↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
19/148

第6話② 「まさかの未亡人?」

カシャン……。


兵士が槍を構え直した。


無言のまま、ゆっくりとユナへ歩み寄ってくる。金属製の足音が、仮想空間に規則正しく響いていた。


ザッ……ザッ……。


ユナは肩を軽く回しながら、その姿を眺める。


「……遅い!」


次の瞬間、ユナの姿がふっと消えた。


キィィン――!


空気を裂く音。


兵士の背後に、ユナが現れる。


「こっち!」


クサナギが閃いた。


弧を描く刃から、花吹雪のような光の粒子が舞い散る。


パァァァン!!


兵士の身体が砕け、無数のデータ粒子となって霧散した。


ユナはくるりと剣を回し、肩に担ぐ。


「ふふーん♪ 楽勝ね」


得意げなドヤ顔。


「お見事です」


ピコが素直に称賛する。


カイはユナの姿を見つめたまま、低くつぶやいた。


「……おまえ、その力……」


脳裏に浮かんだのは、先日の《Truthline Analytics》社からの依頼だった。


あのときもユナは、仮想層で謎の力を使い、暴走したAIを停止させている。


「このあいだと、同じ力なのか?」


「ああ、これ?」


ユナは左手を軽く掲げた。


指先で、指輪が淡い光を放っている。


「うちの一族に伝わる指輪。仮想と現実をつなぐ力があるの」


「仮想と現実……」


カイは、目の前で起きた現象を改めて思い返した。


データで構築された世界に、本物としか思えない剣を呼び出した。


そして、ふと指輪に視線を落とす。


「……左手に指輪って」


「ん?」


「おまえ、既婚者なのか?」


「えっ」


ユナの顔が固まる。


「えええっ!?」


慌てて左手をぶんぶん振った。


「ち、違う違う違う!! 左手につけるのは一族の決まりなの! 結婚とかじゃないし!」


「そうなのか」


「そ、それに好きな人は――」


ユナの口が止まった。


「好きな人は?」


「あー! いやいや! こっちの話!!」


耳まで真っ赤になる。


ピコは小さくため息をついた。


(ほんと……わかりやすい人ですね)


カイはそんなユナを横目に、腕を組んだ。


(既婚者ではないって言ってたよな……)


だが、指輪をしている。


(でも、指輪ってことは……好きな奴くらいはいるのか?)


もしそうなら、今さら告白したところで、完全に空気を読めていないやつになってしまう。


カイは少し先を歩くユナへ視線を向けた。


ユナもまた、落ち着かない様子で自分の指輪を見つめている。


(あー……やばい。指輪とか、完全に誤解させたよね、これ)


ユナは頭の中で必死に言い訳を考える。


(どうしよう……。いまさら「ただのアクセだよ」って言うのも変だし……)


そして、なぜか別の案まで浮かんだ。


(ここはいっそ……未亡人ってことにしとく?)


すぐに自分で却下する。


(いやいやいや、それ重すぎない? 初手から過去の悲劇を背負ってる女みたいじゃん!)


そんなことを考えていた、そのとき――。


「ユナっ!」


カイの鋭い声が飛んだ。


次の瞬間、腕を強く引かれる。


「きゃっ!」


ユナの身体が大きく傾いた。


気づけば、床に押し倒されている。


その上からカイが覆いかぶさり、ユナをかばっていた。


ヒュッ――!


銀色の刃が、ユナの頭があった場所を通り過ぎる。


「いったい……?」


ユナが振り返る。


そこには、先ほど倒したはずの兵士が立っていた。


「ザッ……ザッ……」


重たい足音とともに、奥からさらに複数の人影が現れる。


槍を持った兵士。


その後ろには、馬にまたがった騎士。


さらに、装甲をまとった小型戦車のようなものに乗った兵士。


そして、奇妙な形に割れた帽子をかぶった、僧侶のような人物。


次々と隊列を組んで進んでくる。


ユナはその姿を見つめ、ぽつりと言った。


「これ……チェスだ」


「なんだって?」


カイが眉をひそめる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。