第二部・フローリア嬢のお見舞いに行きました。
晩餐を早めに切り上げ、皆でフローリア嬢のお見舞いに行ったわ。
というのも、アレクセイ様とシルバーナ・フローリア嬢姉妹は遠縁の幼馴染なんですって。
顔馴染だからと、しばらくフローリア嬢をアレクセイ様の別荘で匿う事になったのよ。
「フローリア嬢、お身体の具合は……?」
「大……丈夫。
ワタクシも……ゲホッ……カメリアお姉様の……ゴホ!……ボルシチ食べたい……」
あの騒動ですっかり体調を崩し、持病の喘息と、謎の発疹と下痢で倒れたフローリア嬢。
呼吸するのもしんどそうだわ。
「パン粥と、ボルシチの具を潰したものです。食べられますか?」
「……ごめんなさい。実はあまり食欲無いの……ゲホ!ゲホ……」
「無理に食べなくてもいいのよ。ゆっくり休んで下さいね。
エルダーフラワーのハーブティーを淹れておきましたので、咳が落ち着いたら飲んでください」
無理に食事や飲み物を取らせて、誤嚥性肺炎にでもなったら大変な事になるのよね。
「フローリア様、申し訳ありません。
何度も光の治癒魔法をかけているのですけれど、効きが悪くて……」
しょんぼりするロジー。
「……いえ、ロジーさん。そんなお顔なさらないで。
貴重な光の治癒魔法を何度も……ワタクシにかけてくれて、ありがとうございます……
ロジーさんって光の聖女様、だったのね……なのに気さくな方ね、意外だわ」
ぎこちなく微笑むフローリア嬢が痛々しいわ。
「……もう、なんでこんなに身体が弱いのかしら。
早く治して、舞踏会に出たいわ……
今流行りのヴァイオレットのモーブドレスや、鮮やかなエメラルドグリーンのドレス……お義兄様とお義母様に買ってもらったの……
嬉しくて、お屋敷でいつも着ていたの……」
……それって、パリスグリーン?花緑青?
モーブドレスって初期アニリン染料とかの?
「両方とも毒やんけ?!」
前世の感覚で悲鳴を上げてしまったわ。
それにしたって、こんな天真爛漫で無邪気な美少女になんて事するのよ?
あんまりよ、目眩がするわ。
私はたまらず、こんな言葉を口にしたわ。
「……どうか弱き子羊に、神のご加護を」
そう、なんとなしに口にした祈りの言葉をトリガーに、淡い青の魔力光が舞い上がり出した。
青薔薇の魔力が発動したの?
力が次第に増していくのを感じる。
……これなら、行けるかしら?
「神の御業をここに!オールリザレクション!」
すると術が発動し、フローリア嬢の発疹はみるみる消えてゆき、顔色も明るくなっていく。
しまいには青薔薇の魔法にはしゃぎ出したわ。
「綺麗な青いお花がいっぱい……!
お花畑が一瞬でなんて!まるで魔法だわ!
ねぇ、セルシアナエリーゼお姉様!
このお花、摘んでもよろしくて?」
元気いっぱいにフローリア嬢がキラキラした目で、私に話しかけてくるわ。良かった良かった。
「それは魔法のお花なので、すぐに無くなってしまうけれど、それでもよかったらどうぞ」
リオネル曰く、この青薔薇ってエーテル結晶の塊らしいわ。
気合い入れて魔法使わないと、十分ぐらいであっという間に消えてしまうのよね。
なお気合入れて魔法を使うと1〜2ヶ月長持ちするし、魔法で壊した所もそのままなのよね。
ええ、ローズベル王宮のボールルームのことです。今も絶賛改修中なのよね。
今だにあの騒動で半壊してしまった事について、関係者からチクチク嫌味を言われるわ。仕方ない事だけれど。
カメリアはやや呆れた顔をして忠告してきたわ。
「お嬢様、やたらむやみに青薔薇の魔法を使うのは……リオネル王子に怒られますよ?」
「違うのよ、勝手に魔力が発動しちゃったのよ!
だからもののついでに、1番強力な治癒魔法を……」
ヨハネスが目を見開いて呻く。
「なんと美しい……!これが青薔薇の魔法……」
アレクセイはため息をついて。
「……全く、困ったな。
これでは青薔薇の聖女の存在を秘密裏にしておけないですよ?
今後、アルヴェイン帝が手放してくれるかどうか……」
「セルシアナエリーゼお姉様が、伝説のブルーローズの聖女様なのね!
凄いわ!シルバーナお姉様、アルヴェインおじ様、皆に自慢しなきゃ!」
フローリア嬢、自慢しないで下さい。
なんというか、本当に使い勝手が悪いのよ。青薔薇の魔法って。
しかし結果として、これを機に青薔薇の聖女の名がドルンゲンに広がってしまったのです。




