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第二十二話 仲良し三人組

 「えー私何にしよっかな~」

「花足速いから100mとかいいじゃん」

「でも100m目立つじゃ~ん」

「そうだそうだ、未来ちゃんは体育祭何出るの?」


 帰りのホームルームが終わり、今度行われる体育祭に何の種目で出場するのかを週末までに決めておくように言われた二年四組の生徒たち。男子も女子も周りの友達と何に出るかを話しているところだ。

 そんな中、女子の仲良しグループの一つが、ミクに何の種目に出場するのかを聞いていた。


 「んー、あんまりちゃんとは決めてないかな。全然余ったのでいいし」

「だったら未来ちゃん、100mとか借り物競争とかになっちゃうよ?!」

「そういうの苦手じゃないの?!」

「任して!走るのは得意だから!」


 実際、ミクは足が速い。それは数日前の体力測定の時――



*****



 「位置について、よーい」


 ドン!


 スターターピストルの合図とともにミクは駆けだす。一緒に走っていた女子生徒とは最初こそ距離は近かったが、どんどん、どんどんと差が開いていき、いつの間にかミクはゴールラインを踏んでいた。


 「調辺、6.53」


 ミクの50m走の結果は女子高校二年生の平均値を大きく上回っていた。


 「ふっ、この程度じゃないと戦場は生きられないぜ」


 何格好つけてんだ。



*****



 「そんじゃ」

「ば~い」


 ちょっとした挨拶を交わし、ミクと仲良し女子グループは別れた。そしてミクは、帰りの準備をすでに終え、今すぐにでも部室に行きたそうな青と、彼と会話しているエニのもとへと向かった。


 「ねえ空良、なんで未来ちゃんっていっつもエニちゃんと水波のところにいるんだろ」

「風香もそう思うよね。あの三人なんか共通点とかあるのかな」

「私の予想だとね~水波はあの二人と付き合ってるんだよ~」


 花の突拍子のない予想に空良と風香は顔を赤面させ驚く。


 「ふ、二股?!さすがにそんなことって」

「わたし水波と去年同じクラスだったけどそんなことする感じかなぁ。むしろ彼女とかできないタイプだと」

「そ、そうだよ!空良の話が本当なら花の言ってることなわけないって!」

「よし!じゃあ、本人に聞いてみよう!」

「「待って待って!」」


 と、仲良し三人組が自分たちの空間で盛り上がっている中、青、ミク、エニの三人組はというと


 「俺綱引きやるけど」

「私も綱引きにしようかな」

「いやお前は身長小っさいから大縄跳びだろ。引っ掛かりにくいって理由で。多分明日くらいにスカウト来るぞ」

「むー」


 青に身長のことで煽られ、ポンポンポン、と連続で殴り掛かるエニ。しかし悲しいかな、その威力は大したものではなく、「はいはい」と言われながら防御もせずに受けられる始末だ。


 「青はなんで綱引き?」

「体力測定で握力の成績よかったから柔道部の轟にスカウトされたってわけ。去年もそんな感じだったな」


 場面は変わり仲良し女子三人組の会議にて


 「片方とは付き合ってる可能性が~」

「なんでそうなるの?!」

「ほら、別の可能性も考えてみよ。例えば...あの三人は昔からの幼馴染とか」

「確か水波って、遠くの町からやってきたって聞いたことあるような気がするし...未来ちゃんは転校してきたし、可能性はあるかも」

「じゃあ、エニちゃんは?」


 会話が止まり、三秒ほどの沈黙が生まれる。


 「エニちゃんと去年同じクラスだった人...」


 いない


 「まあ、本人に聞けばわかるでしょ!未来ちゃ~ん!」

「どーしたの?」


 空良と風香は目を合わせる。花がミクを呼んでしまった。もう後戻りができないところまで来てしまった。もし仮に花が「未来ちゃんって、水波と付き合ってるの~?」とか言い出してしまったら終わりだ。もし間違えていたら、出会ってまだ一か月たっていないくらいのミクに嫌われてしまうのではないか。

 二人の中だけで走る緊張感の中、二人は今やるべきことを言葉を交わさずに共有する。


 「未来ち」

「未来ちゃんとあの二人の関係って同郷の幼馴染なのかな?」

「あくまで私たちの予想なんだけどね」


 青とエニとの関係性。それを聞かれたミクはどう答えようかと、表情を一切変えずに頭を悩ます。


 えーっと、実はワタシは未来からきて、その未来を改変するために二人には手伝ってもらってるなんて言ったらどうなるか...そもそも前に『とりあえずこういうの防ぐために周りに自分は未来人って言うなよ』って言われたしな...あーもう!めんどくさい!


 「ウンソウダヨ。幼馴染ダヨ」


 そのミクの返答で二人の人間が救われた。二人は自分たちだけで走っていた緊張感が一気に解け、風香は安堵の表情をし、慎重な空良は青に


 「本当に三人は幼馴染なんだよね?」


 と最終確認を取ろうとしていた。

 だが、ミクとエニと幼馴染なわけがない青は


 「は?」


 となるが、ミクの方を見ると、手を合わせ「ごめーんね」と言いたそうな表情とポーズをしており、「あの野郎...」と心の中でつぶやいた。


 「ア、ウン。幼馴染ダヨ」

「よかった~」


 ここでようやく空良も安堵の表情をした。


 「な~んだ付き合っ」

「花、そろそろ帰るよ!」

「お騒がせしました!」


 二人では花の口を抑える形で仲良し三人組は教室を後にした。


 「何だぁ、一体」

「ねえ青、私達って幼馴染なの?」

「何でお前も騙されてんだよ」

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