第4話②「正反対×連携=最強?」
ここ最近、頻繁に起きているドローン異常を調査していたユナ。
そのユナとカイがカフェで話していた、そのときだった。
窓の外を、複数のドローンが轟音を響かせながら横切った。
壁に機体の影が走り、ガラスがかすかに震える。
AIサポートロボのピコが素早く反応した。
「ノイズ反応を検知! 複数機から異常なデータ波形を確認しました。データ異常の可能性が高いです!」
「やっぱり……!」
ユナが立ち上がる。
カイもすでに席を離れていた。
二人は顔を見合わせる。
言葉は必要なかった。
「行くぞ!」
「もちろん!」
次の瞬間、二人は店を飛び出していた。
ピコも慌てて後を追う。
***
昼下がりの街を、ドローンの群れが駆け抜けていく。
公園の木々の間。
ビルとビルの谷間。
歩道橋の下。
まるで街そのものを把握しているかのように、機体は複雑な軌道を描きながら飛び回っていた。
カイとユナは、その後を必死に追う。
「速っ……! こりゃ追いつけないわ!」
「待ってくださーい!」
ピコは全力で走っている。
しかし、二人との距離はみるみる開いていく。
「……仕方ありませんね」
ピコが足を止めた。
「モード切替を開始します。――ドローンモード、展開!」
カチリ。
内部ロックが外れる。
手足が折りたたまれ、背部から小型プロペラが展開する。
次の瞬間、ピコの機体が地面から浮き上がった。
「おおっ!」
ドローンモードとなったピコは、一気に上空へ上昇すると、カイとユナを追いかけ始めた。
「すごっ……! おまえ、そんなこともできるのか!」
「はい。ピコを設計した方の口癖が『変形と合体は技術者のロマン』でしたので」
ユナが走りながらピコを見上げる。
「趣味、全開だね」
「ピコも、設計思想については疑問を感じております」
「本人に言ってやれ」
「もう言いました」
そんな会話をしている間にも、ドローンの群れはどんどん先へ進んでいく。
「話してる場合じゃないぞ!」
「分かってるって!」
***
暴走ドローンを追跡しながら、三人は作戦を考え始めた。
「暴走してるとはいえ、完全なデタラメじゃないはず……」
ユナが端末に表示された飛行データを眺める。
「何かしらの規則があるなら、次の行き先を予測できる」
「ああ。行き先が読めれば、先回りして罠を張れる」
ユナの口角が上がった。
「それで行こう。ピコ、飛行パターンを解析して!」
「了解!」
ピコが上空からドローンの動きを追跡する。
数秒後、解析結果が表示された。
「解析完了。飛行パターン……完全ランダムです!」
「えっ、うそでしょ!?」
ユナが端末をのぞき込む。
画面には、複数のドローンが描いた飛行軌跡が表示されていた。
右へ行ったと思えば左へ。
急上昇したかと思えば急降下。
同じルートを二度と通らない。
確かに、ランダムにしか見えない。
しかし、ユナは首を横に振った。
「……違う」
「何が?」
「これ、ランダムじゃない」
ユナの目が、軌跡を追う。
「ランダムに見せてるだけ。こいつら、私たちが予測したルートを学習して、わざと外してる」
カイの表情が変わる。
「つまり……追跡する側の行動まで読んでるってことか」
「そういうこと」
カイは空を見上げた。
ドローンはまるでこちらを嘲笑うように、複雑な軌道を描いている。
「厄介だな」
「うん。これ、ただの故障じゃないよ」
作戦は振り出しに戻った。
***
上空を旋回するドローンを見上げながら、ピコが考え込む。
「もし、ドローンたちを一箇所に集めることができれば……」
二人の視線がピコに集まる。
「停止信号を送って、一網打尽にできるのですが」
その言葉を聞いた瞬間だった。
カイとユナの目が同時に輝いた。
「閃いた!」
「えっ!? 二人同時ですか!?」
カイがユナを見る。
「いや、俺の案の方が現実的だろ。カフェ店主は、コーヒーでも淹れてろよ」
「はァ!? ボードゲーム弱いくせに何言ってるの! 私の方が絶対うまくいく!」
「なんだと!」
「何よ!」
二人がにらみ合う。
ピコが慌てて間に入った。
「お二人とも! 落ち着いてください!」
「俺の方が合理的だ」
「私の方が確実よ」
「順番に説明してください! どちらの案も検討する価値があります!」
まず、カイが端末を操作する。
「俺の案は『磁場の谷』を作ることだ」
「磁場の谷?」
「ドローンのモーターは電磁コイル駆動だ。外部磁場を操作すれば、姿勢をわずかに乱せる」
ピコが計算を始める。
「なるほど……特定方向に『落ちやすい』空間を作るのですね」
「ああ。強制的に進路を修正させる」
続いて、ユナが端末を掲げる。
「私は『周波数誘導』」
「周波数誘導?」
「ドローンには必ず、緊急時用の帰巣周波数が設定されてる。その周波数を疑似発信すれば――」
「本能的に、その方向へ集まるわけですね!」
「そういうこと」
ピコが感心する。
「どちらも有効な作戦ですね」
ところが。
「磁場の谷だ!」
「周波数誘導よ!」
「磁場!」
「周波数!」
「ガウス!」
「ヘルツ!」
「マグネティック!」
「レゾナンス!」
「フィールド!」
「ウェーブ!」
ピコ
「少年漫画の必殺技の応酬みたいになってません!?」
しかし、ピコのツッコミも届かず、二人の言い争いが続く。
ピコの眉間に、わずかな疲労の色が浮かぶ。
「もう、いい加減にしてください!」
二人が振り返る。
「どちらも優れたアイデアです!」
ピコは両手を広げた。
「だったら、両方使えばいいじゃないですか!」
カイとユナが顔を見合わせる。
「あ……」
「そっか……」
カイが続ける。
「外部から磁場で追い込みつつ……」
ユナが引き取る。
「内部を周波数で誘導すれば……」
二人の目が再び輝いた。
「これって……」
「最強じゃね?」
「よし、実行だ!」
「もう……疲れます……」




