってくれたし!」


「うん。確かに言ったけど……」


ソウタが苦笑する。


ユカは、さらに胸を張る。


「それに――」


びしっと指を立てる。


「“之を好む者は、之を楽しむ者に如かず”だから!」


「私たち、オワタ……」


トモが遠い目をする。


アランは無言で首を振った。


「あらぁ?……」


Cは楽しそうに笑う。


「ハンディのぉ、つもりだったのにぃ――」


舌をぺろっと出す。


「そっちがぁ、不利にぃ、

なっちってたぁ?

てへぺろぉ〜♪」


「てへぺろじゃないだろ!」


ジロウが即座に突っ込む。


その横で、ソウタがユカに声をかけた。


「大丈夫だよ、ユカちゃん。

落ち着けば、君は強い」


「ソウタ……ありがとう!」


ユカはぎゅっと拳を握る。


「私、がんばるから!」


そして――


びしっとCを指差した。


「この勝負、受けて立つわ!!」


Cの目が細くなる。


嬉しそうに。

楽しそうに。


盤上には、七人の駒。


その駒を操る、

たった一人のプレイヤー――ユカ。


そして――


ゲームマスターにして、

最悪のラスボス――C。


AIと7歳の女の子による、

前代未聞のセッションが――


今、始まろうとしていた。



※作者の活動報告に各話のコメントを書いています。

https://syosetu.com/userblog/list/

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