第5話②「ユナの告白されたい大作戦!」
一方――。
《Analog Mind Café》。
ユナは机に突っ伏し、大きなため息をついていた。
「はあ〜……」
「ユナ、どうしました?」
「……なにも」
「昨日あたりから、明らかに様子が違います」
「気のせい」
ピコはユナをじっと観察する。
「意識集中レベル30%低下。カフェ業務ミス率5%増加。心拍数3%上昇。顔面温度2%上昇」
「やめてよ!! なんでも数値化するの!」
ユナはがばっと顔を上げ、頬を膨らませた。
「人間にはね、言葉にできない悩みってものがあるの!」
「分析完了」
「早くない!?」
ピコは表示を切り替える。
「総合判断。ユナ、ずばり恋をしていますね」
「えっ!?」
ユナの耳まで一気に真っ赤になる。
「な、ピコ!? ち、違うわよ!! だ、誰が、こ、恋なんて!」
ぶんぶんと手を振る。
「そ、それに……! カイのことなんて、これっぽっちも!!」
「カイのことが好きなんですね」
「ぎくうぅぅ!!」
ユナは目を見開いた。
「な、なんでわかるの!?」
「推定難易度:★」
「えっ」
「ユナは昔から嘘をつくのが下手です。それはもう壊滅的に」
「うそぉぉぉ!?」
ピコは小さくため息をついた。
(ほんとうに……わかりやすい人ですね)
さすがのユナも、ついに観念した。
「……うん」
少し視線を逸らし、指先をもじもじと絡める。
「実はさ、このあいだのドローン事件以来……カイのことが……ちょっと気になっちゃって」
「ちょっと、ですか?」
「……だいぶ、と言うか、かなり」
ユナは恥ずかしそうに俯いた。
「最近はね……寝ても覚めても、カイのことばっかり考えちゃうの」
そのまま、がくんと机に額をぶつける。
「はあああ〜……」
(あー、これは……相当重症ですね)
「もう……恋に浮かれた女子高生じゃあるまいし……」
ユナは机に突っ伏したまま、ぼそりと呟く。
カフェの時計が、コツ、コツ、と時を刻んでいた。
やがて――。
ユナが勢いよく顔を上げた。
「……よし、決めた!」
「何を、ですか?」
ピコは嫌な予感を覚えた。
こんなときのユナは、とんでもないことを言い出すに決まっている。
「カイに……告白させる」
「……はい?」
「そう仕向ける」
「ええーっ!?」
ピコが思わず浮き上がる。
「そんな回りくどいことしないで、普通に告白すればいいじゃないですか!」
「それはイヤ!」
ユナはぐっと拳を握った。
「なんか……負けた気がするから!」
「『負けた気』って……いったい何と戦ってるんですか?」
「恋よ!」
ユナはびしっと指を突き出した。
ピコは慌てて、さまざまなデータを表示する。
「不確定要素が大きすぎます! 『他人と過去は変えられない。変えられるのは自分と未来だけ』です!」
「そんなことない!」
ユナは机を叩いた。
「『為せば成る! 為さねば成らぬ、何事も』よ!」
「引用元が戦国武将なんですが」
ユナの目が、メラメラと燃え始める。
「このプロジェクト、絶対に成功させてみせるわ!」
まったく聞いていない。
ユナはビシッと指を突き出した。
「私の、ありとあらゆるセックスアピールを使って……!」
どーん!!
なぜか謎の決めポーズ。
ピコは呆れたようにユナを見つめた。
(あ、これは、何を言ってもダメなやつですね)
半分、呆れ。
半分、諦め。
こうして――。
両想いの二人による、
「告白する作戦」
と、
「告白されたい作戦」
が、同時にスタートしたのだった。




