最終話②「知恵と連携」
白銀の獅子キメラと対峙するカイ。
黄金の瞳が、獲物を射抜くように細まる。
低い唸り声。
カイはエクスカリバーを構え、一歩踏み出した。
(さて……どう攻めるか)
相手は未知の能力を持つ怪物。
頭の中で、いくつもの戦術を組み立てていく。
そのとき――
「待て、カイ」
「アラン?」
アランが《グノーシス・ランサー》を構えた。
「ここまで来て、お前一人に全部背負わせる気はない」
その横へ、サクラも並ぶ。
「私たちにも戦わせて」
リサが笑う。
「いい格好の一人占めは禁止だよ」
ジロウも《グラヴィティ・ランチャー》を肩に担いだ。
「援護射撃なら任せろ!」
トモは《アイギス・ヴェール》を胸の前に構える。
「わ、私は……防御しかできないけど……頑張る!」
カイは仲間たちを見渡した。
誰一人、逃げようとする者はいない。
思わず笑みがこぼれる。
「……ああ。頼りにしてるぜ」
胸の奥が熱くなる。
(そうだ。一人で全部背負う必要なんてない)
カイは聖剣を握り直した。
(俺には――みんながいる)
全員が武器を構え、キメラを見据えた。
***
その頃――後方。
「ユカ、ピコ。私たちも戦うわ」
セラの言葉に、ピコが目を丸くする。
「えっ? ですが、どうやって?」
セラは戦場全体を見渡した。
「私が後ろから、みんなに指示を出すの」
そしてユカを見る。
「ユカ。戦場を上から見渡せる場所、作れる?」
「うーん……」
ユカは少し考え――すぐに顔を上げた。
「うん! やってみる!」
リンク・リングが輝く。
「リアライズ・リンク――《ぐんぐんタワー》!」
ポンッ!!
地面から光が盛り上がる。
ぐんぐん。
ぐんぐん。
その名の通り、光の展望台が一気に空へ伸びていった。
「わあ……!」
あっという間に、戦場全体を見渡せる高さになる。
セラも思わず目を見開いた。
「すごいわ、ユカ!」
「えへへ!」
その横でピコがつぶやく。
「性能は一流なのに、ネーミングだけは相変わらずですね」
「そこ、褒めるところでしょ!」
三人は展望台へ駆け上がった。
眼下には、カイたちと白銀のキメラ。
すべての位置関係が一目で分かる。
「完璧ね」
セラがうなずく。
「ユカ。今度は、私の声をみんなに届けられる?」
「もっちろん!」
ユカはリンク・リングを胸の前で掲げた。
「リアライズ・リンク――《こころのでんわ》!」
プルルルルル――。
淡い光の波紋が広がる。
次の瞬間。
カイたち全員の耳元に、セラの声が届いた。
《みんな、聞こえる?》
「……セラ博士?」
カイが振り返る。
高く伸びた展望台。
その上に、ユカ、ピコ、セラが立っている。
「えぇっ!? いつの間にあんなの作ったの!?」
トモが叫ぶ。
ジロウも見上げて笑った。
「すげぇ……完全に司令塔じゃねぇか!」
《ユカの力を借りて、ここから全体を見渡しているわ》
セラの穏やかな声が続く。
《私が戦況を分析する。みんなは安心して戦って》
「博士、助かります!」
アランの声に、セラの表情が引き締まる。
《陣形を変えるわ。カイとアランは前衛。サクラは左から攪乱。リサとジロウは中衛から援護。トモは全員の防御に集中して》
「了解!」
全員が一斉に散開する。
セラはキメラを見据えた。
「ピコ。Aの移動速度、反応速度、翼がどこまで動くか調べて」
「解析開始。三秒後に予測データを共有します」
ホログラムに、キメラの移動予測が次々と浮かび上がる。
セラが微笑んだ。
「さあ――」
眼下の仲間たちを見る。
「人間の知恵と連携で、自称“神様”を超えましょう」
その声が、戦場全体へ響いた。
***
Aが巨大な翼を広げる。
「来い……人間ども!!」
バサッ――!
翼が大きく羽ばたく。
「神に抗うという愚かさを――」
獅子の口が開く。
「その身に刻めぇぇぇぇ!!」
「来るぞ!」
アランが叫ぶ。
「みんな、気をつけて!」
「言われなくても!」
リサが構える。
次の瞬間――
Aが突進した。
ドゴォォォォン!!
「ひぃぃぃぃっ!」
トモが《アイギス・ヴェール》を展開する。
巨大な光の壁。
そこへAの爪が叩きつけられた。
バァァァン!!
「うわぁぁぁぁ!?」
トモの足が床を滑る。
だが――防壁は砕けない。
「……た、耐えた!」
「当たり前だろ! そうじゃなきゃ困るぜ!」
ジロウが叫ぶ。
その瞬間、セラの声が飛ぶ。
《今! リサ!》
「了解!」
リサの耳元のインターフェースが輝く。
《ソニック・バースト》
キィィィィィィン!!
超高周波が空間を震わせた。
「グッ……!」
Aの巨大な翼が乱れる。
「演算ノイズ、検出! 共振率――最大!」
ドォォォォン!!
翼が大きく揺らぐ。
《ジロウ!》
「待ってましたぁ!」
《グラヴィティ・ランチャー》
ズンッ!!
強烈な重力がAを襲う。
巨体が地面へ叩きつけられた。
「ぐおおおおっ!?」
「どうだ!」
「まだよ!」
リサが指を鳴らす。
「もう一発!」
キィィィィィィン!!
「ぐっ……!」
翼の動きが再び止まる。
「今よ!」
《カイ!》
「任せろ!」
カイが聖剣を振りかぶる。
「エクスカリバー――《ブレイク・ウェイブ》!!」
ズァァァァァン!!
巨大な光の斬撃が走る。
「ぬおおおおお!!」
Aへ直撃。
ドォォォォン!!
爆発が真実審査の間を揺らした。
煙が広がる。
ジロウが身を乗り出す。
「やったか!?」
「それ、言っちゃダメなやつ!」
リサが即座に突っ込む。
煙が晴れていく。
そこには――
Aが立っていた。
「…………」
「やっぱダメだったぁぁぁ!!」
「なんでそこで確認するのよ!」
「いや、様式美だろ!」
「おまえら、戦闘中に漫才するな!」
カイが叫ぶ。
だが、その口元にはわずかな笑みが浮かんでいた。
(行ける……!)
Aは倒れていない。
それでも――
確かな手応えは、あった。
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