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限界オタクが悪役令嬢に生まれ変わって最推しに出逢えて尊い!ので、推しの闇落ちルートを全力回避します  作者: 睦月のにこ


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第二部・アレクセイ様の別荘でボルシチとピロシキをいただきました。

 一騒動あった狐狩りから戻ったのけれど……安全の為にと宮殿には戻らず、一旦アレクセイの別荘に移されたわ。


 アレクセイ様曰く。


「皇帝陛下と宮殿は今忙しいので、しばらくこちらでご静養下さい」


 忙しいって?何にかしら?

 まさか今の宮殿、アルヴェイン帝怒りの粛清の嵐になってないわよね?


「また、美味しい所と手柄をアレクセイ様に取られた……

 あの人、いつも良い所かっさらって行くのよ、…」


「あそこで、アルヴェイン帝が出てくるのも反則技だろ?

 何も手出し出来ん……」


 と、カメリアとヨハネスが隅で愚痴っぽく呟いていたのが印象的だったわ。



 それにしても、アレクセイ様の別荘をぐるりと見渡す。


「アレクセイ様の別荘、思ったより質素ね……」


 なんというか、必要最低限の家具が配置されているだけ、という印象ね。

 いわゆる成金アイテムが無いわ。


 例えばヴェネティア風とか、こちらの宮殿の様な別荘なのだろうと、私が勝手に思い込んでいたかもしれないわね。


「ああ、この別荘は父が母の静養にと買ったものなのですが、使わず終いだったのです。


 軍務ばかりで別荘のインテリアなどは全く手をつけてないのですよ。

 いっその事、ローズベル風にしてみましょうか?」


「……私はこのくらいが好みです。

 エリーゼお嬢様もそうでしょう?」


 カメリアがフォローを入れて、微笑むと。


「そうかな?それなら良いんだ」


 アレクセイ様は満更でもなさそうだわ。



「あら、いい香りね。ローズガーデンがあるのかしら?

 ハーブの香りもするわね」


「ええ、少し趣向を凝らして、迷路風になっているのですよ。

 お父様がセラフィーナお母様に少しでも運動して欲しくて作ったのです。


 ハーブ園も、お母様の体調が良くなるように作ったのです」


「愛情深いお父様ですわね」


「……ええ、とても優しい人だった」



 ロジーは、今の私の侍女という立場をすっかり忘れてはしゃいで。


「ねえ、エリーゼ様!迷路に挑戦してみましょう!」


 ヨハネスは思わず苦笑いしていたわ。



 アレクセイは独り言ち。


「……あぁ、家に誰かいるのは心が安らぐなぁ」


 静かに微笑んでいらっしゃったわ。




 数日ぐらいカメリアとヨハネスが所用で休みを取ったわ。


 身の回りの世話はメアリーとロジーがやってくれるから、困る事はないのだけれどね。


 数日後、二人は戻ってきたけれど、何処かゲッソリとしていて。


「疲れた……人使い荒い……おばあちゃんが言ってた鬼って、ああいうのを言うのよね……」


「おかえりなさい。何かあったの?

 ベルフェッティ様の案件?」


「……ええと、守秘義務がありまして」


 クマを作った顔でヨハネスは、やんわりと黙秘するわ。


 私は直感する。ああ、やはりね。裏稼業的なやつかな?


「大丈夫?疲れているならゆっくり休んで。

 せっかくだしお風呂入る?

 サウナ……バーニャもあるわよ?


 聞ける範囲でなら愚痴も聞くわよ?


 それとも、気分転換にお茶飲む?

 クリームティーぐらいならすぐに用意出来るわよ」


「お気遣いありがとうございます、お嬢様。

 でも、それでは主従の役割が逆転していませんか?」


 そこにアレクセイ様が訪ねてきて。


「おや、クリームティーかな?

 馳走になってもいいかい?

 そうだ、ウチのシェフがドルンゲンの郷土菓子を作ったんだ」


「アレクセイ様?流石にお風呂入ってからでいいですよね?」


 アレクセイ様にガッツリ釘を刺すカメリアである。


 メアリーとロジーがクスクス笑っていたわ。




 午後のクリームティーを取り終え、カメリアは少し仮眠を取ったわ。

 そろそろ晩餐の支度の時間ね。


「……あの、アレクセイ様?

 今晩のボルシチは私に作らせてもらえませんか?」


「おや。ウチのシェフの腕前では物足りないのか?

