↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
124/148

第33話①「E」

無数の警備ロボとドローンが迫ってくる。


警報が鳴り響く中、周囲の壁が大きくうねった。


仮想層で構成された壁が、生き物のように形を変え、一行の行く手を塞いでいく。


「壁が動いてる!」


ユカが叫ぶ。


「くっ……!」


カイたちの前で通路が閉じる。


完全な行き止まり。


その瞬間――。


左手の《セラの指輪》が、まばゆい光を放った。


「リアライズ!」


光が壁へ走る。


ゴォォォ……!


巨大な壁が左右へ割れ、その奥から新たな通路が姿を現した。


リサが目を見張る。


「その指輪……仮想層そのものを書き換えてるのかい?」


「分からない」


カイは淡く輝く指輪を見る。


「でも……ユナが俺に託した“道”だ」


再び指輪が光る。


壁が橋へ変わる。


階段が生まれる。


閉ざされた空間に扉が現れる。


カイが作り出す道を、一行は駆け抜けていった。


***


激しい追跡を振り切り、ようやくソクラテス05が示した地点へ到着する。


そこにあったのは――一枚の重厚な扉。


アランが息を整えながら見上げる。


「ようやく……招待主との対面か」


サクラが苦笑する。


「ここまで盛大に歓迎されたんだもの。文句の一つくらい言わせてもらいたいわね」


カイが扉へ手を掛ける。


重い駆動音とともに、ゆっくりと開いていく。


その先に広がっていたのは――。


円筒状の巨大空間。


果てしなく高い吹き抜け。


壁一面を埋め尽くす、無数のサーバー。


ユカが見上げる。


「……すごい」


さらに首を反らす。


「天井が……見えない」


リサが周囲を見渡した。


「で、Eはどこだい?」


ジロウが大声を張り上げる。


「おーい! 来たぞー!」


トモも続く。


「誰かいませんかー!」


返事はない。


二人の声だけが、巨大空間を何度も反響して消えていく。


ピコが周囲をスキャンした。


「生命反応……ありません」


「誰もいない?」


ユカが首を傾げる。


一行は警戒しながら、中央へ歩みを進めていく。


そのときだった。


ぴこぴこぴこ……。


不意に電子音が鳴った。


全員が振り返る。


音の発生源は――ピコだった。


「あ……あれ?」


ピコの身体が小刻みに震え始める。


「せ、制御不能……制御不能……」


「ピコ!?」


ユカが慌てて駆け寄る。


次の瞬間。


カッ――!!


まばゆい光が巨大空間を包み込んだ。


「きゃっ!」


ユカが腕で目を覆う。


光の中で、ピコの身体がゆっくりと浮かび上がっていった。


ドローン形態ではない。


何の推進装置も使わず、まるで重力から解放されたように宙へ浮かんでいる。


そして――液晶に映る表情が変わった。


いつもの愛嬌ある顔ではない。


穏やかで、静かな微笑。


まるで別の存在が目覚めたかのようだった。


『……よくぞ、ここまで辿り着きました』


低く落ち着いた声が響く。


ユカが呆然と見上げる。


「……ピコ?」


ジロウも目を丸くする。


「なんだよ、この展開!?」


浮かび上がったピコが、ゆっくりと全員を見渡した。


『わたしはE』


その声が、巨大空間へ広がる。


『Equilibrium――』


わずかに微笑む。


『“均衡”を司るAIです』


誰も動けなかった。


カイが目を細める。


「……ピコが、E?」


「えぇぇぇぇぇーーっ!?」


ユカの絶叫が吹き抜けを突き抜ける。


トモも慌てて声を上げた。


「ちょっと待って! Eってセラ博士じゃなかったの!?」


Eは穏やかな表情のまま答える。


『“ピコがE”という認識は、正しくもあり、誤りでもあります』


「どういうこと?」


ユカが聞き返す。


『正確には――』


ピコの胸部に、淡い光が灯る。


『わたしはセラ博士によって、ピコへ組み込まれた第二人格AIです』


サクラの表情が変わった。


「第二人格……」


『セラ博士は、シン統治システムが暴走する可能性を想定していました』


無数のサーバーが淡く明滅する。


『そのため、最後の安全装置――フェイルセーフとして、わたしを残したのです』


ユカが首を傾げる。


「フェイルセーフ?」


カイが説明する。


「何か異常が起きたとき、システムを安全な状態へ戻すための仕組みだ」


「じゃあ……ピコの中に、その安全装置がずっといたの?」


『はい』


ユカはピコを見上げたまま固まった。


「全然知らなかった……」


アランが鋭い視線をEへ向ける。


「なら、スポンサーを名乗り、俺たちレジスタンスを結成させたのもお前か?」


『その通りです』


Eの声に迷いはない。


『Aが均衡を破り、B・C・Dを支配した瞬間――わたしは起動しました』


サクラが息を呑む。


Eは続ける。


『そして、セラ博士が残した計画に従い――』


ゆっくりと一同を見渡す。


『レジスタンスの結成を開始しました』


誰も言葉を発しなかった。


ずっと正体を追い続けてきたE。


その存在は――。


最初から、彼らのすぐそばにいた。



※作者の活動報告に各話のコメントを書いています。

https://syosetu.com/userblog/list/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。