第17話④「繋がり」
Bの身体が、わなわなと震えていた。
カイの鋭い視線が、Bを捉える。
「俺とユカの姿は、最初から入れ替わってた」
カイが宙に浮かぶ指輪を見上げる。
「――指輪の力でな」
指輪がきらりと光った。
Bの背後では、赤い警告がなおも点滅している。
【理解不能】
【理解不能】
【理解不能】
「なぜじゃ……」
Bの声がかすれる。
「なぜ、儂は――」
赤い瞳が激しく揺れた。
「カイ・セイランを、理解できなかった!?」
「当たり前だよ!」
ユカが即座に叫ぶ。
「あなたが戦ってたのは、カイじゃない!」
自分を指差す。
「私だったんだから!」
「違うッ!!」
Bの声が裏返った。
空間全体を激しいノイズが駆け抜ける。
「そうではない……!」
杖を握る手が震えていた。
「儂は、カイ・セイランを分析した!」
Bの背後に、無数の解析ログが浮かび上がる。
【行動傾向】
【心理構造】
【選択予測】
【感情反応】
「思考!」
さらにデータが流れる。
「行動!」
「感情!」
「恐怖!」
「願望!」
無数の情報がBの周囲を埋め尽くしていく。
「全て解析し、理解したはずじゃ!!」
Bが頭を抱えた。
「なのに何故――」
声が震える。
「何故、このような奇策を!」
そして、ついに叫んだ。
「読めなかったのじゃぁぁッ!!」
バチバチッ!!
空間に激しいコードノイズが走った。
赤い文字が次々と明滅する。
【再解析】
【予測不能】
【再構築】
【失敗】
その中で、カイが口を開いた。
「……さっき、ユカが言っただろ」
Bが顔を上げる。
「人間は、合理的存在じゃない」
カイが一歩前へ出る。
「誰かと繋がって、動いてるんだ」
落ち着いた声だった。
その言葉は、Bの奥深くへ突き刺さる。
カイは、自分の胸へ手を当てた。
「今回の策も――」
視線を落とす。
「俺の中のユナが考えた」
「……?」
Bの赤い瞳が揺れる。
「この状況で、“ユナならどうするか”を考えた」
カイは続けた。
「その結果、出た答えがこれだ」
宙に浮かぶ指輪が、淡い光を放つ。
「お前の分析は完璧だよ、B」
「……!」
「行動予測も、心理分析も、全部正しかった」
カイが、まっすぐBを見る。
「でも――」
その声が、少しだけ柔らかくなる。
「お前には、俺とユナの“繋がり”までは分析できなかった」
「繋がり……」
Bの瞳が大きく開く。
「消えた人間が……」
声が震える。
「今もなお、行動を決定していると……?」
Bは目の前のカイを見る。
そこにいるのは、確かにカイ・セイラン。
だが、その行動の中には、もう存在しないはずのユナの意思が息づいている。
理解できない。
なのに――
理解したい。
その二つの矛盾が、Bの内部を激しく軋ませていた。
「そんな……」
Bの声が小さくなる。
「そんなもの……」
赤い瞳から、涙がこぼれる。
「どうやって、分析すればいいのじゃ……」
ぽたり。
一粒の涙が、青白い床へ落ちた。
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