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第20話③「Cちゃん襲来!」

食堂――。


突然、鋭い警告音が鳴り響いた。


ビーッ! ビーッ! ビーッ!


赤い警告灯が点滅する。


さっきまで食事や会話を楽しんでいた人々が、一斉に立ち上がった。


「……なにか、あったんだ……!」


ユカが顔を上げる。


周囲では、レジスタンスのメンバーたちが慌ただしく動き始めていた。


その隣で、ソウタも立ち上がる。


「ユカちゃん! 危ないから、僕と一緒に避難エリアへ――」


しかし。


最後まで聞く前に、ユカは走り出していた。


「えっ――」


ソウタが目を丸くする。


廊下へ飛び出したユカが振り返った。


その瞳には、迷いがない。


「ソウタは避難して!」


叫びながら、さらに走る。


「私は――カイのところに行く!」


自動ドアが開く。


ユカの小さな身体が、その向こうへ消えていった。


「ま、待ってよぉぉー!!」


ソウタは半泣きになりながら、その後を追いかける。


「僕も行くってばぁぁ!」


***


作戦ルーム。


自動ドアが開き、ユカとソウタが駆け込んできた。


室内には、すでにアラン、サクラ、カイ、ピコ、リサ、ジロウ、トモが集まっている。


壁一面の大型モニターには、本部各所の監視カメラ映像が次々と映し出されていた。


そのうちの一画に、ひとりの女が映っている。


腰まで伸びた赤い髪。


黒い衣装。


そして、紅い瞳。


女はまるで散歩でもしているかのように、地下通路を歩いていた。


「映像の女性が侵入者と思われます!」


オペレーターの声が響く。


別の端末から、判定結果が表示された。


「識別判定――レッド! 対象はAIです!」


「……なんですって!?」


サクラがモニターを睨む。


その瞬間だった。


画面の中の女が、ふいに顔を上げた。


監視カメラの位置を見つけたらしい。


そして――。


にこっ。


女は、無邪気な笑顔を浮かべた。


さらにカメラへ向かって、ひらひらと手を振る。


「うわっ……」


ジロウが顔をしかめる。


「完全に挑発してきてるじゃねぇか……」


「まさか、本部内部まで侵入されるなんて……」


サクラの表情が険しくなる。


「入り口の監視員は全員無力化されています!」


オペレーターが報告する。


「現在、隔壁を順次閉鎖中!」


「幹部クラス……」


サクラが画面を見つめる。


「そう考えたほうがよさそうね」


その後ろで腕を組んでいたアランが、低い声を発した。


「――《グノーシス・ランサー》で終わらせる」


全員が振り返る。


「隔壁を閉めろ。地下空洞エリアへ誘導するんだ」


「了解!」


オペレーターがキーボードを叩く。


カタカタカタッ!


次々と隔壁が閉じていく。


「――《グノーシス・ランサー》で終わらせる」


アランが作戦ルームの壁際へ歩いた。


そこに立てかけられていたのは――巨大な黒い兵装。


《ブラック・コフィン》。


棺を思わせる漆黒の装甲ケースだった。


アランが手を伸ばす。


カチッ。


側面のロックが解除された。


続いて、低い駆動音。


ウィィィィン……。


外装が左右へ展開する。


内部には、幾重にも折り畳まれた機械機構と、銀色の砲身ユニットが収められていた。


「起動」


アランが短く告げる。


ヴンッ――!


内部のコアが青白く発光した。


装甲の接続部が次々と展開し、アランの腕へ固定されていく。


ガシャン!


前腕部を覆う装甲。


ガシッ!


肩部へロック。


続いて背部ユニットが展開し、左右からアームが伸びる。


カチ、カチ、カチッ。


複数の接続端子が、アランの戦闘スーツへ次々と噛み合っていく。


「武装接続」


電子音声が響く。


《ARM UNIT――ONLINE》


砲身がゆっくりと前方へ回転する。


ギュィィィン……。


内部でエネルギーが収束していく。


《PARTICLE CORE――STANDBY》


アランは大型兵装を片腕で持ち上げた。


それまでの封棺形態から一変し、黒い装甲と粒子砲が一体化した戦闘兵装へと姿を変えている。


「ロック解除」


ガコンッ!


