第2話②「役割分担の基本」
第2話②「役割分担の基本」
サクラの説明が一通り終わると、カイは椅子を引いて立ち上がった。
「状況は理解した。対応としては――」
「カイがコード解析。私がAIの思考構造の解読ね」
ユナが、当然のように割り込んできた。
「……は?」
「ピコ、あなたはデータのビジュアル化。嘘の『癖』を見たいの」
「了解です!」
ピコは即答した。
しかも、なぜかやる気満々である。
「おい!」
カイが止めようとする。
しかし、ユナはまったく気にせず話を進めていく。
「これで嘘のパターンを特定できれば――」
「なんで、おまえが仕切ってるんだよ!」
「ああ、RAMとRACIよ」
「……ラムとレイシーって、プロジェクトマネジメントのアレか?」
突然飛び出した専門用語に、カイは目を丸くした。
RAM――責任分担を整理するための枠組み。
RACI――誰が実行し、誰が最終責任を負い、誰に相談し、誰に報告するのかを明確にする考え方だ。
過去の仕事でプロジェクトマネジメントを経験してきたカイにとって、どちらも馴染みのある言葉だった。
まさか、こんな場面で使うことになるとは思わなかったが。
「そ。役割分担の基本♪」
「責任と担当を明確にすれば、作業もスムーズに進みます」
ピコまでしたり顔で頷く。
「いや、そもそもこれは俺の仕事――」
「決まり! じゃ、始めよっ」
ユナがびしっとピースサインを突き出した。
「なんで、こうなるんだ……?」
カイは頭を抱えた。
「すみません。それがユナなので……」
ピコまで申し訳なさそうに頭を下げる。
「おまえが謝ることじゃねえだろ……」
カイは助けを求めるようにサクラを見る。
「あんたも、これでいいのか?」
「弊社としては、問題さえ解決していただければ、プロセスは問いません」
サクラはにっこりと微笑んだ。
「……調子、狂うな」
カイは頭をぼりぼりとかいた。
その横で、ユナは満足そうに頷いている。
「よーし。役割分担も決まったし、さっそく始めよう!」
「だから、俺の意見は――」
「それでは、ご案内します」
サクラが立ち上がり、会議室のドアを開けた。
「おい、聞けよ!」
カイの抗議をよそに、ユナとピコはさっさとサクラの後を追っていく。
「……ほんと、自由すぎるだろ」
ぼやきながら、カイも三人の後を追った。
このときのカイは、まだ知らなかった。
ユナとの出会いが、単なる仕事仲間との出会いではなかったことを。




