第二十四話 幸福と不幸が交わる時
それは、休み時間に突如として送られたメールだった。受け取ったのはエニ。
「なんだろう、これ?」
そのメールの差出人は『日本幸福の会』という全く身に覚えの無い団体であった。エニは不思議がってそのメールに目を通す。
おめでとうございます。あなたは厳正なる抽選の結果、幸福の使徒に選ばれました。つきましてはこのURLから会員費5万円を送金していただき、我々の団体に加入していただきたい所存です。さらに、このメールを他の人に拡散して幸福のお裾分けをしましょう。最大5件までです。何卒よろしくお願いします。
「私、すごく幸福になった?えっと...会員費5万円...払えなくはないけど、今学校だから振り込めない...そもそも振込ってどうするんだろう?」
とりあえず教室を見渡し、エニは誰かに振込方法を教えてもらうとする。と言っても、エニにとって、この学校内にまともに話せる人間が数少ない。たったの二人だ。その二人のうち一人は今教室内にはいない。もう一人は自分の席でスマホをいじっている。エニはその一人に疑問に対する答えをもらおうとする。
「ねえ、青、振込ってどうすればいい?」
「コンビニ行けば何とかなる。ふあぁ、やっべ、次の古典寝ちまうなこれ」
「ありがと」
「うい」
この短い会話が終わり、エニは自分の席へと戻る。
「コンビニ...放課後に行こうかな」
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同時刻、ミクは飲み物を買いに、一回の校舎と校舎を繋ぐ通路に設置されている自動販売機のもとにやってきた。財布から千円札を取り出し、自動販売機に入金する。コーヒーのところにあるボタンを押し、落ちてきた缶コーヒーを手に取り、一気に飲み干す。
「――っは!次の授業古典だからコーヒー飲んで眠気対策しないと。やっぱり最終授業7限目の古典は悪ですなー」
そして中身が空になった缶を自販機のすぐそばにあるビン・カン専用のゴミ箱に捨てた。
すると、ミクのスマホから通知音が鳴り、ミクはその内容を確認する。音が鳴った理由はショートメールが送られてきたからだ。
「なにこれ?悪魔の眼ブラックディスティニー?」
差出人は『悪魔の眼ブラックディスティニー』という、聞くに堪えないネーミングセンスの存在であった。もちろんミクはこの存在のことを全く知らない。そのメールの内容は
御愁傷様です。あなたはとても不幸になりました。この不幸を取り払うには、このURLから5万円を送金して、このメールを5件他の人に送ってください。そうするとあなたの不幸は取り払われます。
「うそ、ワタシ不幸になっちゃったの?!今日の古典当てられたくないんだけど!あと明日の購買パンの数量限定プレミアムカレーパン食べたいのに!やーだー」
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「幸福のメールは5件まで送れる...誰に幸福をお裾分けしよう...」
エニのもとに届いたメールを他の人に贈ると幸福をお裾分けできるらしい。では、その幸福をお裾分けするのは誰にしようか。エニは直近の出来事を思い出す。
「そういえば最近青...」
最近の青はかわいそうな目にあっているような気がする。部員がゼロ人だったり、いかるが荘に強盗が入ったり、ガチャで天井に行ったり、と、散々な目にあっている。強盗事件はどちらかと言えばエニの不幸ではあるが、青はそのあと二日間、タンスで体を強打した場所が痛んでいたそうだ。なので青も不幸な目にあっている。
「5件全部青に送ったら、ちょっとはマシになるかな...送信」
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同時刻
「5万円くらいなら払えるけど...5人ににメール送んないと。nishineなら選択肢多いんだけど、メールとなると、連絡できる人がいないなぁ。メールアドレスまで知ってるの青とエニちゃんだけだし」
別に友達が少ないわけではない。友達とは基本、会話アプリのnishineでしか繋がっていない。メールアドレスまで知っているのは青とエニの二人だけ。ミクはこの不幸のセールを送れる相手の選択肢がないに等しいのだ。
「青に送るのは確定として、エニちゃんには...送れないなぁ。どーしよ」
何か解決策はないか。ミクは頭を働かせルールの抜け道を見つけ出す。
「そっか!メールを送るのは5件で、5人に送れだなんて書いてない!ってことは青に5件全部送ればいいんだ!よし、送信!」
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休み時間の終了間際、青のスマホに10件のメールがほぼ同時に送られてきた。
「なんだ」
確認してみると、エニからは幸福のメールが5件、ミクからは不幸のメールが5件送られていた。
同じ量の幸福と不幸が青のもとでぶつかり合う。
「この場合、俺はどっちになるんだ」
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放課後、演劇部の部室にて
「お前らは一度、ネットリテラシーってのを学ぶ必要がある!ってことで今から講習会だ!」
「えー眠い」
「お前はさっきの授業寝てただろ!」
「青も人のこと言えないかも...」
「うるさい!」
青先生の講習会は1時間ほど続いた。
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おまけ
「nishineなら誰に送ってたんだ?」
「この前暇つぶしに作ったbotアカウント5個」
「あー」




