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第七話 居心地の悪い俺の部屋

 目が覚めたらこの間知り合った少女がいた。この文章だけでは何言ってるんだという感じだが、実際当事者である青も同じ気持ちである。記憶をたどるとどうやら自分の部屋に居候するとか。いくら考えても現実味がなさすぎるので一旦


 「ちょっと待っててくれ」


 そういうと青はタンスから着替えを取り出し洗面所へ向かう。まずはパジャマから私服に着替え気持ちを切り替える。次に冷水で顔を洗いしっかりと脳を覚醒させる。春になったとはいえこの時期の冷水はびっくりするほど冷たい。その水で5回ほど顔を洗ったら歯を磨きとりあえずの身支度完了。

 もしかしたらさっきまでのものは寝ぼけていたから見えた幻覚なのかもしれない。冷静に考えてあり得ない話なのだ。だってついこの間知り合ったばかりだ。無理がありすぎる。さっき思い出した記憶もきっと嘘で洗面所から出たらそこには誰もいないはずだ。

 そして先ほど少女がいた部屋に目を向けると


 「いるじゃねーーーーかよ!!!」

「はひぃ」

「待て待て待て。昨日俺は何をしたんだ?!エイプリルフールの噓だったりとかしない?!ねえ?!?!ん?」


 ふと壁がくりぬかれ青の部屋とつながっている203号室が視界入り、まさかと思いそこに恐る恐る近づく。


 「あ...の...こんな家具あったっけ?」

「引っ越しは午前中に完了しました...はぃ...」

「早ぇよ!!!昨日の今日だぞ!!!」

「あのやれることは全部やったので...生活費も振り込みましたし...」

「?!?!?!?!?!?!」


 すかさずスマホの通帳アプリを開く。子の通帳アプリは青にとっては非常に便利なものであり、紙の通帳はあまり見ることはないが、アプリのものになると手軽にどこでも見ることができ、しっかりとした金銭感覚を保てるのだ。自分が今いくら持っているのかを自覚しないと浪費してしまうのが青の悪い癖だ。

 さて話を戻そう。


 「もう入ってんじゃん!!!さっきから早ぇって!!!わかんないって!!!」


 というかここまでされると出てけなんて口が裂けても言えない。喜々田の行動が早すぎてこちらは何もできない。というか昨日の段階でどこまで話が進んだんだ?金の話なんてした覚えがないぞ。まさか頭が回っていないタイミングを狙って喜々田は交渉に来たんじゃないだろうな?



 ぐーーーーーーー



 「あ」

「あっご飯作りますね」

「親かよ」


 

*****



 気まずっ

 同じ学校の隣のクラスといってもこの間まで面識はなかったわけで喜々田が料理しているこの間の静寂は容易に耐えれるものじゃない。え、なんか話すべき?何部に入ってる?好きな教科は?どこ中出身?この質問はだめだ。俺はもともと四津ノ宮出身で遠井の中学は何一つわからない。てか会話って思ったより難しいな。ここ一年大して同級生と会話しなかった影響が今出てきたか。

 というかなんか違和感がある。喜々田と話すとなんかよくわからない違和感が――


 とりあえず時間が過ぎるのを待とう。料理音を聞いて気まずさを紛らわせよう


 「あ」


 卵を割ろうとして失敗しボウルに殻が入る音


 「「ゴホッ、ゴホッ」」


 塩コショウをかけすぎた音


 「えっとこれを...あっ」


 おそらく玉子焼きを作っているのだろううまく形を作るのに苦戦している菜箸の音がする。そしてなんだか焦げ臭く――


 「あれ?なんで」

「嘘だろ待て待て待て」


 急いでIHの電源を切る。意外にもいかるが荘はガスコンロではなくIHである。もう少しで築30年の古いアパートだが十年前に青の祖母がガスコンロをIHに変えたのだ。


 「はぁ、はぁ、はぁ、喜々田...お前...もしや料理が...」

「?」


 言わないでおこう。なんか可哀そうだ。



*****



 本日の朝ご飯兼昼ご飯は黒焦げの何か。ダークマター。


 「どうぞ...玉子焼き...です」


 どちらかといえばスクランブルエッグだ。と心の中で突っ込んでおく。


 「いただきます。」


 うん。立派な炭の味だ。そしてなんかジャリジャリしてる。殻入ってねーか?

 めっちゃ笑顔でこっち見てくるじゃん


 「...ウン。ウマカッタ。ゴチソウサマデス」



*****



 喜々田 エニ

 先日の爆弾騒動に青が巻き込んでしまったことから知り合いになったおとなしく見える少女。見た目は高校生なのに中学生に見えるくらいいろいろと小さい。身長はざっと150cmあるかないかくらい。肩に髪が少しかかるくらいで前髪で右目が隠れていたりする。

 昨日の青との会話で友達がいないことが判明。そういうところは青と似ているのかもしれない。



*****



 あーだこーだ言ってられない。そろそろ現実を受け入れるべきだ。そんなことはわかっている。頭ではわかっているんだが


 「...............」

「................」


 自分の部屋なのにそんな感じがしない。こんなに居心地の悪いものだったか?この数時間の間俺はずっとスマホをとりあえずいじって入る。別に大した目的はなく、ただ気まずさを紛らわせているだけだ。そんでもって喜々田は自分の部屋には戻らずこっちをずっと見ている。

 ねえ、それどういう感情?


 「...よし。晩御飯の食材買ってくるわ」

「わ、私が行きます!」

「いや!!!俺に任せて!!!全部俺に任せて!!!」


 

*****



 「人の分も作るなんていつぶりだろ?」


 さすがにいつもみたいな玉ねぎ料理を人に出すわけにはいかない。てか今俺がやってることって


 「親かよ」


 「私手伝います」

「あっ...じゃあ皿を」


 IHで玉子を真っ黒こげにする奴に料理の手伝いは怖くてさせられない。


 「ほい、できたぞ」


 青は準備してもらったさらに作った料理を盛りつけ机に並べる。現在青の部屋の机に二人が向かい合って青はあぐらをかいて、エニは正座で座っている。


 「「いただきます」」


 エニは料理を口に運び


 「ん~~~~♪おいしいです!!!」

「ん?そうか?」

「なんですかこれは?!?!」

「鮭のホイル焼き。俺の一番の得意料理」


 今日は腕によりをかけて作った鮭のホイル焼き。今後暮らしていくにあたって料理だけは俺が喜々田の分もやらないといけないと思ったから一番おいしく作れそうなものを選んだ。どうやら正解だったようで喜々田はパクパクと明るい笑顔で食べ続けている。その様子を見ているとこっちまで口元が緩んできた。

 いつの間にか数時間感じていた気まずさもなくなり、会話をすることができた。


 会話の中で洗濯は自分でやること、風呂は自分の部屋のものを使うこと、料理は俺がやることが決まった。そして明日は喜々田の分の食器等を買いに行くことになった。


 「じゃあそういうことで、明日は食器会に行くぞ喜々田」

「...あの...喜々田じゃなくエニがいい...です...」

「え、ああ、じゃあ、俺からも」


 ああ、そういうことかずっと何となく感じていた違和感がわかったかもしれない。


 「丁寧な言葉遣いじゃなくていいぞ。これからもよろしくなわけだから。な、エニ」

「は、はい!じゃなくて、うん!」








*****



おまけ


 「じゃあ鍵渡すな。203と205。あれ?減ってる」

「昨日もらったよ」

「え」

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