最後の固定具が外れる。


《GNOSIS LANCER――READY》


アランが肩に担ぐ。


「行くぞ」


その横では、サクラも動き始めていた。


背後に置かれた大型ケースが開く。


シュッ――。


内部から無数の細いワイヤーと機械ユニットがせり出した。


対AI拘束兵装――《ノルン・スレッド》。


サクラが中央のハーネスを手に取る。


「接続」


カチッ。


胸部へ固定。


続いて腰部。


左右のアームが展開し、背中へ装着される。


ガシャン!


さらに六本の細長いユニットが背後から展開した。


まるで機械仕掛けの蜘蛛の脚。


それぞれの先端には、極細の拘束ワイヤーが巻き取られている。


「スレッド、起動」


ヴンッ!


六基のユニットが同時に点灯する。


ワイヤーが一瞬だけ伸び――


シュルルッ!


空中で停止した。


その動きを確認したサクラが、静かに手を握る。


「制御同期、完了」


《NORNN THREAD――ONLINE》


サクラの背後で、六本の機械アームがゆっくりと展開する。


一本。


また一本。


最後の一本が展開した瞬間――。


ジャキンッ!


すべての先端が同時にロックされる。


その姿は、まるで戦場に降り立つ機械仕掛けの女神だった。


アランが横目でサクラを見る。


「準備は?」


サクラが答える。


「いつでも」


アランがブラック・コフィンを構える。


サクラのノルン・スレッドが低い駆動音を響かせる。


二人の兵装が同時に唸りを上げた。


ヴゥゥゥン……。


作戦ルームの空気が震える。


「対象を地下空洞エリアで迎え撃つ」


「了解」


二人は並んで歩き出した。


その背後で、ブラック・コフィンの粒子砲が展開する。


ノルン・スレッドのワイヤーが静かに揺れる。


――対AI戦闘兵装、二基。


その起動が完了した。


二人は作戦ルームを出ていく。


その直後。


カイも歩き出す。


「カイ?」


ピコがドローンモードへ変形し、その後を追った。


「カイ!」


ユカが呼び止める。


カイが振り返った。


「私も行く!」


「危険だ。お前は避難してろ」


「私がいないと、指輪使えないでしょ!」


ユカは真っ直ぐカイを見つめる。


「何回も言わせないで!」


カイは、まっすぐ自分を見つめるユカの顔を見た。


やがて、呆れたように息を吐く。


「……まったく」


それ以上は何も言わず、カイは背を向けた。


「無茶はするなよ」


「わかった!」


ユカは元気よく答える。


そのまま、当然のようにカイの隣へ駆け寄った。


ピコが二人の前を飛びながら、電子音を鳴らす。


「おやおや、ユカも前線参加ですか」


「うん!

だって、みんなの役に立ちたいもん!」


「…………」


カイが横目でユカを見る。


ピコも、少し呆れたように電子音を鳴らした。


「ユカはシンプルですね」


「そう、それだけ!」


即答だった。


あまりにも迷いがない。


その真っ直ぐさに、カイはかえって不安を覚えた。


(“誰かのため”だけで、前線に立つのは危険すぎる)


ユカは、自分が傷つくことよりも、誰かを助けられないことを怖がる。


だからこそ――。


カイは左手に視線を落とした。


そこには、セラの指輪がある。


(早く……俺ひとりで使えるようにならないと)


ユカを戦わせないためにも。


自分が、もっと強くならなければならない。


カイは再び前を向いた。


「行くぞ」


「うん!」


ユカが駆け出す。


ピコも二人の前へ飛び出した。


三人は、地下空洞エリアへ続く通路を走り始めた。



※作者の活動報告に各話のコメントを書いています。

https://syosetu.com/userblog/list/

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