 どうしてだ?」


「……その、出来るだけ母の作ってくれた実家の味のボルシチが食べたいのです。

 ボルシチって、砂糖を入れたり、入れる野菜が違ったりして家ごとでどうしても味が違うから」


「それなら、厨房に話をつけてこう」



 こうして、ボルシチをカメリアが作ることになったわ。


 ……これって、ゲームの手料理振る舞って好感度稼ぐイベントですよね?

 今作のヒロインであるカメリアに頑張ってアレクセイ様の好感度をガンガン稼いでもらわねば!


 ちなみにゲームのアレクセイ様は、料理失敗して消し炭になった手料理ですら「美味しい」と褒めてくれるキャラだったわ。愛が重い……。


「カメリア、手伝うわよ?」


「お嬢様、貴方は仮にも皇后候補なのですから」


「ああ、気にしなくてもいいのよ!私こういうのは好きだもの」


「いや、そういう事ではなく」


 ロジーとメアリーは躊躇せず厨房に入っていく。


「ロジー、貴方も!光の聖女がそんな事するなんて」


「何言ってるの。アタシ、庶民育ちだよ?

 これぐらいはウチでもやってたもの。

 皮むきなら任せて!お母さんに仕込まれたから」


「仕方ないわね。ならサラダ用のポテトとキャロット、グリーンピースの下茹でと皮むきをお願い」


 カメリアはロジーとメアリーにそう指示を出すわ。

 手際良く牛肉や、ポテトやニンジン、玉ねぎ、ビーツ、ニンニクなどの野菜を切っていく。


 鍋にバターとオリーブオイルを入れて、牛肉と野菜を炒め、水を入れてローリエの葉を入れたわ。


 鍋が煮立った所に、ビーツを入れたらあっという間に真っ赤になってしまった。お味噌を溶いた味噌汁みたいね。


「昨日のコンソメスープの残り、使わせてもらいますね。ええと、トマトは……」


「ああ、こっちにあるよ」


 アレクセイ様が野菜を保存しているカゴからトマトを出してきて、すかさず手渡す。


 良くあるレシピだとトマト缶を入れるのよね。

 でもそれってミネストローネになるのでは……?


「締めにスメタナを入れて…」


 スメタナとはサワークリームの事よ。

 サワークリームが無いなら生クリームで代用出来るわ。



 厨房の一角で、シェフの方がピロシキをオーブンで焼き始めたわ。

 流石に生地を発酵させる工程があるので、シェフの方にお任せしたのよね。


 崩した茹で卵と、炒めた玉ねぎトマトとひき肉の中身の餡?はカメリアがチャチャッと作ってたけれど。


 香ばしい良い香りが厨房いっぱいに広がるわ。


「この辺りのピロシキってオーブン焼くのね。

 てっきり揚げるものかと思っていたわ」


「この辺はピロシキをオーブン焼くのが主流ですが、揚げる所もありますね」


 前世の家族との旅行先でピロシキ食べたわね。懐かしいわ。



 晩餐のメニューが出来上がり、皆でテーブルについたわ。


 まず一皿目、前菜のサラダはオリヴィエサラダ。

 ポテトサラダの原型とも言われているわね。


 ポテトや紫玉ねぎなどの野菜、茹で卵がさいの目に切ってあるわ。

 綺麗な円形の上にパセリとディルが添えられているわ。


「見栄えが良いわね。食感も楽しいわ」


 スープはカメリア特製のボルシチ。

 具がゴロゴロ入っているわ。


「このボルシチ美味しい!

 カメリアのお母様の味そのものだ」


 カメリアの手料理にアレクセイ様が喜ぶ。


「それにしてもカメリアのお母様って貴族の方よね?どうして料理を……?」


「……ええと、ウチは名ばかり男爵というか。

 バートンの家はとにかく貧乏だったんですよ……

 なのでメイドや執事も雇えない時はお母様が腕を振るっていたのです」


 おう、世知辛いな。言わせてしまった事を後悔しているわ。


「答え辛い事聞いてしまってごめんなさいね」


「いえ、ウチが貧乏だったのはいつもの事なので」



「あぁ、おかわり下さい。あとピロシキも」


 ヨハネスがしれっと二杯目いってるわ。




「デザートのカッテージチーズのブリヌイです」


「これ美味しい!」


 同席していたロジーが目を輝かせてるわ。


 私も一口食べてみると。


「サワークリームと蜂蜜も合わせてるのね。

 バニラシュガーの香りが凄く良いわ」


「お口に合うようで良かった」


 アレクセイ様が胸を撫で下ろす。


 皆、食事を楽しんでるけれど、これは聞いておかないと。   

 ようやく私はある懸念を口にした。


「ところで、フローリア嬢の具合はどうなのですか?」


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