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第三十二話 ワンチャンあると思って

 「次で最終競技か」

 「うんうん、障害物競走ワタシ出るからちゃんと応援してよ」

 「ミクちゃんの担当何だっけ」

 「借り物だったかな」

 「大トリか」


 大縄跳びが終了し、これからは最終競技の障害物競走が行われる。クラスからは四人のメンバーが出場し、一人ずつスプーンボール運び、ぐるぐるバット、ペットボトルフリップ、借り物競争を順にクリアする。つまり、借り物競争を担当するミクは最終走者となるわけだ。


 「ほーん、今一位の七組とええ勝負しとるなこのクラス」

 「先生どうかしました?...」

 「...せや!もし四組が学年優勝したら終業式の日に先生がクラスのみんな分のアイス()うたるわ!」

 「「「「「やった――――!!!」」」」」


 担任の潮田先生が学年優勝したらクラス全員分のアイスを買うことを宣言し、二年四組はより一層盛り上がる。


 「じゃあワタシ行ってくるね」

 「頑張ってね!」

 「アイス頼んだぞー」


 ミクたち出場選手は招集場所へと向かった。


 「私飲み物買ってくる」

 「あいよ」


 エニはこの待機時間に飲み物を買いに自販機へと向かった。


 「ねえ~未来ちゃん好きな人いるんじゃない~」

 「うわっ!びっくりした!なんだ!」


 青の耳元に突然誰かが語りかけた。


 「ちょっと花?!急に何変なこと言ってるの?!」

 「水波ごめんね急に花が」

 「だってさ~、普通借り物競争ってお題に絶対含まれてる『好きな人』を避けたいから人気無いんだよ~。それなのに未来ちゃん何も言わずにこれやるってことは、好きな人に告白する覚悟があるか、すでに彼氏がいるかだよ~」


 語りかけて来たのは同じクラスの花だ。急に花が青に突拍子のないことを言い出し、空良と風香が慌てて止めに入る。だが


 「花が珍しく筋の通った理由を言ってる」

 「どうしたの?熱でもあるの?」

 「二人ともひどくな~い」


 この三人の会話に一気に置いてけぼりになった。

 続けて花は青の耳元でささやく


 「もし好きな人がいるなら、それは水波なんじゃな~い」

 「はぁ!?!?」


 思わず大きい声が出てしまう。


 「じゃあ、そういうことで~」

 「花の言ってること気にしなくていいからね」

 「本っ当に変なことに巻き込んでごめんね。それじゃあ」


 こうして三人は去っていった。

 そのタイミングで自販機からエニが戻ってくる。


 「?...どうしたの?」

 「いや...まさかな...そんなわけ...」



*****



 今年度の借り物競争には特別ルールが用意されている。通常の借り物の他に高難易度の借り物も存在し、高難易度のものでゴールをすると、獲得できる点数が三倍となる。通常のものと高難易度のものは選手が自分で選ぶことができる。


 「七組が高難易度の方選ぶ可能性もあるから、勝つためにワタシは高難易度の方選んだ方がいいのかな」



 パン!



 今、障害物競走がスタートした。借り物競争では何が起きるのかがわからないので、その前にある障害物で七組に差をつけたいところだ。

 しかし、中々差を作ることはできず、しまいには七組に先頭を許してしまった。


 そしてミクの番が回ってきた。その時には七組はすでにお題を選ぶ机の前まで到着していた。


 「やっぱり七組は高難易度の方を選んだ。ならワタシは高難易度を選んで一番でゴールしないと!」


 持ち前の足の速さですぐに机の前に到着し、迷わずに高難易度の方のお題を引く。


 「これは...青!」

 「へ?!」


 ミクから名前を呼ばれ必要以上に反応した青。どうしても先ほどの花の話が頭から離れず、ミクから名前を呼ばれ、余計にその話が頭の中を駆け巡る。


 本当に...本当にあり得るのか...あいつが俺を?...ついにきちゃうか俺の時代!


 「これ!」



*****



 「障害物競走二年生の部、優勝は二年四組です!」

 「やったー!青も喜ばないと!」

 「ハァ――――」


 見事一位でゴールし盛り上がる二年四組の面々。もちろんエニも盛り上がる。しかし青は目のハイライトが消え、やさぐれた顔をし、深いため息をつく。

 どうしてこうなったかというと――



*****



 「これ!」


 ミクはお題の書かれた紙を青に見せる。そこに書かれていたものは


 「ランドセルと黒電話ぁ?」


 青はすぐさまどこかからランドセルと黒電話を取り出し、ミクのもとへ駆けつける。


 「これなら一位いけるかな。じゃあ!」

 「え?」



*****



 「やっぱ無いな。何があってもあいつは無い。さっきまでの俺がおかしかっただけだわ」


 ミクに少しでも期待してしまった自分が実に愚かだったのか、何があってもミクは無いなと実感した青であった。


 「ではヒーローインタビューに参りましょう!優勝した二年四組の借り物のお題、ランドセルと黒電話は難しかったと思うんですけどどうやって見つけて来たのですか!」

 「なんか青なら持ってるかなー、ワンチャンあるかなーって」

 「青さんはクラスメイトの方でしょうか。その方にもお話をお伺いしてみたいものです!」

 「だって!青来て!」

 「えー」


 その様子を見守る生徒会のメンバーである人見と三嶋。


 「ランドセルと黒電話ってこの場にない可能性の方が高いだろ。よくこのお題作ったな」

 「一応高難易度の方の借り物のお題はクラス対抗リレーに出場できなかった部活が所持しているものにしておいたんだ。実際、以前演劇部の部室にお邪魔した時、ランドセルと黒電話がそこにあることは把握していたからね」


 場面は戻りヒーローインタビュー


 「ランドセルは趣味ですか」

 「んなわけねーだろ!」


 最後の最後で見事逆転し、青たち二年四組は見事学年優勝した。

 これにてようやく体育祭の幕が下ろされたのであった。

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