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第六話 エイプリルフールは明日

 時刻は午前八時。前日の爆弾騒動により体力を相当消費した青は熟睡をし、まだ寝ているものだと思われていた。


 「いってええええええええ」


 今までの運動不足が原因で夕方の時点で両足の激しい痛みに襲われ、青は午前八時現在まで一睡もすることができていないのだ。


 「あのゲームが意外と面白いのも駄目だと思うんだけど。くだらねーゲームをやって睡魔に襲われるという俺の計画が...」


 深夜、一向に眠れない青が考えついた計画。それはネットで面白くないとされているゲームをプレイし、自分から睡魔に挨拶をするというものだった。考えついてからの行動は早く、すぐさまスマホにそのゲームをインストールした。ゲームの内容はCPUとサッカーの試合を行うという単純なものだ。

 では何故このゲームが面白くないと言われているのかというと、ボールの軌道が物理演算を無視して飛んでいくところや、CPUが強すぎること、普通にバグが多すぎるからである。

 それに加え青はサッカーのルールを大して知らず、サッカーにも興味はないため一瞬で眠りに落ちることが可能かと思われていた。

 しかし、その理不尽なゲームを攻略することに本気になり、理不尽さに面白みを見出してしまった青は眠りに落ちるどころか逆に目を覚醒させることになってしまった。

 そして今に至る。午前八時にもなったら疲労が体の痛みに勝ち、いつでも眠れる状況になった。


 「やっと眠くなってきた。今日は予定もないし、ミクは工場の契約で忙しいらしいから今日は家に来ないし、夜までぐっすり寝よう。そんで晩御飯食ってからまた寝よう...おやすみ...」


 ピンポーン


 「...んぐぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ はーぃ」


 やっと寝れると思ったら今度は何だ。宅配ならすぐに布団に戻れるからいいんだが、これでミクだったら流石にキレる。今日は追い返す。決めた。そもそも宅配だったとして俺は一体何を頼んだ?


 そう考えつつ玄関のドアを開ける青。そこにいたのは


 「あ、あの...突然来ちゃってごめんなさい...あの...お願いがあって」

「え」


 昨日出会った喜々田 エニがいた


 「えっと、父の海外出張が急に決まって母と兄もそれに付いて行くことになって、でも私は学校もあるからここに居たくて、でもでも一人暮らしは危ないからダメってなって、友達の家に居候する形ならいいってなったから...その...ここに住みたい...です...」

 「ん?」


 緊張しているのか早口になりながら説明を行うエニ。青は死にかけの脳を回転させ色々と考える。


 ではここで青の住んでいるアパート、いかるが荘の話をしよう。

 

 いかるが荘はもともと青の祖父母が管理していた。彼らが五十代のときに余生に少しでも刺激を作るためにいかるが荘を建てた。

 ローンをすべて返済し終えたタイミングで祖父が死に、青が高校一年の秋頃に祖母が死亡。その後、高校に通うために祖父母の家に住んでいた青はいかるが荘の一室で暮らすことになった。なお、今のいかるが荘の大家は青である。

 そしていかるが荘は二階建てで一階には101、102、103、105号室があり、すべての部屋が埋まっている。二階には201、202、203、205号室があり、201号室は使われており、205号室は青が住んでいる。202号室は現在物置として使われている。


 「あー大変なのはわかったけど、今此処満室なんだよね。力になれず申し訳ない。202をなんとかすればいけるか?いやあの量を今からどうにかできるわけないか」

「えっと...あの私...一緒に住みたいんだけど...」

「え」


 ん?聞き間違えか?一緒に住みたいとか言ったか?え?は?ん?


 どんどんと青の目が覚めていく。エニからもう一度説明を聞き自分が勘違いをしていたことに気がつく。寝不足は危険だ。どうやらエニはいかるが荘の部屋を借りに来たのではなく青の部屋に住みに来たのだ。その理解のできない現実が青の意識を現実へ戻していく。

 ここまで目が覚めてきたところで自分が今パジャマで同級生の女子と会話していることに気づく。だが恥ずかしさよりも困惑が勝つ。パジャマが何だ。そんなことはどうでもいい。それくらいのことが今起きている。


 「喜々田。エイプリルフールは明日だぞ」

「う嘘じゃないです!」

「大体、昨日初めてまともに会話した異性に普通頼るか?他の友達のとこは」

「友達は...いない...です。ちゃんと話したの青くらい。だからお願いします」


 なんだコイツもボッチなのか。と、なんか仲間意識を感じてしまう。この仲間意識はついこの間もあった。貧乏仲間だと思っていたミクが実は大金持ちだったという事件があった。そういえばあの時のミクも家に泊まりたいとか言っていたな。


 「俺の部屋ぁ?えーーーーっと」


 十秒ほど考え


 「出来んこともないのか。いや、でも」

「出来るんですか?」

「んまあ、見てもらうほうがいいか」


 そう言って青はエニを部屋に入れる。その部屋は布団などが片付いておらず


 「ちょっと汚ぇけど。ほらこれ」


 指を指したのはアパートの外観から考える一部屋のサイズからは考えれないほどのスペース。そのスペースには大して物が置いていない。

 

 「ここは」

「前の住人が壁に穴開けて、それをばあちゃんがきれいにくり抜いたんだ。つまり今203と205は二つで一つの部屋ってわけよ。203に置いている物を片付けてカーテンかなんかで部屋を仕切ればすぐに使えると思うけど」

「いいんですか?!」

「うい」


 話がまとまってきてエニはほっと一安心。というわけでエニは帰るそうで舞台は再び玄関に


 「じゃあ、明日からよろしくお願い...します...」

「はいよ〜 これ鍵ね。203と205も一応。ふあぁ」

「では」


 この間青は話は理解できているが眠気で正常な判断を下すことができていない。本来の青ならミクと同じところで暮らすことを提案するか、202号室を無理やり気合で片付けてそこに住ませることにしていただろう。だが今の彼は


 「明日からか。じゃあカーテン買わねーと。あと掃除して、物移動させて」


 これから睡眠に入ろうとしていたことすら忘れ、203号室を使えるように動き始めていた。

 青は掃除に気合が入ると隅々までやってしまうタイプで時間を忘れもう夜になってしまった。そんなこんなで一日が過ぎ時刻は午前二時。ようやく青は眠りにつくことができた。


 「おやすみぃ...」



 



















 「あ、あの...起きて...ください」

「...ぁ」


 目が覚め時間を確認する。時刻は午後一時。大体十一時間くらい寝ていたようだ。しかしそこには何故かいるはずのない顔があり


 「ぁれ...なんで。...え~と昨日」


 記憶が一気に脳に流れ込んでくる。思い出す、自分が訳のわからない選択をしていたことを。だんだん目が覚め、現実を自覚する。


 「うそ」


 一説には嘘をついていいのは午前中までだがもう時間切れ。これはエイプリルフールの嘘ではなく、紛れもない現実であった。

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