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限界オタクが悪役令嬢に生まれ変わって最推しに出逢えて尊い!ので、推しの闇落ちルートを全力回避します  作者: 睦月のにこ


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第二部・闇魔術人形パペッティアの最期、ヨハネスが無自覚に手の甲へ口づけてきました。

 ……あれは、まだローズベル王国、キャルロット公爵家のお屋敷にいた頃。

 ウチの庭園で庭師として作業するヨハネスは、たまに何かの童謡を歌っていたのよね。


「あら、庭仕事大変でしょう?

 いつもご苦労さま。


 ねぇヨハネスって、綺麗な声ね。

 たまに童謡?を口ずさんでいるわよね」


 何となくだったけれど、多分、ヨハネスに話しかけたのはその時が初めてだったと思う。


 確か、その時ヨハネスは傷んでしまった薔薇の剪定をしていた気がするわ。


「失礼しました。セルシアナエリーゼお嬢様!

 今後は控えます。


 それに、お嬢様が一介の庭師を気にかけるなど……」


 すぐさま居住まいを正し、距離を取ろうとするヨハネスだけれど。


「いいえ、素敵な歌じゃない!


 貴方、元聖職者と伺っていたけれど、聖歌以外も歌うのね。何だか馴染みやすいわね。

 ねぇ、なんて曲名なの?」


 私は構わず、話しかけたわ。


「……母が教えてくれた故郷に伝わる童謡です。

 昔、国の宮殿に連れて行ってくれた時、エントランスのオートマタ式の時計の前で教えてもらった覚えがありますね。

 曲名は何だったかな……ひばりの歌、とだけ」


「ふぅん?

 ……前世のからくり時計みたいなものかなぁ。

 とっても素敵じゃない!」


「……そうおっしゃってくださったのは、お嬢様だけですよ」


 照れくさそうにはにかむヨハネスが印象的だったわ。




 それから幾つの月日が流れたのだろうか。

 夕方に差し掛かった、晩夏のドルンゲン帝都サンクトピーテルブルッフ郊外の教会、共同墓地にて。


 ヨハネスの活躍で、闇魔術人形パペッティアの幻術と、黒い霧がかき消えたわ。


「嘘?!こんな事って……!」


 想定外の出来事に、パペッティアが大きく怯んだわ。


 アレクセイ様は即座に体勢を持ち直し叫ぶわ。

「ヨハネス、よくやった!直ちに迎撃する!」


 グラン様は。

「こちらで術式を解析する!時間を作ってくれ」


 そう言って、即座に詠唱を始めるわ。


 カメリアは懐から、新たなナイフを取り出し。

「私達で足止めします」


 ヨハネスは応じて。

「承知!」


 半狂乱になって闇魔法を連発するパペッティア。

 強大な魔力の出力の反動で、パペッティアの作り物の身体がミシミシと悲鳴を上げる……!


 アレクセイ様はすかさず。

「シチート!」

 魔法の盾を展開し、パペッティアの攻撃を無力化するわ。

 アレクセイ様はそのまま立て続けに魔法を放つ!


「轟け雷撃よ!グロム!」


 その隙にカメリアとヨハネスは、パペッティアの攻撃を巧みにかわし、肉迫する!

 二人から繰り出される連携攻撃に、パペッティアはわずかな隙をみせたわ。


 私は咄嗟に。

「青薔薇の魔力よ、お願い!」


 青薔薇の魔力を発動すると、青薔薇の蔓がパペッティアを縛り上げる!



「神秘を紐解け!アナライズ!」


 グラン様はすかさずパペッティアに解析魔法をかけると、物凄い密度の術式が展開されたわ。


「何だこの術式!

 美しい、完璧だ。付け入る隙が無い。

 割り込みがかけられないだと……?」


 アレクセイも感嘆のため息をついて。


「……天才的だね、この術式は。

 破壊するしか無いよ」


 青薔薇の蔓に絡み取られ、身動きも出来なくなったパペッティアは、壊れた機械のような音声で同じメッセージを繰り返すわ。


「ごきげんよう。アタシ、パペッティア。

 貴方とお友だちになりたいの。


 ご、ごきげんよヨ……アタシ、パペッティア。

 貴方トお友だちニなりたいノ、ののノ……


 母親ってナニ?温かいノ?

 ……一緒にお歌を歌いましょウ」


 パペッティアはひばりの歌を歌うわ。

 ヨハネスの母親が教えてくれたという、思い出の歌をーー


「貴様!お袋との……エリーゼ様との思い出を愚弄するな!」


 ヨハネスは怒りを露わにするわ。

 しかし、パペッティアは切なそうに呟く。


「……アナタの記憶の中にあルこの歌。

 アタシ、とっても好きだったノ。


 ねぇ、お母さんって……暖かいノ?」


 その言葉を機に、パペッティアは自壊していく……。美しい肌はひび割れ、ガラス玉の様な瞳は曇り……!


『魔術核コア、85%破損。自爆装置、起動します――』


 魔力光が高まり、パペッティアの自爆装置が発動する……!


 その刹那、グラン様が高らかに宣言したわ!


「割り込みをかける!

 インターラプト、エマージェンシーオフ!」


「……緊急機能停止。緊急機能停止。


 アタシは悲しいノ?

 何もわからないお人形のアタシだけれど。


 ……アナタのお友だちになれタ……?

 ねぇ、また一緒に遊びまショウ?


 一緒ニ、素敵な歌ヲ……」


 その言葉を最期に、突然崩れ落ちるパペッティアは急停止するわ。

 自爆直前に、グラン様が急停止の術式を組み込んだのが、無事作動したようね。


「あれが伝説に聞く青薔薇の……!」


 グラン様は青薔薇の魔力に思わず目を見張るわ。


 いや、あの。そんな大したモノではないから……使い勝手悪いし。



「セルシアナエリーゼ様、ご無事ですか?!」


「ええ、私は大丈夫。

 よくやってくれたわ。ヨハネス」


「いえ、貴方様の青薔薇の加護があればこそ……」


 ええと、ヨハネス?貴方に青薔薇の加護を授けた覚えはないのだけれど……。

 もしかして、あの小倉あんトーストかな?


 そう宣って、またサラッと私の手の甲に口づけるヨハネスだったわ。

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