最終話③「最強のフォーメーション」
Aが巨大な翼を広げる。
無数の黒い羽根が、刃となって飛び出した。
「消えろ!!」
ザザザザザッ!!
「うわぁぁぁ!!」
トモが《アイギス・ヴェール》を展開する。
光の壁へ、黒い羽根が次々と突き刺さる。
バババババッ!!
「ひぃぃぃ! 多い、多いってぇぇぇ!」
必死に踏ん張るトモの耳へ、セラの声が届いた。
《サクラ、右から!》
「了解!」
サクラが駆け出す。
《ノルン・スレッド》
銀色のリングが幾重にも展開した。
そこから伸びた細い光の糸が、一瞬でAの四肢へ絡みつく。
ギィィィン!!
「何!?」
Aの巨体が止まった。
「捕捉完了」
サクラが指を引く。
リングが収束し、光の糸がさらに締まっていく。
「なんてったって、捕縛成功率99.97%よ!」
「こんな糸ごとき!」
Aが全身に力を込める。
だが――動かない。
「……!?」
「無理に動けば、もっと食い込むわ」
サクラが微笑む。
「逃がさないと言ったでしょう?」
「へえ……」
リサが楽しそうに笑った。
「じゃあ私が、その頭――思いっきりシェイクしてやるよ!」
《ソニック・バースト》
キィィィィィィン!!
音響波がAの獅子の頭部へ集中する。
「グオオオオオオ!!」
黄金のたてがみが激しく揺れる。
《今よ! アラン!》
「おう!」
アランが《グノーシス・ランサー》を構えた。
巨大な砲身が展開する。
凄まじい重粒子が、一点へ集束していく。
「くらえっっっ!!」
ズゴォォォォォォォン!!
眩い光がAを飲み込んだ。
爆発。
衝撃波が真実審査の間を駆け抜ける。
「やった!」
サクラが声を上げる。
その横で、リサが彼女を見る。
「あんたと私、水と油だと思ってたけど――」
「……?」
「意外と合うもんだね」
サクラは少し驚いたあと、笑った。
「……ふふ。それを見通して組ませるなんて、さすがセラ博士ね」
黒煙がゆっくりと晴れていく。
その奥から――
「……おのれ……」
巨大な獅子の顔が現れた。
「人間ごときが……調子に乗りおって……!!」
サクラが苦笑する。
「ちょっと怒らせちゃったかもね」
「ちょっと?」
リサが口元を上げる。
「こんなんじゃ足りないよ。もっと頭に血を上らせてやるのさ!」
アラン、サクラ、リサが一斉に散開した。
***
Aが再び翼を大きく広げる。
その身体に宿る四つの光が、それぞれ異なる方向へ回転し始めた。
展望台の上で、セラの表情が変わる。
「……まずいわ」
「どうしました?」
ピコが解析画面を見る。
「四者の能力が――全部同時に動いてる」
「全部!?」
「来るわ!」
Aの獅子の口が開いた。
「《クアドラプル・ドミネーション》!!」
獅子の咆哮。
フクロウの翼。
オオカミの爪。
ヘビの尾。
四方向から、同時に攻撃が襲いかかる。
「ひぃぃぃぃっ!!」
トモが《アイギス・ヴェール》を最大まで広げた。
バァァァン!!
「ぐっ……!」
光の壁が大きく揺れる。
一つを防いでも、次が来る。
右を守れば左。
前を守れば上。
四つの攻撃が、絶え間なく全員を追い詰めていく。
「これをどう攻略すれば……」
セラが盤面を見る。
ピコも焦った声を上げる。
「四つが同時に来るのは厄介です! 一つ止めても、残り三つが動きます!」
その横で――
ユカはじっとAを見ていた。
獅子。
翼。
脚。
尻尾。
そして、ふと思いついたように首を傾げる。
「……ねえねえ」
「なに、ユカ?」
「四つがいっぺんに動くから大変なんだよね?」
「ええ」
「じゃあさ――」
ユカがAを指さす。
「動けなくしちゃえばいいんじゃない?」
「……え?」
「サクラさんとジロウさん、一緒にやったら?」
セラの目が見開かれる。
ユカは両手を使って説明する。
「サクラさんの糸で、ぎゅーってして」
両手を閉じる。
「その上から、ジロウさんの重いやつを――」
今度は両手を下へ振る。
「どーん!」
「……!」
セラの目が輝いた。
「ユカ、ナイス!」
「え?」
「それ、いただくわ!」
「なるほど!」
ピコも解析画面へ向き直る。
「先に動きを止めてしまえば、四つを別々に相手する必要がありません!」
セラはすぐに指示を飛ばした。
《サクラ! Aの狼の脚を拘束して!》
「了解!」
《ノルン・スレッド》
ギィィィィン!!
無数の光の糸がAの四肢へ絡みつく。
「ぐっ!?」
《ジロウ! 上から思いっきり押さえつけて!》
「待ってました!」
《グラヴィティ・ランチャー》
ズンッ!!
Aの巨体が沈む。
ズンッ!!
さらに沈む。
ズンッ!!
床へめり込む。
「ぐおおおおおっ!?」
狼の脚が動かない。
身体も浮かせられない。
四つの攻撃が一気に止まる。
《今! リサ!》
「はいよ!」
《ソニック・バースト》
キィィィィィィン!!
超高周波がフクロウの翼へ叩き込まれる。
翼が硬直した。
《アラン!》
「任せろ!」
《グノーシス・ランサー》
砲口に光が集まる。
「吹っ飛べぇぇぇ!!」
ズドォォォォォン!!
重粒子の奔流がAを直撃した。
「ぐわぁぁぁぁぁっ!!」
巨体が大きく吹き飛ぶ。
ドゴォォォォン!!
壁へ叩きつけられたAを見て、カイが思わず声を漏らす。
「すげぇ……」
「やった!」
ユカが両手を上げる。
セラはそんなユカを見て微笑んだ。
「ユカ」
「うん?」
「今の、とってもいい作戦だったわ」
「ほんと?」
「ええ。大正解」
「えへへ」
ユカが嬉しそうに笑う。
ピコも大きくうなずいた。
「本当です! ユカらしくないくらい冴えていました!」
「……ん?」
ユカの笑顔が止まる。
「ピコ」
「はい?」
「それ、ぜんぜん褒めてないじゃん!」
「えっ!? 褒めたつもりですが!」
「もう!」
二人のやり取りに、セラは思わず吹き出した。
眼下では、Aがゆっくりと立ち上がろうとしている。
だが――
四者協議を取り込んだ“神”を相手にしても、
人間たちは確かに戦えていた。
知恵を出し。
力を合わせ。
互いに足りないものを補いながら。
それこそが――
彼らの《最強のフォーメーション》だった。
※作者の活動報告に各話のコメントを書いています。
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